【映画レビュー『Flow』】鋭い観察眼によるリアルと想像を超えるファンタジーが、セリフなき世界で交差する

『FLow』©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five. REVIEWS
『FLow』©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

1匹の猫を主人公としたラトビアのアニメーション映画『Flow』が3月14日(金)に日本公開となる。すでに第82回ゴールデングローブ賞でアニメ映画賞を受賞し、第97回アカデミー賞(現地時間3月2日に授賞式が開催予定)でも長編アニメーション映画賞、国際長編映画賞にノミネートされる快挙を成し遂げている今作は、一切のセリフなしで大人も子どもも魅了する傑作アニメ映画だ。

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『Flow』あらすじ

世界が大洪水に包まれ、今にも街が消えようとする中、ある一匹の猫は居場所を捨て旅立つ事を決意する。流れて来たボートに乗り合わせた動物達と、想像を超えた出来事や予期せぬ危機に襲われることに。しかし彼らの中で少しずつ友情が芽生えはじめ、逞しくなっていく。彼らは運命を変える事が出来るのか?そして、この冒険の果てにあるものとは―?

全編セリフなしで魅了する、ジルバロディス監督の表現力

言葉を必要としない圧倒的な表現力。それこそが、ギンツ・ジルバロディス監督最新作の真骨頂だ。全編を通じて一切のセリフを排しながら、観る者の感情を自在に操る物語の展開力は見事の一言に尽きる。CGによって紡ぎ出される世界は、現実とファンタジーの境界線を絶妙なバランスで行き来し、観る者を魅了してやまない。

『FLow』©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

『FLow』©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

今作はほぼ独学でCGを習得し、監督・脚本・編集をも一手に担う異才が、前作『Away』で示した才能をさらに昇華させた意欲作である。『Away』にも見られた神秘的な世界観は継承しつつも、より万人にもわかりやすい普遍的な物語として独特の空気漂うエンターテインメント作品まで昇華させた手腕は特筆に値する。

予算・技術的にも今作のCG表現には限界がある中で、ディズニー・ピクサーの『インサイド・ヘッド2』やドリームワークスの『野生の島のロズ』などとともにアカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされ、さらにラトビア代表として国際長編映画賞へもノミネートされている事実は、この作品の芸術性と娯楽性の高次な融合を如実に物語っているといえよう。

動物たちへの温かく鋭い観察眼

登場する動物たちの仕草や行動には驚くべきリアリティが宿る。猫のしなやかな動きや耳・尻尾に現れる感情、猿のちょっとした仕草など、その一つ一つに動物への深い理解や鋭い観察眼が反映されている。さらに注目すべきは、動物たちの行動が知性的な限界を超えて突飛なものになることはないという点だ。むしろ、本能的な失敗や不器用さがストーリーに自然な説得力を与えている。

『FLow』©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

『FLow』©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

とはいえ本作は単なる動物の生態描写に留まらない。繊細な感情表現とドラマチックな展開も絶妙にブレンドされ、さらには浮世離れした展開もいくつか用意されていることで、独自の物語世界を築き上げることに成功している。ドキュメンタリー的なリアリズムとアニメーションならではの表現力が見事に調和した稀有な作品といえるだろう。

現実は、人間にも動物にも等しく理不尽

物語は時に残酷で理不尽な展開を見せ、胸を締め付けられるような場面にも遭遇する。しかし、これは動物の世界の厳しい現実であり、人間社会とも通底する普遍的な光景だ。人間も動物も同じで、思いやりの心を持って仲間を気遣う個体もいれば、己の欲望のみに従って行動する個体もいる。本作は、そんな動物たちの多様な個性と行動を、驚くべき観察眼と発想力によってで描き出すことに成功していた。

『FLow』©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

『FLow』©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

ジルバロディス監督は宮崎駿への敬意を公言しているが、その影響は本作にも確かに息づいている。自然と生命への深い畏敬の念、そして常識の枠を軽やかに超えていくファンタジックな展開―。スタジオジブリ作品の持つ普遍的な魅力を想起させつつも、独自の表現へと昇華された瞬間を、私たちは目撃することになる。

言葉を超えて響く感動と圧倒的な世界観づくりをもって、第82回ゴールデングローブ賞でもアニメ映画賞を受賞したこの大注目作がアカデミー賞でも躍進を見せてくれることに期待しつつ、日本でのヒットを祈願したい。映画『Flow』は3月14日(金)日本公開。

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作品情報

原題:Flow
監督・脚本・音楽:ギンツ・ジルバロディス
音楽:リハルズ・ザリュペ
共同脚本・プロデューサー:マティス・カジャ
脚色:ロン・ディアン(『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』)
サウンドデザイン:グルワル・コック=ガラス(『天国でまた会おう』)
アニメーション監督:レオ・シリーペリシエ(『夜のとばりの物語』)
2024|ラトビア、フランス、ベルギー|カラー|85分|G
©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.
配給:ファインフィルムズ
後援:駐日ラトビア共和国大使館
公式サイト:flow-movie.com

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