映画『ネイビーシールズ ラスト・ソルジャー』(2023)を紹介&解説。
映画『ネイビーシールズ ラスト・ソルジャー』概要
映画『ネイビーシールズ ラスト・ソルジャー』は、2021年の米軍撤退後のアフガニスタンを舞台に、孤立したネイビーシールズ隊員と少女の決死の逃避行を描く戦争アクション。救出任務中にヘリコプターを撃墜され、ただひとり生き残った熟練兵ミルコが、宣教師グループ唯一の生存者である少女を守りながら山岳地帯を進んでいく。『ブラックホーク・ダウン』のジョニー・ストロングが共同監督・脚本・主演・編集・音楽を兼任し、ウィリアム・カウフマンと共同監督を務めた。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ネイビーシールズ ラスト・ソルジャー』 |
|---|---|
| 原題 | Warhorse One |
| 製作年 | 2023年 |
| 本国公開日 | 2023年6月30日 |
| 日本公開日 | 2024年3月8日 |
| ジャンル | 戦争/アクション/ドラマ |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 126分 |
| 監督 | ウィリアム・カウフマン/ジョニー・ストロング |
|---|---|
| 脚本 | ジョニー・ストロング/ウィリアム・カウフマン |
| 製作 | ジョニー・ストロング/ニコール・カウフマン |
| 製作総指揮 | ポール・ライヒェルト |
| 撮影 | ジョーイ・ニコトラ |
| 編集・作曲 | ジョニー・ストロング |
| 出演 | ジョニー・ストロング/アテナ・ダーナー/ラージ・カラ/ジェームズ・シェリル/トッド・ジェンキンス |
| 製作 | オペレーター・フィルムズ |
| 配給 | ウェル・ゴーUSAエンターテインメント(アメリカ)/『ネイビーシールズ ラスト・ソルジャー』上映委員会(日本) |
あらすじ
2021年、米軍撤退後のアフガニスタン。現地に取り残された宣教師グループを避難させるため、米海軍特殊部隊ネイビーシールズに救出任務が命じられる。しかし、部隊を乗せたヘリコプターが敵勢力の攻撃によって撃墜され、隊員たちは次々と命を落としてしまう。
ただひとり生き残ったマスター・チーフのリチャード・ミルコは、宣教師たちの捜索を続行し、唯一の生存者である幼い少女ゾーイを発見する。援軍がすぐには到着しない中、ミルコは敵勢力に追われながら険しい山岳地帯を進み、限られた武器と装備だけでゾーイを安全な場所まで送り届けようとする。
主な登場人物(キャスト)
リチャード・ミルコ(ジョニー・ストロング):“ウォーホース・ワン”のコールサインを持つネイビーシールズのマスター・チーフ。ヘリコプターの撃墜によって部隊で唯一の生存者となるが、任務を諦めず、発見したゾーイを守りながら敵地からの脱出を図る。
ゾーイ・ウォルターズ(アテナ・ダーナー):アフガニスタンからの避難を試みていた米国人宣教師一家の少女。家族を敵勢力に殺害され、ただひとり生き残ったところをミルコに発見される。過酷な逃避行を通じて、次第にミルコへ信頼を寄せていく。
アフマド・ラダム(ラージ・カラ):ミルコとゾーイを執拗に追跡する敵勢力の指揮官。多数の戦闘員を率い、山岳地帯を進むふたりを追い詰めていく。
ジェームズ・“G”・ウィリカー(ジェームズ・シェリル):ミルコとともに宣教師グループの救出任務へ向かうネイビーシールズ隊員。部隊内では“キャッスル”のコールサインを使用している。
作品の魅力解説
邦題の『ネイビーシールズ ラスト・ソルジャー』からは、複数の精鋭隊員が連携して作戦を遂行する部隊アクションを想像しやすい。しかし、本作は早い段階で主人公を孤立無援の状態に置き、ひとりの兵士とひとりの少女によるサバイバルへと物語を絞り込んでいく。“ウォーホース・ワン”というミルコのコールサインをそのまま掲げた原題『Warhorse One』の方が、作品の本質を端的に表しているといえる。
ミルコの行動は、ときに無謀と呼べるほど危険である。命令や自身の安全よりも少女の救出を優先し、圧倒的に不利な状況でも敵へ立ち向かっていく。ただし、彼は情に突き動かされるだけの兵士ではない。狙撃場面や接近戦では、状況判断の速さと冷徹なまでの正確さが示され、無謀な行動を成立させるだけの技術と経験を備えていることが伝わってくる。
熟練兵が幼い子どもを守り、命を懸けて戦うという物語自体は、決して目新しいものではない。その一方で、戦争映画としては意外なほどのどかで自然豊かな山岳地帯と、そこで繰り広げられる銃撃戦の対比には一定の見応えがある。静かな森や渓谷がいつ敵の現れる戦場へ変わるか分からない構成が、逃げ場のない緊張感を生み出している。
カメラワークの変化も特徴のひとつだ。序盤の戦闘場面は、ミルコの行動を比較的淡々と追い、遠距離から敵を排除していく兵士としての冷静さを強調する。ところが終盤に向かってミルコとゾーイの距離が縮まり、戦闘にも接近戦が増えてくると、カメラは主人公の動きに呼応するように能動的かつダイナミックになっていく。ふたりの感情と戦闘の熱量が同時に高まっていく構成である。
共同監督・脚本・主演・編集・音楽を兼任したジョニー・ストロングは、リドリー・スコット監督の『ブラックホーク・ダウン』でデルタフォースの狙撃手ランディ・シュガートを演じた経験を持つ。本作でも武器の構え方や射撃時の身体の運びには一定の説得力があり、ストロングが長年抱いてきたミリタリーアクションへの関心が強く表れている。
一方で、低予算作品であることが伝わるヘリコプター墜落場面や、敵側の人物造形の薄さ、ミルコが多数の敵を排除していく展開の現実味には弱さも残る。主人公の戦闘能力を強調するあまり、一対多数の攻防が単調に見える場面もある。軍事作戦やアフガニスタン情勢を多角的に描く作品というより、ひとりの兵士による極限の救出劇として受け止めるべき映画だろう。
それでも、宗教や出自の異なる少女の命を守るため、熟練兵が自らの生還よりも任務を優先するという物語の中心は明快である。部隊作戦ものを期待すると肩透かしを受ける可能性はあるが、自然の中で繰り広げられる戦闘と、孤独な兵士と少女の間に生まれる絆を組み合わせた、一本気な戦場サバイバルとしての個性は備えている。
