避難映画作家の才能を支援―ケイト・ブランシェットが新基金設立へ
『エリザベス』や『ブルージャスミン』などで知られるケイト・ブランシェットが、ロッテルダム国際映画祭のヒューバート・バルス基金と共同で、避難を強いられた映画作家を支援する新たな基金「ディスプレイスメント・フィルム・ファンド」を設立する。同基金は、紛争や災害により故郷を追われた映画作家5名に対し、それぞれ10万ユーロ(約1615万円/2025年1月時点)を提供し、短編映画制作を支援する画期的なプロジェクトだ。
国連難民機関UNHCRの親善大使も務めるブランシェットは、映画という表現手段を失った才能ある作家たちに新たな創作機会を提供することで、避難を強いられた人々の視点から世界に向けて物語を発信することを目指している。
豪華な選考委員会が映画作家を選出
選考委員会には、ブランシェットを委員長として、ブロードウェイミュージカル『ウィキッド』で主演を務めるシンシア・エリボ、アカデミー賞にノミネートされたドキュメンタリー『フリー』の監督ヨナス・ポーア・ラスムッセン、『フォー・サマ』で知られるワード・アル=カティーブ、そして『グリーン・ボーダー』の監督アグニェシュカ・ホランドらが名を連ねる。
さらに、ロッテルダム映画祭ディレクターのヴァンヤ・カルジェルチッチ、活動家で自身も難民であるアイシャ・クラム、そして『フリー』のインスピレーション源となったLGBTQ+庇護申請者のアミン・ナワビ[仮名]も加わり、多様な視点から選考が行われる。
表現者としての機会を取り戻すために
「映画は他のどのアート形式よりも、誰かの人生の質感と現実の中に観る者を入り込ませることができます」とブランシェットは語る。「人々が家を追われるとき、最も基本的な支援を失うだけでなく、アーティストとして、最も必要とされる時期に作品を作る手段も失ってしまうのです」
UNHCRの調査によると、現在、地球上の67人に1人が紛争、戦争、迫害により強制的に避難を強いられているという。このような状況下で、表現者としての声を失った映画作家たちに新たな創作の機会を提供することは、人道支援の観点からも文化的観点からも重要な意味を持つ。
カンヌとロッテルダムで映画作家と作品を披露
選考プロセスは2段階で実施される。まず推薦委員会が資金提供対象となる映画作家のロングリストを作成。その後、ブランシェットを筆頭とする選考委員会が最終的な5名を選定する。選ばれた映画作家は2025年のカンヌ映画祭で発表され、完成した短編作品は2026年のロッテルダム国際映画祭で世界初公開となる予定だ。
選考委員の1人であるアル=カティーブは「このプロジェクトは単なる資金援助ではありません。十分に表現されていない声を増幅させる機会であり、映画作家たちが強靭さ、アイデンティティ、希望についての物語を世界と共有できるよう力を与える重要なステップなのです」と、プロジェクトの意義を強調する。
ヒューバート・バルス基金との相乗効果を目指す
このプロジェクトは、もともとUNHCRの世界難民フォーラムから生まれた構想だが、パートナーとしてヒューバート・バルス基金が選ばれたことには深い意味がある。同基金は1988年の設立以来、映画産業が未発達または存在しない地域からの映画制作を支援し続け、これまでに数百のプロジェクトを支援してきた実績を持つ。
2月1日土曜日にロッテルダム国際映画祭で正式に立ち上げられる本基金は、映画業界の専門家、クリエイター、ビジネスリーダー、慈善家による幅広い支援を受けている。主催者たちは、このパイロットプログラムの成功を足がかりに、避難を強いられた映画作家たちの表現活動を継続的に支援する恒久的な仕組みとして確立することを目指している。
世界の映画界において見過ごされがちな才能に光を当て、新たな視点からの物語を発掘・発信するという意味で、本プロジェクトは映画の多様性を広げる重要な一歩となりそうだ。ブランシェットらが主導する本基金の活動は、芸術表現の機会を奪われた映画作家たちに、再び創作の場を提供する画期的な試みとして、世界中から注目を集めている。
