【映画レビュー&解説『ズートピア2』】“共生”と“多様性”の物語がさらに拡大する正統続編-動物ストーリーで再び掘り下げるアメリカの現実

『ズートピア2』 © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. REVIEWS
『ズートピア2』 © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

ディズニー最新映画『ズートピア2』を紹介、レビュー、解説。


12月5日(金)についに日本公開となる『ズートピア2』は、バイロン・ハワードとジャレド・ブッシュが監督を務める、動物たちが人間のように暮らす楽園ズートピアを舞台にしたアドベンチャーコメディ。刑事となったウサギのジュディ・ホップスと相棒のキツネ、ニック・ワイルドが、ズートピアに現れた謎の爬虫類の来訪者を追ううちに、都市を揺るがす巨大な陰謀へと巻き込まれていく。

『ズートピア2』あらすじ

動物たちが暮らす都市ズートピアで、ウサギ刑事ジュディとキツネの相棒ニックはコンビを組み、街の平和を守っている。ある日、街に謎のヘビ”ゲイリー”が現れ、ふたりはその行方を追ううちに、ズートピアの根幹を揺るがす闇の真相へと迫っていく。

レビュー

排除された者たちの物語

「誰もが何にでもなれる街」を謳ってきた“動物の楽園”ズートピア。前作では草食動物と肉食動物の間にある偏見が、陰謀によって浮き彫りになり分断が進む様子を通して、人種間の偏見と不理解、そして理解への道筋を描いてみせた。だが、あの“多様性都市”に爬虫類の姿は見当たらなかった。その不在こそが、本作で明かされる核心だ。

第2作となる本作は、ヘビ(爬虫類)のゲイリーの出没をきっかけに、ズートピアに埋もれていた“闇の歴史”へと踏み込んでいく。埋められた真実、塗りつぶされた歴史——それはネイティブ・アメリカンを排除し、そこに国家を打ち立てたアメリカの横暴な歴史そのものだ。本作が追求するのは、過去に行われた不正義をなかったことにしない責任である。

「誰がズートピアの“正当な住人”とみなされるのか」。この問いは、移民、先住民、マイノリティなど、アメリカおよび世界各地が抱える現実と地続きのテーマだ。自身が存在する場所から排除され、正当な権利を取り戻そうとするゲイリーや爬虫類たちの姿は、居場所を求める人々の普遍的な物語として胸に迫る。

『ズートピア2』より © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

『ズートピア2』より © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

ズートピアの繁栄は、誰かの居場所を奪った結果の上に成り立っているのではないか。「みんなの安全」や「調和」の名の下で、ある集団が見えない場所に押し込められてきたのだ。真の多様性都市とは、見えない誰かの犠牲を見なかったことにしたままでは成り立たない。過去の不正義と向き合い、排除されてきた側の声を聞くこと——それが社会の成熟には不可欠なのだと、本作は訴えかけている。

信頼のアップデートと、ハグで伝わる“体温”

物語は冒頭から、パートナーセラピーに通わされるほど互いに衝突を繰り返すジュディとニックの姿を映し出す。そこから展開されるのは、「信頼をどうアップデートし続けるか」という相棒ものの定番テーマだ。

観客は、ディズニーのファミリーアニメらしいコメディタッチの掛け合いを楽しみながら、同時にふたりが傷つきながら進んでいく姿を目撃することになる。軽妙なやり取りの裏側で葛藤し、苦悩するふたり。その二重性こそが、本作の相棒描写に深みを与えているのだ。

ただ恩がある、一緒に頑張った経験があるというだけでなく、互いのコンプレックスや弱さを曝け出し合い、受け入れ合うことができる関係性の構築。その尊さに、本作は説得力のある脚本で気づかせてくれる。

また、変温動物であるヘビのゲイリーの繊細な“体温”の描写や、“ハグ”という愛情表現を通して、人と温め合うことの力を表現すると同時に、互いの温度を共有することが互いの理解を進めることも同時に表しているように感じる。

『ズートピア2』より © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

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音楽が語る分断と共生

音楽は前作に続きマイケル・ジアッチーノ(『カールじいさんの空飛ぶ家』『リメンバー・ミー』など)が担当。前作でも多数の民族楽器を使って都市の多様性を形づくったジアッチーノは、本作ではさらに多様なスタイルを横断する巧みなサウンドトラックで、物語への没入と共感を促している。

ゲイリーや爬虫類コミュニティのための楽曲では、ノスタルジックなサウンドメイクが歴史と喪失感を切なく想起させる。一方、リンクスリー家に当てられた楽曲は、優雅に響きながらもどこか不穏さを孕んだワルツで特権階級の立場を表現し、”繁栄する側”と”奪われた側”の心理的距離を音で鮮やかに演出した。

主題歌は前作の「Try Everything」に引き続き、シャキーラ演じるガゼルが歌う「Zoo」。前作より幅を広げて共生を描く本作にふさわしいアンセムソングとなっており、ラテンビートや一部スペイン語のリリックも取り入れられていた。

『ズートピア2』 © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

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『ズートピア2』は、華やかな多様性都市の裏側に隠された歴史と向き合い、真の共生とは何かを問いかける。ファミリー向けアニメーションでありながら、排除と分断という普遍的なテーマに踏み込んだ本作は、前作を超える社会的射程を持った作品として完成している。12月5日(金)より日本公開中。

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