新作映画『クライム101』 を紹介&解説するレビュー。
2月13日(金)公開の新作映画『クライム101』は、ロサンゼルスを舞台に宝石強盗と捜査の駆け引きを描くクライムスリラーだ。原作はドン・ウィンズロウの小説。101号線沿いで犯行を重ねる強盗が“最後の一仕事”に挑もうとするなか、警察の包囲網と新たな脅威が彼に迫る。監督はバート・レイトン、主演にクリス・ヘムズワース、共演にマーク・ラファロ、ハル・ベリー、バリー・コーガン。
『クライム101』あらすじ
舞台は現代のロサンゼルス。101号線沿いで宝石強盗を重ねるデーヴィスは、非暴力をはじめとするルールを自分に課しながら、巧妙な手口で警察を翻弄してきた。やがて彼は“最後の一仕事”として、保険会社側の人間から情報を引き出し、これまでにない大きな獲物に狙いを定める。だがそのパターンを見抜いた刑事の追跡が迫るなか、周到だったはずの計画は思わぬ綻びを見せていく。

『クライム 101』より
長尺をものともしない重厚なクライムドラマ
奇しくもクリス・ヘムズワース(『マイティ・ソー』『アベンジャーズ』ソー役)、マーク・ラファロ(『アベンジャーズ』ハルク役)、ハル・ベリー(『X-MEN』ストーム役)、バリー・コーガン(『エターナルズ』ドルイグ役)と、マーベルスター俳優が顔を揃えた豪華な本作。それぞれの立場で“自分ルール”を持った登場人物たちが、不条理な世界と、その中で持つ“規律”と向き合っていく骨太クライムアクションだ。

『クライム 101』
強盗と刑事の攻防を軸にしたクライムアクションとしては、140分はやや長尺に感じるかもしれない。だが実際に観てみると、キャラクターたちの内面と、出会いがもたらす化学反応を濃密に描くドラマに引き込まれ、140分間一切集中が途切れなかった。
犯罪シーンももちろんクールでスリリングだが、本作は『オーシャンズ』や『ワイルド・スピード』のような、スタイリッシュに練られた作戦と派手なアクションで興奮させるタイプのクライムものとは異なる。むしろ会話劇にじっくりと時間を割き、それぞれの登場人物がどう自分の人生と向き合い、互いの生き方にどう影響を及ぼし合うのかを濃密に描き出すことに重きを置いている。
バート・レイトン-犯罪心理と人生を絡み合わせる手腕
この作劇は必然とも言える。監督バート・レイトンは、本作にも出演したバリー・コーガン主演の『アメリカン・アニマルズ』(2018)で、不器用で無鉄砲な若者たちの強盗計画を通じて、犯罪心理と生き様を巧みに絡み合わせる手腕をすでに証明していた。その演出力に、本作ほどの豪華キャストが加わるのだから、重厚なクライムドラマに仕上がらないわけがない。

『クライム 101』より
豪華キャストそれぞれの名演が共鳴
ヘムズワースは、心を開けない強盗デーヴィスの孤独と、その人格を形作った過去を、陰影のある繊細な芝居で浮かび上がらせる。ラファロは、強迫観念に突き動かされるようにデーヴィスを追い詰める刑事として、人生の哀愁とどこか狂気じみた執着を滲ませた。

『クライム 101』より
ベリーは、自身の能力と努力に見合わない現実への怒りを内に抱えながら、デーヴィスとの出会いによって揺らぐ“強い女性の脆さ”を体現。コーガンは、デーヴィスと通じるこの世への諦観を纏い、中身が空洞の悪党のような独特の不穏さを醸し出す。

『クライム 101』より
そして『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』のモニカ・バルバロは、本作でほぼ唯一の”柔軟で自由な一般人”として物語に風を通し、デーヴィスの人生にかけがえのない影響をもたらす存在だ。

『クライム 101』より
これだけの実力派が一歩も引かない演技の応酬を繰り広げることで、本作は洗練された奥深いクライムドラマへと昇華している。
強盗事件というスケールの大きな題材を扱いながらも、その核にあるのは普遍的な“人生の葛藤”と“他者との化学反応”。見応えは抜群だ。ぜひ映画館で体感してほしい。『クライム101』は、2月13日(金)公開。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
