小島秀夫が映画『シラート』を“アルゴリズムから生まれない映画”と語る-ラシェ監督との対談で見えた予測不能な旅と映画作りの哲学

小島秀夫が映画『シラート』を“アルゴリズムから生まれない映画”と語る-ラシェ監督との対談で見えた予測不能な旅と映画作りの哲学 NEWS
映画『シラート』小島秀夫がオリベル・ラシェ監督と対談 © 2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFÓNICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.,FILMES DA ERMIDA, S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L.,4A4 PRODUCTIONS

映画『シラート』を巡る来日特別対談が公開され、作品の予測不能な魅力が語られた。


6月5日(金)日本公開の映画『シラート』を鑑賞したゲームクリエイターの小島秀夫が、第38回東京国際映画祭(2025)で来日したオリベル・ラシェ監督と対談した。本作は、本年度米アカデミー賞で音響賞と国際長編映画賞にノミネートされ、カンヌ国際映画祭では審査員賞を含む4冠を獲得した作品。失踪した娘を探す父と息子が、砂漠のレイブパーティを起点に、予測不能な旅へ踏み込んでいく。

今回の対談で浮かび上がったのは、単なる“衝撃作”という言葉では収まらない『シラート』の特異な構造である。小島は、映像や音響への反応だけでなく、作品が既存の物語形式から外れていく感覚に強く惹かれたことを明かしている。

映像と音響が生む、身体的な没入感

小島秀夫が映画『シラート』を“アルゴリズムから生まれない映画”と語る-ラシェ監督との対談で見えた予測不能な旅と映画作りの哲学

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小島は『シラート』について、「とんでもない映画でした。今年観た映画の中でも、間違いなくトップクラス」と率直に評価。さらに、「映像も音響も圧倒的で、特に没入感がすごい。観ている最中、何度も『これはすごいな……』と唸ってしまいました」と語り、鑑賞中の感覚をラシェ監督に伝えた。

本作は、父ルイスと息子エステバンが、モロッコの山岳地帯から砂漠の奥へと進んでいくロードムービーの形を取りながら、やがて現実と幻覚の境界を揺さぶるような領域へ踏み込んでいく。重低音が響くレイブ空間、赤い照明、荒涼とした砂漠の風景は、登場人物の心理と結びつきながら、観客の身体感覚にも働きかける。

小島は、ラシェ監督の前作『O Que Arde(Fire Will Come)』にも触れ、「大自然と人間の関係を描きながら、どこか幻想的で、それでいて現実の痛みがある」とコメント。出演者の多くが実際にその土地で暮らす人々であることを知ると、「演技というより、本当にそこに“生きている”感じがする」と、そのリアリティにも言及した。

“普通の映画の構造”から外れていく物語

小島秀夫が映画『シラート』を“アルゴリズムから生まれない映画”と語る-ラシェ監督との対談で見えた予測不能な旅と映画作りの哲学

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対談の中で小島は、『シラート』について「普通の映画の構造からどんどん外れていく」と指摘した。物語は、失踪した娘を探す父と息子の旅として始まる。しかし、道中で出会う人々や過酷な環境によって、作品は次第に別の次元へと変化していく。小島は「最初は娘を探す物語として始まるのに、途中から全く別の旅になっていく」と、その予測不能な語り口に注目した。

これに対し、ラシェ監督は「人生って、そういうものだと思うんです。突然、全てが変わってしまう」と応じた。さらに、「結果やマーケットを気にして、最初から“安全なもの”を作ってしまったら、新しい映画は生まれません」と、自身の映画制作における姿勢を語っている。

その言葉を受け、小島は「アルゴリズムからは絶対に生まれない映画ですよね」と共感を示した。効率や予測可能性が重視される時代において、『シラート』は、あらかじめ計算された快楽ではなく、観客を未知の場所へ連れていく映画として立ち上がっている。

喪失と向き合う、精神的な旅としての『シラート』

小島秀夫が映画『シラート』を“アルゴリズムから生まれない映画”と語る-ラシェ監督との対談で見えた予測不能な旅と映画作りの哲学

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ラシェ監督は、自身の映画づくりについて「私は人が好きなんです」と語り、「映画制作を通して時間をかけ、少しずつ関係を築いていく。撮影というより、ひとつの家族を作る感覚に近いかもしれません」と説明した。作品に漂う生々しさや、登場人物たちがその場に存在しているような感触は、こうした制作姿勢とも結びついている。

小島は『シラート』を「単なるロードムービーではなく、非常に精神的な旅の映画」と表現し、「外側の障害を越えるだけではなく、内面の変化を描いている」と分析。ラシェ監督も「まさに“英雄の旅”ですね。ただし、敵を倒すためではなく、自分自身の感覚や喪失と向き合うための旅です」と応じた。

対談の最後に小島は、「観終わった後、ものすごい感情が残る。10年後、20年後にも語られる映画になると思います」と改めて本作への思いを語った。ラシェ監督はその言葉に感謝し、「そうなれば嬉しいです」と笑顔を見せたという。なお、この対談の全文は『シラート』の劇場パンフレットに収録される予定である。

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