ディズニーがコロナ後初の快挙-『リロ&スティッチ』『ズートピア2』の追い風で年間世界興収60億ドル突破

『ズートピア2』より © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. NEWS
『ズートピア2』より © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

ディズニーが『リロ&スティッチ』と『ズートピア2』を追い風に、コロナ以降初となる世界興収60億ドルを突破した。


ウォルト・ディズニー・スタジオが、2025年の全世界興行収入で60億ドル(約9361億円)を突破した。これは同社にとって通算5度目の到達であり、新型コロナウイルス流行以降では初の記録となる。パンデミックによって世界の映画興行が大きく落ち込んだ後も、回復は緩やかに進むにとどまっている。その中でディズニーが再びこの水準に達したことは、業界全体においても特筆すべき出来事だと言える。

コロナ後初の60億ドル到達-他スタジオが届かない高み

ディズニーが世界興収60億ドルを超えるのは、2016年から2019年まで4年連続で記録して以来となる。コロナ禍を挟んでこの水準に戻したスタジオは、現在のところディズニーのみだ。2015年以降、他のハリウッド・スタジオで世界興収60億ドルに達した例はなく、この数字がいかに突出したものであるかが分かる。

映画興行全体は、パンデミックによる市場のリセットから完全には立ち直っていない。世界的に見ても、チケット販売数は依然としてコロナ以前と比べて約20%低い水準にあるとされている。観客動員が伸び悩む状況が続く中での60億ドル(約9361億円)突破は、単なる好調を超えた「異例の回復」と位置づけられる成果である。

10億ドル級ヒットが牽引-実写版と続編が生んだ興収

今回の60億ドル突破を直接的に支えたのは、複数の大型ヒット作の存在である。中でも大きな役割を果たしたのが、実写版『リロ&スティッチ』『ズートピア2』だ。

『リロ&スティッチ』© 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

『リロ&スティッチ』© 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

実写版『リロ&スティッチ』は、世界興収10億3000万ドル(約1607億円)を記録し、ディズニーにとって久々の10億ドル超作品となった。一方の『ズートピア2』は、すでに13億ドル(約2028億円)に達しており、現在も興行収入を伸ばしている。いずれもファミリー層を中心に幅広い観客を動員し、安定した集客力を示した。

『ズートピア2』 © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

『ズートピア2』 © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

さらに、ジェームズ・キャメロン監督による超大作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』も好調な滑り出しを見せ、公開1週間で4億5000万ドル(約702億円)を稼ぎ出した。これらの作品に加え、複数のマーベル作品がラインナップを支えたことで、ディズニーは北米で23億ドル(約3588億円)、海外市場で36億5000万ドル(約5693億円)を積み上げ、合計で60億ドルの大台に到達した。

『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』より © 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』より © 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

2019年以来の記録的年-黄金期との比較で見える現在地

今回の60億ドル突破は、ディズニーにとって2019年以来の記録的な年となったことを意味する。2019年には、スタジオ史上最多となる7本の作品が世界興収10億ドルの壁を超え、映画史に残る空前の成功を収めた年でもあった。

当時は、マーベル作品の『キャプテン・マーベル』や『アベンジャーズ/エンドゲーム』をはじめ、実写版『アラジン』、超実写版『ライオン・キング』、アニメーション続編の『トイ・ストーリー4』と『アナと雪の女王2』、さらに『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』まで、多様なブランドが一斉に10億ドル超を達成していた。

それと比べると、現在のディズニーは当時ほどの量的なヒット数には及ばない。しかし、世界の映画市場が完全に回復していない状況を踏まえれば、限られた本数で60億ドル(約9361億円)に到達した点は、質と集中力による成果とも言える。2019年の「黄金期」をそのまま再現したわけではないが、パンデミック後の環境下で再び業界の頂点に近づいた年として位置づけられる。

すべてが成功ではない現実-赤字作とマーベルの苦戦

もっとも、2025年に公開されたディズニー作品がすべて興行的成功を収めたわけではない。ピクサー作品『星つなぎのエリオ』は世界興収1億5400万ドル(約240億円)、実写版『白雪姫』は2億500万ドル(約320億円)、『トロン:アレス』は1億4200万ドル(約222億円)にとどまり、いずれも製作費に対して大きな赤字となった。

『トロン:アレス』より © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

『トロン:アレス』より © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

一般的に、スタジオは映画のチケット売上を劇場側とおよそ50対50で分配するため、作品が採算ラインに乗るには製作費の少なくとも2.5倍の興行収入が必要とされる。これらの作品はいずれも、製作費が1億5000万ドルから2億5000万ドル規模と見られており、興行成績はその基準を下回った。

マーベル作品も勢いを取り戻せていない。『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は4億1500万ドル(約647億円)、『サンダーボルツ*』は3億8200万ドル(約596億円)、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は5億2100万ドル(約813億円)と、3作連続で興行的失敗と位置づけられる結果となった。かつてはマーベル・シネマティック・ユニバースの作品が10億ドル超を当然のように達成していた時代もあったが、現在はその水準から大きく距離がある。

『サンダーボルツ』©2025 MARVEL

『サンダーボルツ』©2025 MARVEL

それでも、これらの「興行的失敗」が囁かれる作品でさえ、純粋な興行収入の額では多くの競合スタジオの最大ヒット作を上回っている点は注目に値する。また、『リロ&スティッチ』のように、映画そのものの興収に加え、関連キャラクター商品で数億ドル規模の売上を生み出す例もあり、ディズニーの収益構造は劇場興行だけにとどまらない。

2026年も続くディズニーの興行支配

こうした明暗を含みつつも、ディズニーの興行面での優位性が近い将来に揺らぐ兆しは少ない。2026年には『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』『トイ・ストーリー5』実写版『モアナと伝説の海』『プラダを着た悪魔2』といった強力な新作群が控えており、再び世界市場を席巻する可能性が高い。

世界の映画興行が完全な回復途上にある中で、ディズニーはヒット作とブランド力を武器に、なおも業界の中心に立ち続けている。今回の60億ドル突破は、その支配力が依然として健在であることを示す象徴的な出来事だと言える。

『ズートピア2』公開17日で世界興収10億ドル突破-PG指定映画史上最速が示す“劇場の力”【興行収入】
『ズートピア2』が公開17日で世界興収10億ドル(約1559億7000万円)を突破し、PG指定映画史上最速記録を更新した。週末興行での首位返り咲きやディズニー内部の明暗、制作トップのコメントを交えながら、2025年興行全体における本作の位置づけを整理する。

【映画レビュー&解説『ズートピア2』】“共生”と“多様性”の物語がさらに拡大する正統続編-動物ストーリーで再び掘り下げるアメリカの現実
「誰もが何にでもなれる街」の裏側で、排除された者たちの声が響く――爬虫類ゲイリーが象徴する失われた歴史と、ジュディとニックの信頼が再び試される。温度を分かち合い、共に生きる意味を描く『ズートピア2』レビュー

【映画レビュー『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』】憎しみの炎が燃え、悲しみの灰が積もる―分断の時代に放たれる、家族と祈りの叙事詩
ジェームズ・キャメロン監督による『アバター』シリーズ第3弾『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』を詳細レビュー。新たなナヴィの部族、サリー一家の葛藤、クオリッチの変化、信仰と分断のテーマ、圧巻の映像表現まで多角的に解説する。

【映画レビュー『リロ&スティッチ』(2025)】実写化の意義を感じるドラマ性の深化とハワイの空気- 変化した点としなかった点と
6月6日公開の実写版『リロ&スティッチ』を徹底レビュー。原作への敬意を込めたリメイクは成功作?スティッチのCG造形、ナニ役シドニー・アグドンの演技、ハワイ文化への配慮など見どころを詳しく解説。ディズニー実写化の中でも特筆すべき完成度を誇る本作の魅力と課題を率直に評価する。

cula をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む