映画『ソウ6』(2009)を紹介&解説。
映画『ソウ6』概要
映画『ソウ6』は、殺人鬼ジグソウが遺した“ゲーム”と、その後継者をめぐる疑念を描く人気スリラー『ソウ』シリーズの第6弾。前作でFBI捜査官ストラムが死亡した後、刑事ホフマンはジグソウの意思を継ぐ存在として新たなゲームを始動させる。監督はシリーズの編集を手がけてきたケヴィン・グルタート。出演はトビン・ベル、コスタス・マンディロア、ベッツィ・ラッセル、マーク・ロルストン、ピーター・アウターブリッジ、ショウニー・スミスら。
作品情報
日本版タイトル:『ソウ6』
原題:Saw VI
製作年:2009年
本国公開日:2009年10月23日
日本公開日:2009年11月6日
ジャンル:ホラー/スリラー
製作国:アメリカ
原作:無
上映時間:90分
映倫区分:R15+
前作:『ソウ5』(2008)
次作:『ソウ ザ・ファイナル 3D』(2017)
監督:ケヴィン・グルタート
脚本:パトリック・メルトン/マーカス・ダンスタン
製作:マーク・バーグ/オーレン・クールズ/グレッグ・ホフマン
製作総指揮:ダニエル・ジェイソン・ヘフナー/ジェームズ・ワン/リー・ワネル/ステイシー・テストロ/ピーター・ブロック/ジェイソン・コンスタンティン
撮影:デヴィッド・A・アームストロング
編集:アンドリュー・クーツ
作曲:チャーリー・クロウザー
出演:トビン・ベル/コスタス・マンディロア/ベッツィ・ラッセル/マーク・ロルストン/ピーター・アウターブリッジ/ショウニー・スミス/アシーナ・カーカニス/サマンサ・レモール/タネドラ・ハワード
製作:ツイステッド・ピクチャーズ
配給:ライオンズゲート(米国)/アスミック・エース(日本)
あらすじ
FBI捜査官ストラムの死後、ジグソウの後継者をめぐる疑念はなお消えていなかった。刑事ホフマンは事件の中心から逃れようとする一方、FBI捜査官エリクソンが真相へと近づいていく。そんな中、医療保険会社の幹部ウィリアム・イーストンは、自身の判断と“命の選別”を問われる過酷なゲームへと放り込まれる。ジグソウが遺した計画は、過去の事件と現在の罠を結びつけながら、シリーズの核心へ迫っていく。
主な登場人物(キャスト)
ジョン・クレイマー/ジグソウ(トビン・ベル):人間に“生きる価値”を問いかける死のゲームを仕掛けてきた人物。すでに死亡しているが、遺された計画や記録を通じて物語に大きな影響を与える。

『ソウ6』より © 2009 Lions Gate Films Inc.
マーク・ホフマン(コスタス・マンディロア):ジグソウ事件に関わる刑事。事件の捜査線上に立ちながら、ジグソウの遺志と密接に結びついた存在として物語の中心を担う。

『ソウ6』より © 2009 Lions Gate Films Inc.
ジル・タック(ベッツィ・ラッセル):ジョン・クレイマーの元妻。ジョンが遺した品や言葉を通じて、ジグソウの計画の一端に関わっていく。

『ソウ6』より © 2009 Lions Gate Films Inc.
ダン・エリクソン(マーク・ロルストン):FBI捜査官。ストラムの死後もジグソウ事件の真相を追い、ホフマンへの疑念を深めていく。

『ソウ6』より © 2009 Lions Gate Films Inc.
リンジー・ペレーズ(アシーナ・カーカニス):前作で死んだと思われていたFBI捜査官で、死んだストラムの元相棒。ジグソウ事件の捜査に関わり、ホフマンをめぐる疑念と事件の真相に近づいていく。

『ソウ6』より © 2009 Lions Gate Films Inc.
ウィリアム・イーストン(ピーター・アウターブリッジ):医療保険会社の幹部。命に関わる判断を下してきた人物として、ジグソウの新たなゲームの標的となる。

『ソウ6』より © 2009 Lions Gate Films Inc.
アマンダ・ヤング(ショウニー・スミス):かつてジグソウのゲームを生き延びた女性。回想を通じて、ジョンやジグソウの計画との関係が改めて描かれる。

『ソウ6』より © 2009 Lions Gate Films Inc.
パメラ・ジェンキンス(サマンサ・レモール):ジグソウ事件を追う記者。ウィリアムの周囲にいる人物として、物語の重要な局面に関わっていく。

『ソウ6』より © 2009 Lions Gate Films Inc.
作品の魅力解説
『ソウ6』の魅力は、シリーズ恒例の過酷なトラップだけでなく、“誰が生きる価値を決めるのか”という倫理的な問いを物語の中心に置いている点にある。医療保険会社の幹部をゲームの対象にすることで、命の選別、制度の冷酷さ、個人の責任というテーマがより明確に浮かび上がる。
また、本作ではジグソウの死後も続く計画と、ホフマンをめぐる捜査が並行して進む。ゲームの緊張感とサスペンスの駆け引きが重なり、シリーズ全体の伏線や人物関係が整理されていく構成になっている。
ケヴィン・グルタート監督は、過去作で編集を担当してきた人物でもあり、シリーズ特有のテンポや回想の使い方を熟知している。残酷描写のインパクトに加え、過去と現在をつなぐ編集のリズムが、物語の謎解きとしての面白さを支えている。
ストーリー解説(ネタバレ)
冒頭、ふたりの高利貸しが“肉”を秤にかけられる
物語は、エディとシモーネというふたりの男女が、頭部に危険な装置を取り付けられた状態で目を覚ます場面から始まる。ふたりは金に困った人々へ返済困難な貸付を行い、他人の弱みに付け込んで利益を得てきた人物たちである。
目の前には秤が置かれており、ジグソウのメッセージは、ふたりに“自分自身の肉”を切り取って秤に乗せるよう命じる。制限時間内により重い肉を差し出した者だけが生き残れるという、本シリーズらしい残酷な選択である。
エディは腹部の肉を切り取って秤に乗せるが、シモーネはそれを上回るため、自らの腕を切断する。結果として秤はシモーネ側に傾き、エディは頭部の装置によって死亡する。生き残ったシモーネも重傷を負い、苦しむことになる。
この冒頭の罠は、本作も単なる連続殺人事件の物語ではなく、人の弱さや命を利益に変える社会構造へ視線を向けていることを示す導入になっている。
ホフマンはストラムに罪を着せ、ジグソウ後継者として動き続ける
前作『ソウ5』のラストで、FBI捜査官ピーター・ストラムは罠によって死亡した。『ソウ6』はその直後の状況を引き継ぎ、刑事マーク・ホフマンがストラムの遺体を利用して、自分への疑いをそらそうとするところから物語が動き出す。
ホフマンは、ストラムの切断された手を使って現場に指紋を残し、あたかもストラムこそがジグソウの後継者であったかのように偽装する。これにより、捜査機関はストラムが事件に関与していた可能性を追うことになる。
しかし、FBI捜査官ダン・エリクソンと、死んだと思われていたリンジー・ペレーズは、次第に違和感を覚える。エディの遺体から切り取られたジグソーパズル型の傷について、検死を担当するアダム・ヘフナー医師は、その刃物の特徴が過去のセス・バクスター事件と一致すると指摘する。これは、ホフマンがかつてジグソウを模倣して行った事件とつながる重要な手がかりだ。エリクソンらに疑うような視線を向けられたホフマンは焦りを募らせる。
この段階で、物語はふたつの軸に分かれていく。ひとつはホフマンが新たなゲームを遂行する軸、もうひとつはFBIが“ストラム犯人説”の裏にある矛盾へ近づいていく捜査の軸である。
ジル・タックが受け取った箱と、新たな標的ウィリアム
ホフマンは、ジグソウ事件を追ってきた記者パメラ・ジェンキンスの導きでジョン・クレイマーの元妻ジル・タックのもとを訪れる。ジルはジョンが遺した箱を持っており、その中には次のゲームに関係する複数の封筒が入っている。
ホフマンはジルに封筒を渡すよう迫り、その中に入っていた写真をもとに新たな標的を確認する。今回の中心人物となるのは、医療保険会社に勤める幹部ウィリアム・イーストンである。
ウィリアムは、保険加入者の治療費支払いを判断する立場にあり、会社独自の計算式や規定に従って、数多くの申請を冷酷に却下してきた人物である。
ウィリアムにはジョン・クレイマーとの間に因縁があった。彼が不安げにジグソウ事件のニュースを眺めていると、豚の覆面の人物が現れ、ウィリアムは拉致される。
第1のテスト、ウィリアムと清掃員ハンクの“呼吸”のゲーム
ウィリアムは、廃墟のような施設で目を覚ます。彼の四肢には爆発装置付きの拘束具が取り付けられ、制限時間内に複数のテストを突破しなければ命を落とすことになる。
最初のゲームでウィリアムの向かい側に置かれているのは、同じ会社で清掃員として働くハンクである。ふたりは胸部を締め付ける大型の装置に固定され、顔には呼吸用のマスクが装着されている。
ジグソウのメッセージは、ふたりの健康状態の違いを説明する。ウィリアムは比較的健康な人物として扱われる一方、ハンクは喫煙習慣もあり、リスクを抱えている。つまり、ウィリアムがこれまで保険適用の判断に用いてきた“生存の可能性が高いかどうか”という基準が、そのまま彼自身に突きつけられる。
装置は、呼吸するたびに胸を締め付ける仕組みになっている。長く息を止められる者が生き残り、耐えられなくなった者は装置に押し潰される。体調面で不利なハンクは呼吸を我慢できず、装置によって死亡する。目の前で部下が死ぬ光景を見せつけられたウィリアムは生き残り、最初の拘束具を外すための鍵を手に入れる。
このテストは、ウィリアムが普段は書類上で行ってきた“生き残る可能性の選別”を、目の前の人間の死として体験させるものになっている。
ウィリアム・イーストンとジョン・クレイマーの過去
ウィリアムは、過去にジョン・クレイマーと顔を合わせている。ジルが運営していた薬物依存者向けの更生施設ホームワード・バウンド・クリニックのパーティーでのことだ。
その場でウィリアムは、自社の保険判断の仕組みについて語る。彼の考え方は、年齢、健康状態、既往歴、家族構成などをもとに、治療費を負担する価値があるかどうかを判定するというものだった。本人にとっては合理的なビジネス上の判断であり、会社を維持するためのルールでもある。
しかし、ジョンはその考え方に強い違和感を抱く。ウィリアムの判断基準には、人間が死に直面した時の意志や、生きようとする力が含まれていないからである。本作のゲームは、ウィリアム自身にその矛盾を体験させる形で展開していく。
さらにジョンは自身の病の治療に関してもウィリアムに保険適用を拒まれていたことが判明する。ジョンの生きようとする意志は尊重されず、計算式によって切り捨てられていた。
第2のテスト、アレンとアディのどちらを救うのか
次にウィリアムが進む空間では、会社のファイル係アレンと、秘書アディが別々の足場に拘束されているのを発見する。ふたりの首には有刺鉄線の輪がかけられており、ウィリアムはふたりのために用意されたいずれかの取っ手を握ることで、どちらを支え、どちらを犠牲にするかを選ばなければならない。
ジグソウのメッセージは、アレンとアディをウィリアムの保険審査の基準に照らして説明する。アレンは若く健康で、医学的・統計的には生きる価値が高いと判断されやすい。一方のアディは中年で、家族に糖尿病の病歴があるとされるため、ウィリアムの基準ではリスクの高い存在と見なされる。
しかし、ここでジグソウは別の視点を突きつける。アレンには身寄りがない一方、アディには家族がいる。つまり、単なる健康状態や数値だけでは、人が周囲に与える影響や失われる重みを測ることはできないことが示される。
ウィリアムは最終的に身寄りのないアレンを犠牲にし、アディを救う。ウィリアムはここでも、自分の判断によって誰かが死ぬ瞬間を直接見ることになる。
この第2のテストでは、ウィリアムの“合理的な判断”が、人間関係や感情の重みと衝突する。
FBIはホフマンの偽装に迫り、ストラム犯人説が崩れ始める
ウィリアムのゲームと並行して、FBI側の捜査も大きく動く。ダン・エリクソンとリンジー・ペレスは、ストラムがジグソウの後継者だったという筋書きに疑問を抱くようになる。
きっかけのひとつは、犠牲者の遺体から切り取られたジグソウ型の皮膚片である。検死の結果、その切り取り方に使われた刃物が、過去のセス・バクスター事件と一致することがわかる。セスは、ホフマンの妹を殺した人物であり、ホフマンがジグソウを模倣して殺害した相手だった。
さらに、現場に残されたストラムの指紋にも矛盾が生じる。ストラムはすでに死亡していたはずなのに、その後の現場に彼の指紋が残されている。これは、誰かがストラムの手を使って意図的に証拠を偽装していた可能性を示していた。
エリクソンとペレスは、ジグソウのテープ音声の解析を進める。もし音声の加工が解除されれば、誰がテープの声を吹き込んでいたのかが明らかになる。ホフマンはこの捜査が自分に迫っていることを察し、次第に追い詰められていく。
第3のテスト、弁護士デビーと蒸気の迷路
さらに進んだウィリアムは、ボイラー室のような場所にたどり着く。ここで待っているのは、会社の弁護士デビーである。彼女が制限時間内に迷路を抜けなければ、身につけられた装置によって命を奪われる。
迷路には、皮膚を焼くほどの超高温の蒸気が噴き出す通路が複数あり、ウィリアムは上階からレバーを操作して蒸気を止めなければならない。ただし、そのレバーを引くたびに、今度はウィリアム自身が蒸気による苦痛を受ける仕組みになっている。
ここでウィリアムは、これまでとは異なり、他人を助けるために自分の身体を傷つける立場に置かれる。彼は必死にデビーを誘導し、蒸気を止めながら進ませようとするが、熱さに耐えきれずレバーを離してしまう場面もあり、デビーは火傷を負いながら進む。
やがてデビーはゴール付近にたどり着くが、そこで彼女は衝撃的な事実を知る。自分を救うための鍵は、ウィリアムの体内に隠されているというのだ。デビーは生き残るために電動ノコギリでウィリアムを襲い、鍵を取り出そうとするが、ウィリアムが必死に抵抗するうちに制限時間が尽き、デビーの装置が作動、彼女は死亡する。
第4のテスト、6人の部下が回転台に縛られる
デビーのテストを終えたウィリアムは、さらに奥へ進み、赤い渦巻きの印が描かれた扉の前にたどり着く。扉の向こうから助けを求める声を聞いたウィリアムは、中にいるのが自分の部下たちであることに気づく。
部屋に入ると、6人の部下-アーロン、エミリー、ジーナ、デイヴ、シェルビー、ジョシュが回転式の台に固定されていた。彼らはウィリアムの保険会社で働き、申請書類の不備や過去の病歴、規定違反を見つけ出す役割を担ってきた人物たちだった。つまり、彼らの仕事は保険金の支払いを拒否する理由を探すことでもあった。
回転台の前にはショットガンが設置され、台が止まるたびにひとりが銃口の正面に来る。ウィリアムが救う判断をしなければ、その人物は撃たれて死亡する。
救うには、ウィリアムが目の前に置かれた箱に手を入れ、針に貫かれながらボタンを押すことが必要だ。さらに、救える人数は6人中2人だけで、残る4人は必ず死ぬ。ウィリアムは、これまで書類上で行ってきた“誰を救い、誰を切り捨てるか”という判断を、目の前の人間に対して行うことになる。
動けないウィリアムと、最初の犠牲者アーロン
最初にショットガンの前に止まったアーロンは若く健康で、保険審査で重視してきた基準に沿って“自分は生きる価値がある”と必死に訴えるが、6人の命がかかった状態でウィリアムは即座に判断できない。迷っている間に時間が過ぎ、アーロンは撃たれて死亡する。
この場面でウィリアムは、“何もしないこと”もまた“選択”になると突きつけられる。申請を拒否すること、判断を保留すること、基準に従うこと。これまで行っていたすべてが、誰かの人生を左右する行為だったという事実が、ゲームを通じて可視化されていく。
エミリーを救うため、ウィリアムは自分の手を差し出す
次にショットガンの前に止まったエミリーは、“自分には子どもがいるため、母親として生きて戻らなければならない”と必死に伝える。ウィリアムはついに、痛みに耐えてボタンを押す決断をする。ショットガンの向きが変わり、エミリーは死亡を免れる。
ジーナ、デイヴが犠牲になり、部下たちは互いを責め始める
回転台は止まっては動き、次の人物をショットガンの前へ運んでいく。その後の部下たちも自分が生き残る理由をウィリアムに対して必死にプレゼンするが、他の者たちはその主張の真偽を疑ったり、粗を探したりして、自分が助かるために他人の価値を下げようとする。この姿からは、ウィリアムが会社で作ってきた“選別の論理”が、部下たちの中にも浸透していることがわかる。その後、ウィリアムがボタンを押さなかったジーナ、デイヴが順に犠牲になる。
ウィリアムはシェルビーを救い、ジョシュを見届ける
残された者たちの中で、ウィリアムは2人目としてシェルビーを救う。ウィリアムは感謝されるが、結果的に救える人数の上限に達する。最後にショットガンの前へ回ってきたのはジョシュ。自分がもう助からないことを悟ったジョシュは、怒りと恐怖の中でウィリアムを罵倒しながら死んでいく。
第4のテストは終わる。生き残ったのはエミリーとシェルビーだけだった。ウィリアムは手に応急処置を施し、最後の拘束具を外す鍵を手に入れ、制限時間が迫る中で最終地点へ向かう。
別室ではパメラ、タラ、ブレントがウィリアムのゲームを見せられている
ウィリアムのゲームが進む一方で、別の檻には3人の人物が閉じ込められている。ひとつの檻には、ジグソウ事件を追ってきた記者パメラ・ジェンキンス。彼女は過激な報道でジグソウのメッセージを歪めたとして怒りを買っていた。観客はこの後知ることになるが、彼女はウィリアムの実の妹、たったひとりの家族だった。
もうひとつの檻には、タラ・アボットと息子ブレントがいる。タラとブレントは、ウィリアムの保険会社に治療費の支払いを拒否されたハロルド・アボットの妻と息子である。心臓病を患い、ウィリアムの判断で治療費の支払いを認められなかったハロルドは、その後死亡していた。ウィリアムへの恨みを抱える彼らは、ウィリアムが進むゲームをモニター越しに見せられながら、自分たちがなぜここにいるのかを少しずつ理解していく。
音声解析ラボで、ホフマンは正体を隠すために殺害へ走る
ホフマンはエリクソンとペレーズに呼ばれ、音声解析ラボへ向かう。そこでは技術者サチがテープの解析を進めていた。解析が進むにつれて、加工されていた声がホフマンのものだと判別できる状態に近づいていく。
エリクソンはホフマンに対し、ストラムの指紋が不自然な形で残されていたことも突きつける。 ペレーズもまた、ホフマンへの疑いを強めている。この場で音声が完全に復元されれば、ホフマンの正体が露見することは避けられない。
追い詰められたホフマンはエリクソンに襲いかかり、混乱の中でペレーズとサチも襲った上で、解析に必要な機械も壊す。ラボ内は惨劇の場となる。
ホフマンはさらに、ストラムの切断された手を使って現場に指紋を残し、再びストラムに罪を着せようとする。そして証拠を隠滅するため、ラボに火を放ってその場を後にする。これによりホフマンは一時的に捜査の追及をかわすが、彼の行動はもはやジグソウの理念ではなく、自己保身のための殺人へと明確に変化している。
アマンダの手紙によって、ホフマンの過去の脅迫が明らかになる
終盤では、過去作『ソウ3』に関わる重要な真相も明かされる。ジル・タックは、ホフマンがアマンダ・ヤングに宛てて書いた手紙の存在を知る。その手紙には、アマンダがかつてセシル・アダムスと関わり、ジルのクリニック襲撃事件に間接的に関与していたことが記されていた。この襲撃によってジルは流産し、ジョン・クレイマーとの子どもギデオンを失っている。
この事実を利用したホフマンは、アマンダを脅していた。彼はアマンダに、リン・デンロン医師を殺すよう迫っていたのである。『ソウ3』でアマンダがリンを撃ち、結果的にジェフに殺される流れの裏には、ホフマンによる脅迫があったことが示される。
この事実を知ったジルはジョンが遺した箱の中にあった6つ目の封筒=ホフマンの写真が入った封筒の意味を受け止め、ホフマンを“テスト”する決意を固める。
最終地点、ウィリアムは妹パメラと再会する
制限時間が迫る中、ウィリアムは最後の部屋にたどり着く。そこは複数の檻に分かれた空間で、片方には妹パメラ、もう片方にはタラとブレントが閉じ込められている。ここで、パメラがウィリアムの妹であることが明らかになり、ウィリアムのゲームは“会社の倫理”だけでなく、家族との間にある“個人的な感情”にも接続される。
一方、タラとブレントは、ウィリアムによって夫・父を失った遺族である。ウィリアムがゲームを通してどれだけ他人を救おうとしてきたとしても、彼の過去の判断によって失われた命は戻らない。最終テストは、ウィリアム本人ではなく、彼に人生を奪われた側の人間に選択権を与える形で行われる。
タラとブレントに、ウィリアムの生死を決める権利が渡される
モニターにジョン・クレイマーの映像が映し出される。ジョンはタラに、ウィリアムを許すのか、それとも夫に下されたのと同じ“死の宣告”を彼に与えるのかを選ばせる。
母子の檻の中には、ウィリアムを生かすか、死なせるか選べるレバーがあり、選択はタラとブレントに委ねられる。ウィリアムは必死に弁明し、パメラも兄を救ってほしいと訴える。
夫を失った怒りと悲しみを抱えながらも、簡単には他人を殺すレバーを引けないタラ。彼女は復讐心と良心の間で揺れる。しかし、父を失った怒りが強く燃え続けている息子ブレントは違った。母が決断できずにいる中、ブレントは感情のままにレバーを引く。
ウィリアムは酸の装置によって死亡する
ブレントがレバーを引いた瞬間、ウィリアムのいる檻の装置が作動する。天井から金属の格子状の装置が降り、複数の針がウィリアムの身体に突き刺さる。その針を通してフッ化水素酸が体内に注入され、ウィリアムは体内から身体を溶かされる激痛の中で死亡する。
ここで本作の中心にあった問いが反転する。ウィリアムはこれまで、保険会社の規定に基づいて他人の命の可能性を判定してきた。だが最終的に彼自身の命も、彼がかつて見捨てた人物の遺族によって判断される。ゲームを通して彼が自分の論理の残酷さを理解し始めた後に、それでもなお過去の結果からは逃れられないという残酷な構造を描いている。
ジルはホフマンに逆トラバサミを装着する
ウィリアムの最終テストと同時進行で、ジルはホフマンへのテストを開始する。監視室に戻ったホフマンが、そこに置かれたアマンダ宛ての手紙を見て動揺すると、直後にジルはホフマンを気絶させる。
目を覚ましたホフマンは、椅子に拘束されている。ジルは彼の頭部に、かつてアマンダが試された逆トラバサミ型の装置を取り付ける。“6つ目の封筒”と自身の写真によって、ホフマンはジョンの最後の計画には、ホフマンのテストも含まれていたと知る。
ただし、ジルはホフマンに明確な逃げ道を示さない。ウィリアムのゲームの結末を見届けた後、ホフマンに向かって“ゲームオーバー”を告げたジルは、ホフマンを放置してその場を去る。ジグソウの後継者として他人を試してきたホフマンは、自分自身が罠にかけられる立場へと転落する。
ホフマンは罠から脱出するが、顔に深い傷を負う
逆トラバサミのタイマーが進む中、ホフマンは必死に脱出を試みる。手足を拘束された状態でありながら、彼は自らの手を負傷させて拘束から抜け出そうとする。彼は装置を外す鍵を探すが、簡単には見つからない。
時間が残り少なくなる中、ホフマンは扉の小窓にある金属の格子を利用する。装置の一部を格子に引っかけ、逆トラバサミが完全に開き切らないようにして、頭を無理やり引き抜こうとする。
装置は作動し、ホフマンの頬を大きく裂くが、なんとか死亡することは回避できた。
ジグソウの後継者をめぐる物語がまだ終わっていない。ジルはジョンの遺志を実行したが、ホフマンを完全に始末することはできなかった。むしろホフマンがこれまで以上に危険な存在として生き残ることになり、本編が終了する。
ポストクレジットで、アマンダの警告が挿入される
本編後には、アマンダに関する短い場面が挿入される。そこでは、まだ生きていた際のアマンダがコルベット・デンロンに接触し、“彼女を助けに来る人物を信じないように”と警告する。
コルベットは『ソウ3』に登場したジェフとリン・デンロンの娘であり、ホフマンによって救出されることになる人物である。この短い場面は、アマンダがホフマンの存在や危険性を意識していたことを示唆するものになっている。
また、アマンダの手紙の真相が明らかになった後にこの場面が置かれることで、彼女が単なる失敗した弟子ではなく、ホフマンに操られ、追い詰められた人物でもあったことが強調される。『ソウ6』は、ウィリアムの保険ゲームを完結させると同時に、アマンダ、ジル、ホフマンの関係を再配置し、シリーズ後続作へ向けて新たな対立を残して幕を閉じる。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
