『I Swear』主演ロバート・アラマヨが大番狂わせでBAFTA主演男優賞を受賞。
レオナルド・ディカプリオやティモシー・シャラメといったハリウッドのトップスターを抑え、ロバート・アラマヨが英国アカデミー賞(BAFTA)主演男優賞を受賞した。英国映画界最大級の舞台で起きた“番狂わせ”は、大きな驚きをもって受け止められている。では、この快挙を成し遂げた俳優は何者なのか。
ディカプリオ、シャラメらを抑えた異例の受賞
日曜夜に行われたBAFTA授賞式で、アラマヨはカーク・ジョーンズ監督作『I Swear(原題)』での演技により主演男優賞を獲得した。同部門には、ディカプリオ、イーサン・ホーク、シャラメ、ジェシー・プレモンス、マイケル・B・ジョーダンといった実力派が名を連ねており、受賞は“BAFTA史上に残る大番狂わせ”とも評されている。
壇上に立ったアラマヨは涙を浮かべながら、「本当に信じられない。皆さんのような方々と同じカテゴリーにいること自体が信じられないのに、まさか自分がここに立っているなんて」と語った。さらに「本当にこの賞を受賞したなんて信じられない。本当に、本当に信じられない」と繰り返し、「このカテゴリーの全員に圧倒されているんだから」とノミネート俳優たちへの敬意を示した。
最後は「よし、もう話すのをやめよう。本当に本当に本当に本当にありがとう」と言葉を結び、なおも衝撃が冷めやらぬ様子を見せた。
『ロード・オブ・ザ・リング』俳優が映画界で躍進
アラマヨはPrime Videoの『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』でエルロンド役を務めており、ファンタジー作品の主要キャストとして広く知られてきた。一方で、映画賞レースの最前線に立つ存在とは言い難く、今回がBAFTA映画賞での初ノミネートだった。
しかし授賞式前から評価は高まっていた。すでに英国インディペンデント映画賞で最優秀主演賞を受賞し、ロンドン映画批評家協会賞ではALFSブレイクスルー・パフォーマー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれている。英国映画界では確実に存在感を強めていたが、ディカプリオやシャラメを擁する国際的なスター陣を抑えての受賞は想定外と見る向きも多い。
壇上では、学生時代の記憶にも触れた。「学生時代、イーサン・ホークがジュリアード音楽院に来て話をしてくれたんだ」と振り返り、「俳優としての長いキャリアについて、自分という楽器を守ること、自己破壊的な行動を避けることについて」学んだと明かした。さらに「だから今夜、あなたと同じカテゴリーにいられることが本当にすごいことなんだ。ありがとう、イーサン」と語り、かつて憧れた俳優と肩を並べた瞬間への感慨をにじませた。
謙虚さと誠実さがにじむスピーチは、受賞の驚きとともに、アラマヨという俳優の人物像を強く印象づけるものとなった。
トゥレット症候群を描いた『I Swear』の社会的意義
『I Swear(原題)』は1980年代のスコットランドを舞台に、重度のトゥレット症候群を抱える青年ジョン・デヴィッドソンの半生を描く。チックや罵倒語を伴う不随意の発声が症状として現れるこの障害は、当時ほとんど理解されておらず、彼は家族や社会からの拒絶に直面する。作品はその孤立と葛藤、そしてやがて全国的な啓発活動家へと成長していく過程を丁寧に追っている。
BAFTA授賞式には実在のデヴィッドソンも出席していたが、不随意の発声が何度か起きた後、式の途中で退席した。司会のアラン・カミングは不快に感じた人々に謝罪し、観客の理解に感謝を示したという出来事も、本作が扱うテーマの現実性を浮き彫りにした。
支援・研究慈善団体トゥレッツ・アクションのCEO、エマ・マクナリーは授賞式前、「これまでメディアにおけるトゥレット症候群の描写は、衝撃的な要素に焦点を当てたり、症状を笑いのネタに矮小化したりする傾向がありました」と指摘。そのうえで本作については「ステレオタイプやセンセーショナリズムに頼るのではなく、レジリエンスや当事者が直面する困難、トゥレット症候群とともに生きる日常の現実に焦点を当てています」と評価している。
スター俳優を擁する大作ではなく、実在の人物を通じて社会的課題を真正面から描いた英国映画。その中心に立ったアラマヨの演技が、結果として賞レースを制した形となった。
オスカー戦線へ浮上する可能性
今回のBAFTA受賞は、アラマヨにとって初のBAFTA映画賞ノミネートでの受賞となった。すでに英国インディペンデント映画賞の最優秀主演賞、ロンドン映画批評家協会賞のALFSブレイクスルー・パフォーマー・オブ・ザ・イヤーを受賞しており、英国国内では評価を着実に積み重ねてきた。
『I Swear(原題)』は昨年9月のトロント国際映画祭でプレミア上映された後、2025年10月に英国公開。最近になって米国公開を果たしたことで、来年のアカデミー賞の選考対象となる資格を得た。
ディカプリオやシャラメといった世界的スターを抑えてのBAFTA主演男優賞受賞は、単なる“番狂わせ”にとどまらない可能性を秘めている。英国映画界が送り出した新たな主演俳優は、次なる賞レースでも存在感を示すのか。アラマヨの名は、今後さらに国際的な注目を集めることになりそうだ。


