映画『ソウ ザ・ファイナル 3D』(2010)を紹介&解説。
映画『ソウ ザ・ファイナル 3D』概要
映画『ソウ ザ・ファイナル 3D』は、ケヴィン・グルタート監督が前作『ソウ6』に続いて手がけた『ソウ』シリーズ第7弾の3Dホラー/スリラー。ジグソウ亡き後、その遺志を継ぐ刑事マーク・ホフマンと、ジョン・クレイマーの元妻ジル・タックの対立、さらに“ジグソウのゲームの生存者”を名乗る作家ボビー・デイゲンに仕掛けられる新たな試練を描く。出演はトビン・ベル、コスタス・マンディロア、ベッツィ・ラッセル、ショーン・パトリック・フラナリー、ケイリー・エルウィズら。
作品情報
日本版タイトル:『ソウ ザ・ファイナル 3D』
原題:Saw 3D
別題:Saw: The Final Chapter
製作年:2010年
本国公開日:2010年10月29日
日本公開日:2010年10月30日
ジャンル:ホラー/スリラー/サスペンス
製作国:アメリカ
原作:無
上映時間:90分
レーティング:R15+
前作:『ソウ6』(2009)
次作:『ジグソウ:ソウ・レガシー』(2017)
監督:ケヴィン・グルタート
脚本:パトリック・メルトン/マーカス・ダンスタン
製作:マーク・バーグ/グレッグ・ホフマン/オーレン・クールズ
製作総指揮:ダニエル・J・ヘフナー/ピーター・ブロック/ジェイソン・コンスタンティン/ステイシー・テストロ/ジェームズ・ワン/リー・ワネル
撮影:ブライアン・ゲッジ
編集:アンドリュー・クーツ
作曲:チャーリー・クロウザー
出演:トビン・ベル/コスタス・マンディロア/ベッツィ・ラッセル/ショーン・パトリック・フラナリー/ケイリー・エルウィズ/ジーナ・ホールデン/チャド・ドネラ
製作:ツイステッド・ピクチャーズ/セレンディピティ・プロダクションズ/ア・ビガー・ボート
配給:ライオンズゲート(米国)/アスミック・エース(日本)
あらすじ
ジグソウことジョン・クレイマーの死後、その遺志をめぐる争いはさらに過激化していた。ジグソウの後継者として暗躍するマーク・ホフマンは、ジョンの元妻ジル・タックへの復讐を狙う。一方、“ジグソウのゲームを生き延びた男”として名声を得た作家ボビー・デイゲンは、同じく生存者たちの精神的支柱として注目を集めていた。しかし、彼の過去に隠された秘密が明らかになるにつれ、ボビーは本物のゲームへと引きずり込まれていく。
主な登場人物(キャスト)
ジョン・クレイマー/ジグソウ(トビン・ベル):命を粗末にする者たちに過酷なゲームを仕掛けてきた連続殺人鬼。すでに死亡しているが、残された計画や思想が物語全体に大きな影を落とす。

ジョン・クレイマー/ジグソウ(トビン・ベル)、『ソウ ザ・ファイナル 3D』より © 2010 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
マーク・ホフマン(コスタス・マンディロア):ジグソウの後継者として行動する刑事。前作でジルの罠を逃れた後、復讐と証拠隠滅のためにさらに凶暴な行動へと突き進んでいく。

マーク・ホフマン(コスタス・マンディロア)、『ソウ ザ・ファイナル 3D』より © 2010 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
ジル・タック(ベッツィ・ラッセル):ジョン・クレイマーの元妻。ジョンが遺した計画をめぐってホフマンと対立し、自らを守るため警察に協力を求める。

ジル・タック(ベッツィ・ラッセル)、『ソウ ザ・ファイナル 3D』より © 2010 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
ボビー・デイゲン(ショーン・パトリック・フラナリー):ジグソウのゲームから生還した人物として本を出版し、名声を得た作家。生存者たちの精神的指導者のような立場にいるが、その過去には重大な秘密が隠されている。

ボビー・デイゲン(ショーン・パトリック・フラナリー)、『ソウ ザ・ファイナル 3D』より © 2010 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
ローレンス・ゴードン医師(ケイリー・エルウィズ):シリーズ第1作『ソウ』に登場した外科医。ボビーが関わる生存者たちの場に姿を見せ、シリーズの過去と現在をつなぐ重要な存在となる。

ローレンス・ゴードン医師(ケイリー・エルウィズ)、『ソウ ザ・ファイナル 3D』より © 2010 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
ジョイス・デイゲン(ジーナ・ホールデン):ボビーの妻。夫の成功を支える存在だが、ボビーの過去と新たなゲームによって危険な状況に巻き込まれていく。

ジョイス・デイゲン(ジーナ・ホールデン)、『ソウ ザ・ファイナル 3D』より © 2010 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
マット・ギブソン(チャド・ドネラ):内務調査に関わる刑事。ジルからホフマンに関する情報を得て、ジグソウ事件の真相に迫ろうとする。
作品の魅力解説
本作の大きな魅力は、シリーズ第7弾として過去作の伏線や因縁を一気に回収しようとする“最終章”らしい構成にある。ジグソウ本人が不在でありながら、その思想がホフマン、ジル、ボビーらの行動を通して増幅されていく点が特徴だ。
また、シリーズ初の3D作品として制作されたことで、トラップの見せ方にも視覚的なインパクトが強く打ち出されている。これまでの密室的な恐怖に加え、劇場空間そのものを意識したような演出が取り入れられ、残酷なゲームを“見世物”として押し出す方向性が強まっている。
物語面では、“本当に生き延びた者”と“生還者を演じる者”の違いが重要なテーマとなる。ボビー・デイゲンの設定を通して、トラウマや被害体験を名声やビジネスに変えてしまうことの危うさが描かれ、ジグソウのゲームが単なる罰ではなく、嘘や自己演出を暴く装置として機能している。
さらに、ホフマンとジルの対立は、ジョン・クレイマーの思想が弟子や関係者によってどのように変質していくかを示す要素でもある。ジグソウの理念を継ぐ者が本当にその本質を理解しているのか、あるいは暴力と復讐だけを引き継いでいるのか。本作は、その問いをシリーズの大きな終盤として提示している。
一方で、批判点も少なくない。3D演出を意識した派手なゴア描写や飛び出すような見せ場が前面に出たことで、過去作にあった心理戦や緊張感よりも、ショック描写の強さが目立つ場面がある。また、ボビーのゲームでは、彼の嘘を知らなかった様子の妻ジョイスまで極めて残酷な罠に巻き込まれるため、ジグソウの“罪を問うゲーム”としては理不尽さが強く感じられる。
ローレンス・ゴードン医師の再登場も、シリーズ第1作からのファンにとっては大きなサプライズである一方、終盤で一気に明かされるため、伏線回収というより急な後付けに見える部分もある。最終章として過去作とのつながりを強調した作品ではあるが、物語の整合性よりも衝撃的な結末を優先した印象を受ける観客もいるだろう。
ストーリー解説(ネタバレ)
ローレンス・ゴードン医師の生存が示される冒頭
物語は、シリーズ第1作『ソウ』のラストで足を切断してバスルームから脱出したローレンス・ゴードン医師のその後を示す場面から始まる。ゴードンは血を流しながら廃墟のような通路を這い、熱を帯びた蒸気パイプに切断面を押し当てて止血しようとする。この短い場面によって、第1作以来、長らく明確には描かれてこなかったゴードンの生存が観客に提示される。
この導入は、単なるファンサービスではなく、シリーズ全体の未回収の謎を本作で扱うことを示す合図にもなっている。ゴードンがなぜ生きていたのか、その後どのような道をたどったのかは、この時点では詳しく説明されない。ただし、物語の冒頭から“過去作の出来事が現在にもつながっている”ことが強調され、本作が“最終章”として過去の因縁を回収していく作品であることが印象づけられる。
ショーウィンドウで行われる公開処刑型のゲーム
続いて物語は、人通りのあるショッピングエリアへと移る。ガラス張りの店舗の中で、ブラッドとライアンというふたりの若い男性が装置に拘束されて目を覚ます。彼らの前には丸ノコが設置され、その頭上、中央にはディナという女性が吊るされている。ディナはふたりと同時に関係を持って操り、犯罪行為にまで関わらせていた人物であり、ゲームは三角関係の裏切りを暴く形で始まる。
ビリー人形のメッセージにより、ブラッドとライアンは制限時間内に互いを押し合い、どちらかが相手を丸ノコへ押し込めばディナを救えると告げられる。逆に、どちらも相手を殺さなければ、ディナが中央の刃に落とされる仕組みである。ガラスの周囲には通行人が集まり、屋外から恐怖の光景を目撃する。これまでの『ソウ』シリーズでは密室的なゲームが中心だったが、本作では冒頭から“見世物”としての残虐性が強く打ち出されている。
当初、ブラッドとライアンは互いに命を奪い合おうとする。しかし、やがてディナが自分たちを利用していたことを理解し、ふたりは殺し合いをやめる。結果として、ディナは装置によって犠牲となる。この場面は、本作が3D作品として作られたことを意識した派手な見せ場であると同時に、“嘘”や“他人から搾取する行為”が罰の対象となるという物語全体のテーマを早い段階で示している。
ホフマンの生存とジルへの復讐心
一方、前作『ソウ6』のラストでジル・タックによって逆トラバサミの罠にかけられたマーク・ホフマンは、重傷を負いながらも生き延びていた。彼は顔に傷を残したまま罠から脱出し、自分を殺そうとしたジルへの復讐を決意する。ジルはホフマンが生きていることを知り、警察に助けを求める。
ジルが接触するのは、内務調査官のマット・ギブソンである。ジルは、ホフマンがジグソウの後継者であると告発する代わりに、自分の身の安全と免責を求める。本作は、ホフマンによる復讐劇と、警察側が彼を追う捜査パートを並行して進めていく。
ホフマンはすでにジグソウの思想を継ぐ者というよりも、復讐と自己保身のために暴力を行使する存在として描かれる。ジグソウことジョン・クレイマーのゲームには、少なくとも本人なりの倫理や“試練”の理屈があったが、ホフマンの行動にはより直接的な怒りと殺意がにじむ。この違いが、本作の中でジグソウの遺産がいかに歪められていくかを示している。
ジグソウ生存者の会と、ボビー・デイゲンの登場
本作のもうひとつの軸として登場するのが、ボビー・デイゲンである。彼は“ジグソウのゲームから生還した男”として知られ、その体験を本にして名声を得た作家兼自己啓発系の発信者である。ボビーはジグソウの生存者たちの集まりにも顔を出し、彼らを励ますような立場にいる。
しかし、ボビーの過去には大きな嘘がある。彼は実際にはジグソウのゲームを経験しておらず、生還者としての物語をでっち上げて成功を手にしていた。つまり、彼は本物の被害者たちの苦しみを利用し、自分の人生を作り変えていた人物である。
この設定は、本作の中心テーマのひとつである“被害体験の搾取”につながっている。ジグソウのゲームを生き延びた者たちは、肉体的にも精神的にも深い傷を負っている。一方のボビーは、その痛みを自分のブランドに変え、名声と金を得ているのだ。
白人至上主義グループを狙ったジャンクヤードの罠
ホフマンは、ジルへの復讐と並行して、別のゲームも仕掛けている。そのひとつが、ジャンクヤードで行われる白人至上主義グループへの罠である。対象となるのは、エヴァン、カーラ、ダン、ジェイクらのグループ。エヴァンは車の運転席に固定され、背中はシートに接着されている。彼が制限時間内に身体を引き剥がし、レバーを引かなければ、連鎖的に他の仲間たちも命を落とす仕組みになっている。
この罠では、車、チェーン、タイヤ、ジャッキが連動する形で複数人が同時に危険にさらされる。エヴァンが行動を起こせなければ、仲間たちは次々と装置の犠牲になる。罠のメッセージには、彼らの差別思想に対する皮肉が込められており、一応はジグソウ的な“道徳的裁き”の形式をなぞっているようだ。
ただし、このゲームもホフマンが仕掛けたものである以上、ジョン・クレイマー本来の思想と完全に一致しているかは疑わしい。ホフマンにとって重要なのは、罠そのものだけでなく、その後に警察を誘導し、自分の次の計画へつなげることでもある。ジャンクヤードの事件は、ギブソンたち警察を動かすきっかけとなり、ホフマンの本当の目的であるジルへの接近にも関わっていく。
ボビー・デイゲンが本物のゲームに巻き込まれる
一方、ホラ吹きのボビーは何者かに拉致され、廃墟のような建物で目覚める。彼が閉じ込められていた檻は、勢いよく動いた後に天井から吊るされ、鋭いスパイクが並んだ床の上で開く。ボビーはなんとかスパイクに落下することを回避するが、流れた映像音声によって、60分以内に複数の試練を突破しなければ、巻き込まれた妻ジョイスを救えないということを知る。
この時点で、ボビーの“偽りの生還談”は本物のゲームへと変わる。彼がかつて本の中で語った勇敢なサバイバー像は、現実の恐怖の前で試されることになる。ボビーは檻から脱出するため、揺れる檻の中でタイミングを見計らい、下のスパイクを避けて飛び移らなければならない。彼は最初の危機を辛くも乗り越え、赤いラインに導かれるように建物内を進んでいく。
妻ジョイスは別の場所に拘束され、モニター越しにボビーの行動を見せられている。残酷なのは、夫がなぜこのような目に遭っているのかを彼女は理解していないという点だ。ボビーの嘘を知る者たちだけでなく、どこまで真実を知っていたのか曖昧な周囲の人間まで巻き込まれていくのである。
ニーナの罠――“沈黙”を求められる試練
ボビーが最初に助けようとするのは、彼の広報担当であるニーナである。ニーナは椅子に拘束され、首の周囲には金属の棒が向けられている。ボビーに与えられた時間は60秒。ニーナを救う鍵は、彼女の胃の中に垂らされた釣り針につながれており、ボビーはワイヤーを引いて鍵を取り出さなければならない。
この罠の特徴は、ニーナが悲鳴を上げるほど装置が進行する点にある。音量が一定以上になると、首元に向けられた金属の棒が前進し、彼女の死が早まってしまう。つまり、ニーナは痛みに耐えながら声を抑えなければならない。タイトル的に“沈黙”を求めるこの試練は、広報担当としてボビーの嘘を世間に広めた彼女への罰として設計されている。
ボビーは必死に鍵を取り出そうとするが、ニーナは激痛に耐えきれず悲鳴を上げ続けてしまう。ボビーは鍵を手にするものの、装置を止めるには間に合わず、ニーナは命を落とす。ここでボビーは、自分の作り上げた虚像に関わった人物を目の前で失うことになる。
スザンヌの罠――弁護士が背負わされる責任
次にボビーがたどり着くのは、弁護士スザンヌの試練である。スザンヌは大きな金属製の車輪に拘束されており、車輪が回転することで、彼女の顔が金属の突起へ近づいていく。彼女を救うためには、ボビーが別の装置に入り、重いバーを一定時間持ち上げ続けなければならない。
この装置では、ボビー自身の身体にも痛みが与えられる。バーを持ち上げる過程で、彼の脇腹付近には金属の突起が食い込む。つまり、スザンヌを救うためには、ボビー自身も相応の苦痛を引き受けなければならない。これまで言葉で“生還者”を演じてきたボビーに対し、実際に身体を賭けて他人を救えるのかが問われる場面である。
スザンヌは、人々を正義のもとで守る弁護士という仕事につきながら、ボビーの嘘を法的・社会的にサポートしていた。ボビーは懸命に耐えるが、必要な時間を支えきることができず、スザンヌは両目と口を金属の棒に貫かれて死亡する。ボビーのゲームは単なる脱出劇ではなく、彼の周囲の人間関係がひとつずつ崩壊していく物語へと変わっていく。
ケールの罠――親友に突きつけられる視界なき試練
さらに進んだボビーは、親友ケールの罠に直面する。ケールは視界を奪うマスクを装着され、足場の不安定な通路の向こう側に立たされている。床の多くは崩れており、残された足場を慎重に進まなければ落下の危険がある。さらに、彼の首には縄がかけられており、制限時間内に鍵を使って外さなければ命を落とす。
この試練でボビーは、ケールを声で誘導しながら、自分自身も鍵を手に入れなければならない。ケールは見えない状態で、ボビーの指示だけを頼りに進む。ボビーは必死に声をかけるが、足場の構造は複雑で、状況は刻一刻と悪化していく。
ケールもまた、ボビーの嘘を知りながら見て見ぬふりをし、商売的な成功を喜んでいた人物である。ボビーは鍵を手に入れるが、目隠しされたケールはキャッチに失敗。ケールは首吊り状態になり、命を落とす。
この場面まで来ると、ボビーの試練は明確に“嘘の共犯者たち”をめぐるものとして見えてくる。広報、弁護士、親友という、彼の虚像を社会に広め、守り、支えた人物たちが順に罰せられていく。
ボビーは最後の扉へ向かい、自らの歯を抜く試練に直面する
ケールを救えなかったボビーは、さらに建物の奥へと進む。やがて彼は、妻ジョイスへ通じる最後の扉の前にたどり着く。扉には暗証番号式の鍵がかかっており、暗証番号は、ボビー自身の奥歯に刻まれているという。
この試練は、それまでのゲームとは違い、他人を救うためにボビー自身が直接的な肉体的苦痛を引き受ける内容になっている。ボビーはペンチを手に取り、激痛に耐えながら歯を抜く。歯に刻まれた番号を入力し、扉を開けることに成功した。
ジョイスのもとへ到達したボビーは、自分の嘘を告白する
扉を抜けたボビーは、ついに妻ジョイスのいる空間へたどり着く。ジョイスは金属の台座に拘束され、首には鎖のような装置が取り付けられている。周囲には電気柵が設置されており、ボビーが不用意に近づこうとすると、電流によって阻まれる仕組みになっている。
ジョイスは、それまでモニター越しにボビーの試練を見せられてきたものの、夫がなぜこのようなゲームに巻き込まれているのかを理解していないようだ。彼女にとってボビーは、ジグソウのゲームを生き延び、その経験を語ることで人々に希望を与えてきた人物である。しかし、最終試練の映像メッセージは、ボビーに真実を語るよう促す。
ボビーは、自分が本当はジグソウのゲームを経験していなかった事実を認め、謝罪。ジョイスは当然ながら衝撃を受ける。夫が語ってきた“生還者”としての人生が嘘だっただけでなく、その嘘のために自分までもが命の危機にさらされているからである。
それでも、ボビーはジョイスへの愛だけは本物だったと訴える。ジョイスも、この絶望的な状況の中で彼を信じるしかない立場に置かれる。
最終試練は、ボビーが“かつて生還した”と偽ったゲームそのものだった
ボビーに課される最後の試練は、彼が著書や講演で“自分が経験した”と語ってきた架空のゲームそのものだった。彼はかつて、胸の筋肉にフックを貫通させ、そのフックで自分の体を吊り上げて生還したという物語を作り上げていた。ゲームは、その嘘を現実の試練としてボビーに突きつける。
ボビーは、2本のフックを自分の胸の筋肉に刺し、鎖を使って体を持ち上げなければならない。さらに、天井付近まで体を引き上げれば、ジョイスの装置を解除できる。
彼はこの試練が可能かのように語っていたが、それは実体験ではなく、虚構として作った武勇伝にすぎない。現実の肉体は、彼の作り話ほど都合よく機能しなかった。ジョイスは必死に彼を励まし、ボビーも激痛の中で身体を引き上げるが、あと一歩のところで胸の筋肉が重みに耐えきれず、フックが肉を裂き、ボビーは床へ落下する。
ジョイスは焼却炉のような罠で犠牲になる
ボビーが最終試練に失敗したことで、ジョイスの装置は作動する。彼女が拘束された金属の台座は下へと動き、周囲から金属の壁がせり上がっていく。やがて装置は彼女を閉じ込めるように形を変え、巨大な炉のような構造になると、外側から炎が噴き上がり、ジョイスを焼き殺す。ボビーは電気柵に阻まれて近づくことができず、何も知らなかった妻が苦しみながら死んでいく姿を見せつけられた。
この結末はジグソウのゲームとしても後味の悪さが強い。ボビーの嘘の代償を、最終的にはジョイスが命で支払わされる構図になっているからである。ボビーは生き残るが、妻を救えず、しかも自分の嘘が彼女の死を招いたという事実を抱えることになる。なお、本編ではこの後のボビーの明確な運命は詳しく描かれない。
ギブソンはボビーのゲームの場所へ迫るが、ホフマンの罠に誘導される
ボビーのゲームと並行して、マット・ギブソンら警察はマーク・ホフマンの行方を追っている。ジル・タックを保護したギブソンは、ホフマンがジグソウ事件の後継者であることを知り、彼の逮捕へ動く。ホフマンはギブソンに挑発的な映像メッセージを送り、ジルを引き渡すよう圧力をかける。
ギブソンはメッセージの中に隠された手がかりから、過去にホフマンと関わった事件を思い出す。かつてホフマンは、すでに降伏していた人物を射殺したことがあり、ギブソンはその行為を問題視していた。この過去の出来事、警察内での対立が、観客がさらにホフマンの暴力的で自分勝手な本質を理解する要素となる。
やがてギブソンは、ボビーのゲームが行われている廃墟を特定し、SWATチームを突入させる。しかしホフマンは、警察が現場へ来ることも見越していた。隊員たちはゲームを止めようとするが、別室に閉じ込められ、罠によって命を落とす。
この展開によって、ホフマンの狙いがボビーのゲームそのものだけではないことが明らかになる。彼はゲームを囮として使い、警察の注意を分散させていたのである。
監視室で明かされるホフマンの本当の侵入方法
ギブソンはその後、隠された監視室を発見。ホフマンが警察署の監視カメラ網にアクセスしていることがわかり、ホフマンの本当の狙いがジルへの接近であると悟る。
さらに彼は、ホフマンがジャンクヤードの罠で命を落とした人物の遺体と入れ替わり、検死のために運び込まれることで警察署に侵入したことも発覚する。ギブソンは警察署へ警告しようとするが、監視室に仕掛けられていた自動銃の罠が作動し、ギブソンや同行していた警官たちは命を落としてしまう。
この場面で、ホフマンの計画はほぼ成功段階に入る。ボビーのゲーム、SWATの誘導、ジャンクヤードの監視室、そして警察署への侵入が、すべてジルへ近づくための連動した作戦だったことが見えてくる。
ホフマンは警察署内でジルを追い詰める
遺体袋を使って警察署へ入り込んだホフマンは、行く手を阻む警官たちを次々と殺害していく。ギブソンが警告する前に命を落としたことで、署内の警官たちはホフマンの侵入に十分対応できない。
ジルは警察の保護下にあるはずだったが、ホフマンの計画はその安全圏を崩していく。逃げきれなかった彼女は、最終的にホフマンに追い詰められる。
ホフマンの行動は、ここではもはやジグソウの“試練”ではない。彼はジルに選択肢を与えるのではなく、ただ復讐のために彼女を処刑しようとする。ホフマンは、完全に私怨の殺人者へ変質している。
ジルは逆トラバサミの罠によって殺される
ホフマンはジルを椅子に拘束し、シリーズ第1作から登場してきた象徴的な装置である逆トラバサミを彼女の頭部に装着する。これはかつてアマンダ・ヤングに仕掛けられた罠であり、前作『ソウ6』ではジルがホフマンを試すために使用した装置でもある。
しかし、今回は試練ではない。ジルには自力で脱出するためのゲームや選択肢が与えられず、ホフマンは復讐として装置を作動させる。逆トラバサミは起動し、ジルは命を落とす。
この死は、ホフマンの復讐が完了した瞬間であると同時に、ジョン・クレイマーの遺した関係性が破滅へ向かった瞬間でもある。ジルはジョンの元妻であり、ジョンの死後も彼の遺志に関わってきた人物だった。その彼女が、ジョンの後継者を名乗るホフマンによって殺されることで、ホフマンの暴走は完全に決定的なものとなる。
ホフマンは証拠隠滅を図り、街を出ようとする
ジルを殺害したホフマンは、警察署を離れ、自分の隠れ家へ戻る。ニュースでは警察署で起きた惨劇が報じられ、街全体に緊張が広がっている。ホフマンは自らの作業場を爆破し、証拠を消し去ったうえで、街を出ようとする。
この時点では、ホフマンは目的を達成したように見える。ジルへの復讐を果たし、警察の追跡も大きくかわし、自分に結びつく証拠を処分しようとしているからである。だが、本作はここで最後の大きな反転を用意している。
ホフマンが外へ出ようとしたところで、豚のマスクをかぶった3人組が現れる。彼らはホフマンを急襲し、彼を取り押さえる。ホフマンはここで初めて、自分がまだ誰かの計画の中にいたことを思い知らされる。
ローレンス・ゴードン医師がジグソウの協力者だったことが明かされる
豚のマスクを外した人物のひとりは、本作の冒頭で生還が示されていたローレンス・ゴードン医師だ。終盤のフラッシュバックにより、ゴードンはその後ジョン・クレイマーに助けられ、ジグソウの協力者になっていたことが明らかになる。彼は医師としての知識を生かし、過去のゲームやトラップの準備に関与していたことが示される。シリーズ内で、外科的な処置や精密な身体加工を必要とする罠が存在していた理由の一端が、ここで回収される形になる。
さらに、ジョンは生前、ゴードンに対してある依頼を残していた。ジルに何かあった場合には行動を起こすよう、ゴードンへ託していたのである。ホフマンがジルを殺したことで、ゴードンはついにその役目を果たすために現れた。
ホフマンは第1作のバスルームに連れて行かれる
ゴードンらは、ホフマンをシリーズ第1作の舞台であるバスルームへ連れて行く。そこは、かつてゴードン自身が足を切断して脱出した場所であり、アダムが取り残された場所でもある。シリーズの始まりとなった空間に、ホフマンが最後に戻される構造になっている。
ゴードンはホフマンの足首を鎖でパイプにつなぐ。ホフマンは必死に抵抗するが、状況を覆すことはできない。そばには、かつてゴードンが自分の足を切断するために使ったノコギリがある。しかしゴードンは、そのノコギリをホフマンの手の届かない場所へ投げ捨てる。
これは、ホフマンに“ゴードンと同じ脱出の可能性”すら与えないことを意味している。ゴードンはかつて、自分の体を犠牲にすることでバスルームから出た。だがホフマンには、その選択肢さえ残されない。彼は自分が多くの人間を閉じ込めてきたゲームの論理の中に、今度は自分自身が閉じ込められる。
ラストは“ゲームオーバー”の一言で幕を閉じる
ゴードンはホフマンをバスルームに残し、シリーズを象徴する言葉である“ゲームオーバー”とともに扉を閉める。ホフマンは暗闇の中に取り残される。
このラストは、第1作『ソウ』の結末を反復する構造になっている。第1作では、ジグソウがアダムをバスルームに残し、“ゲームオーバー”と告げて扉を閉めた。本作では、その役割をゴードンが担い、ホフマンが閉じ込められる側に回る。シリーズの出発点だった密室へ物語を戻すことで、最終章としての円環構造が強調されている。
一方で、ホフマンがその後どうなったのかは、本作内では明確に描かれない。脱出の手段は極めて限られており、ゴードンがノコギリを遠ざけたことからも、彼を生かして逃がす意図はないと考えられるが、その後のことは曖昧なままだ。
