『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』とはどんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・ネタバレ解説まとめ

『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』とはどんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・ネタバレ解説まとめ Database - Films
『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』より ©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon ©ピカチュウプロジェクト1998

映画『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(1998)を紹介&解説。


映画『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』概要

映画『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』は、人気テレビアニメ『ポケットモンスター』(ポケモン)の劇場版第1作として1998年に公開されたアニメーション映画。幻のポケモン・ミュウの化石から人工的に生み出されたミュウツーが、自らの存在意義に苦悩し、人間への逆襲を企てる物語が描かれる。サトシとピカチュウたちの冒険を軸にしながら、“本物”と“コピー”、命の価値、戦う意味を問いかける、ポケモン映画の原点ともいえる一作。監督は湯山邦彦、脚本は首藤剛志。声の出演は松本梨香大谷育江飯塚雅弓上田祐司市村正親山寺宏一小林幸子ら。

作品情報

日本版タイトル 『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』
英題 Pokémon: The First Movie – Mewtwo Strikes Back
製作年 1998年
日本公開日 1998年7月18日
ジャンル アニメーション/ファンタジー/アドベンチャー
製作国 日本
原作 ゲーム『ポケットモンスター』シリーズ
上映時間 75分
同時上映 『ピカチュウのなつやすみ』
次作 劇場版ポケットモンスター 幻のポケモン ルギア爆誕』(1999)
監督 湯山邦彦
脚本 首藤剛志
原案 田尻 智
スーパーバイザー 石原恒和
アニメーション監修 小田部羊一
製作 河井常吉/富山幹太郎/坂本 健/宮川鑛一/福田年秀/河村秀文
製作総指揮 久保雅一/川口孝司
プロデューサー 吉川兆二/五十嵐智之/盛 武源
アニメーションプロデューサー 奥野敏聡/神田修吉
キャラクター原案 杉森 建/森本茂樹/藤原基史/西田敦子
キャラクターデザイン 一石小百合
総作画監督 一石小百合
撮影監督 白井久男
編集 辺見俊夫
音響監督 三間雅文
音楽 宮崎慎二/たなかひろかず
主題歌 小林幸子「風といっしょに」
声の出演 松本梨香/大谷育江/飯塚雅弓/上田祐司/林原めぐみ/三木眞一郎/犬山犬子/市村正親/山寺宏一/小林幸子/佐藤藍子
アニメーション制作 OLM
製作 ピカチュウプロジェクト98
配給 東宝

あらすじ

ポケモンマスターを目指して旅を続けるサトシたちのもとに、ある日1通の招待状が届く。招待に応じたサトシ、カスミ、タケシは、大荒れの海を越えてポケモン城へ向かうが、そこで待っていたのは、幻のポケモン・ミュウの遺伝子から生み出された最強のポケモン、ミュウツーだった。

人間によって作られたミュウツーは、自分が何者なのか、なぜ生まれたのかという問いに苦しみ、やがて人間と人間に従うポケモンたちへの逆襲を決意する。ミュウツーはサトシたちのポケモンを奪い、強力なコピーポケモンを作り出していく。そこへ幻のポケモン・ミュウも現れ、ミュウツーとミュウ、オリジナルのポケモンとコピーのポケモンたちによる壮絶な戦いが始まる。

主な登場人物(キャスト)

サトシ(声:松本梨香):ポケモンマスターを目指して旅を続ける少年。ミュウツーからの招待状を受け取り、ピカチュウや仲間たちとともにポケモン城へ向かう。強大な力を前にしても、ポケモンを仲間として信じ抜く姿勢が物語の中心になる。

ピカチュウ(声:大谷育江):サトシの相棒であるポケモン。ミュウツーの計画に巻き込まれ、コピーポケモンとの戦いに直面する。

カスミ(声:飯塚雅弓):サトシとともに旅をする少女。タケシとともにポケモン城へ向かい、ミュウツーの計画を目の当たりにする。

タケシ(声:上田祐司):サトシ、カスミと旅をするポケモントレーナー。冷静な判断力を持ち、ポケモン城で起こる異常な出来事にも仲間たちと向き合う。サトシたちの旅を支える兄貴分のような存在。

ミュウツー(声:市村正親):幻のポケモン・ミュウの遺伝子から人工的に作られた最強のポケモン。自らの存在理由に苦しみ、人間に利用された怒りから逆襲を計画する。本作の核心を担う存在であり、“生まれ”ではなく“どう生きるか”というテーマを体現する。

ミュウ(声:山寺宏一):幻のポケモン。ミュウツーの前に現れ、やがてミュウツーとの戦いへと突入する。無邪気さと圧倒的な力を併せ持ち、ミュウツーにとっては自らの起源と向き合う存在でもある。

ムサシ(声:林原めぐみ)/コジロウ(声:三木眞一郎)/ニャース(声:犬山犬子):ロケット団の3人組。サトシたちを追ってポケモン城へ入り込み、ミュウツーの計画に巻き込まれる。コミカルな立ち位置を担いながら、物語の異様な状況を別角度から見せる役割も果たす。

ボイジャー(声:小林幸子):サトシたちがポケモン城へ向かう際に関わる港の女性。主題歌「風といっしょに」も歌う小林幸子が声を担当し、映画全体の余韻にも深く関わっている。

作品の魅力解説

ポケモン映画の原点にして、シリーズ屈指の重厚なテーマ性。本作の大きな特徴は、子ども向け冒険アニメの枠組みの中で、命の誕生、存在理由、コピーとオリジナルの関係といった哲学的なテーマを扱っている点にある。ミュウツーは単なる悪役ではなく、人間の都合で生み出され、利用され、自分の価値を見失った存在として描かれる。その悲しみがあるからこそ、物語は単純な善悪の対立に収まらない。

サトシとピカチュウの絆が、言葉以上の感情を伝える。本作では、ポケモン同士の戦いがクライマックスに据えられるが、そこにあるのは勝敗の興奮だけではない。オリジナルとコピーが傷つけ合う姿を通して、戦うことの痛みや、命を比べることのむなしさが強く浮かび上がる。特にピカチュウの行動は、ポケモンが“バトルの道具”ではなく心を持つ存在であることを印象づける。

市村正親が演じるミュウツーの存在感。ミュウツーの声を担当した市村正親は、怒り、孤独、威厳、迷いを重ねた演技で、キャラクターに強烈な説得力を与えている。ミュウツーは圧倒的な力を持ちながらも、内面には深い孤独を抱えており、その複雑さが本作をシリーズの中でも記憶に残る一本にしている。

1998年当時の熱狂と、今見ても響く普遍性。『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』は、ポケモンブームの最中に公開された劇場版第1作でありながら、単なる人気コンテンツの映画化にとどまらない完成度を持っている。子どもの頃に観た人には懐かしさを、大人になって観返す人には“生まれた意味”をめぐる物語としての深みを感じさせる。ポケモン映画の出発点としてだけでなく、アニメ映画としても語り継がれる理由がある作品だ。

ストーリー解説(ネタバレ)

ミュウの化石から生まれた、最強のポケモン・ミュウツー

物語は、幻のポケモン・ミュウの存在を追う人間たちの研究から始まる。世界中の研究者がその行方を求める中、ミュウに由来する貴重な化石が発見される。人間たちはそこから遺伝子を取り出し、人工的に新たなポケモンを生み出そうとする。そうして誕生したのが、ミュウのコピーでありながら、ミュウを超える存在として作られたポケモン、ミュウツーだった。

しかし、ミュウツーは生まれた瞬間から祝福された存在ではない。研究施設の中で目を覚ましたミュウツーは、自分が何者なのか、なぜこの世に生まれたのかを理解できないまま、人間たちに観察される。彼の意識に最初に刻まれるのは、命として迎え入れられる温かさではなく、“実験の成果”として扱われる冷たい視線だった。

人間たちはミュウツーを「最強のポケモン」として評価するが、それは彼自身の意思や感情を認める言葉ではない。ミュウツーは、自分の存在が人間の欲望によって作られたものだと知り、強烈な怒りと孤独を抱え込んでいく。自分は何のために生まれたのか。自分はミュウのコピーにすぎないのか。その問いに答えてくれる者は、研究所の中にはいなかった。

利用される存在であることを拒むミュウツー

研究所で圧倒的な力を見せたミュウツーは、人間にとって制御しきれない存在になっていく。彼は自分を生み出した研究施設を破壊し、人間の支配から逃れようとする。だが、その後に現れるロケット団のボス・サカキもまた、ミュウツーをひとつの“力”として利用しようとする存在だった。

サカキはミュウツーに鎧のような拘束具を与え、彼の力を制御しようとする。ミュウツーはロケット団の施設で、ほかのポケモンたちを圧倒する戦闘力を見せる。だが、そこで繰り返されるバトルは、ミュウツーにとって自分の存在理由を見つける場ではない。人間の命令に従い、力を証明するだけの時間だった。

やがてミュウツーは、サカキのもとにも自分の答えはないと悟る。人間は自分を作り、試し、支配し、利用しようとする。そこにあるのは対等な関係ではなく、強大な力を持つ道具としての扱いだった。ミュウツーは再び人間の支配を拒み、サカキのもとを離れる

ここでミュウツーの怒りは、単なる研究者やロケット団への反発を超えていく。彼の中で、人間そのものへの不信と憎しみが膨らんでいく。自分を作った人間、自分を利用しようとした人間、そして人間に従って生きるポケモンたち。ミュウツーはそれらすべてを見つめ直し、“自分こそが真に強い存在である”ことを証明しようとする。

サトシたちに届く、謎の招待状

一方、ポケモンマスターを目指して旅を続けるサトシは、カスミタケシピカチュウたちとともに、いつものように旅の途中にいた。そんな彼らの前に、カイリューが現れる。カイリューが届けたのは、サトシ宛ての招待状だった。

招待状には、優秀なポケモントレーナーを“ポケモン城”へ招くという内容が記されている。差出人は、最強のポケモントレーナー。サトシはその挑戦的な招待に強く反応し、ポケモン城へ向かうことを決める。カスミとタケシも同行し、一行は招待状に示された場所を目指す

だが、この招待状は純粋なバトル大会への招待ではない。サトシたちはまだ知らないが、それはミュウツーが仕組んだ計画の一部だった。ミュウツーは、優れたトレーナーと強いポケモンたちをポケモン城へ集めようとしていた。目的は、彼らを迎えて戦うことだけではない。人間に従うポケモンを奪い、その力をもとに新たなポケモンを作り出すためでもあった。

嵐の海を越えて、ポケモン城へ

サトシたちが港へ到着すると、そこには同じように招待状を受け取ったトレーナーたちが集まっていた。だが、海は激しい嵐に包まれている。港の人々は、船を出すことはできないとトレーナーたちを制止する。

しかし、招待されたトレーナーたちはそれぞれの方法で海を渡ろうとする。飛行タイプのポケモンを使う者、水上を進むポケモンを使う者。危険を承知で、ポケモン城を目指すトレーナーたちの姿からは、彼らの実力と自信が伝わってくる。

サトシたちもまた、嵐の海を越えることを決意する。ピカチュウ、ゼニガメ、ヒトデマンたちの力を借りながら、荒れ狂う波の中を進んでいく。ここで描かれるのは、トレーナーとポケモンが力を合わせて困難を乗り越える、シリーズらしい冒険の場面だ。

その一方で、ロケット団のムサシ、コジロウ、ニャースもサトシたちを追って行動している。彼らはいつものようにピカチュウを狙いながら、結果的にミュウツーの計画の中心地へ近づいていく。サトシたちは嵐を越え、ついにポケモン城へたどり着く。

ポケモン城で待っていた“最強のトレーナー”

ポケモン城に到着したサトシたちは、ほかの招待トレーナーたちとともに城の中へ案内される。そこには、厳しい嵐を越えてやってきた実力者だけが集まっていた。彼らは、自分たちを招いた“最強のポケモントレーナー”を待つ。

やがて姿を現すのは、人間のトレーナーではなく、ミュウツーだった。ミュウツーは人間の言葉を使い、自分こそが最強のポケモンであり、最強のトレーナーでもあると宣言する。ここで、サトシたちは初めて、自分たちが異常な存在のもとへ招かれたことを知る。

ミュウツーは、人間がポケモンを支配しているという関係そのものを否定する。彼にとって人間は、ポケモンを従わせ、戦わせ、利用する存在に見えている。自身も人間に作られ、利用されてきたミュウツーだからこそ、その言葉には激しい怒りと拒絶が込められている。

サトシは、ミュウツーの考えを簡単には受け入れない。サトシにとってピカチュウは道具ではなく、大切な相棒である。カスミやタケシ、ほかのトレーナーたちにとっても、ポケモンは単なる所有物ではない。だが、ミュウツーはその絆さえも、人間の都合のよい解釈として突き放そうとする。

ミュウツーが見せつける圧倒的な力

ミュウツーは、集まったトレーナーたちを前に、自らの力を見せつける。彼のサイコパワーは圧倒的で、人間のトレーナーたちはもちろん、ポケモンたちも容易には対抗できない。城の中の空気は一気に変わり、招待されたトレーナーたちは、自分たちが挑戦者ではなく、ミュウツーの計画に組み込まれた存在だったことに気づいていく。

ミュウツーは、ポケモンを人間の手から解放するかのようにふるまいながら、その実、自分の目的のためにポケモンたちを支配しようとしている。ここに本作の皮肉がある。人間に利用されたことを憎むミュウツー自身が、今度は別の形でポケモンを利用しようとしているのだ。

サトシはミュウツーに立ち向かおうとするが、人間である彼の力では到底太刀打ちできない。ミュウツーの存在は、通常のポケモンバトルの延長にはない。彼はトレーナーの指示で戦うポケモンではなく、意思を持ち、自ら世界を変えようとする存在として立ちはだかる。

奪われていくポケモンたち

ミュウツーの真の目的は、集まったトレーナーたちのポケモンを手に入れ、それらをもとにさらに強いポケモンを作り出すことだった。ミュウツーは通常のモンスターボールとは異なる特殊なボール、いわゆるミュウツーボールを使い、トレーナーたちのポケモンを次々と奪っていく

トレーナーたちは自分のポケモンを守ろうとするが、ミュウツーの力とミュウツーボールの性能を前に、ほとんど抵抗できない。ポケモンとトレーナーの絆は、ミュウツーの計画によって一方的に引き裂かれていく。

サトシの相棒であるピカチュウも、ミュウツーボールに狙われる。ピカチュウは必死に逃げ回り、サトシも全力で守ろうとするが、なすすべなく捕獲されてしまう。

コピー装置と、作り出されるコピーポケモン

ミュウツーボールによって捕獲されたポケモンたちは、城の中にある装置へ送られていく。そこでは、ポケモンたちのデータをもとにコピーが作られていく。ミュウツーは、自分と同じように、既存の存在をもとに新たな命を生み出そうとしていた。

リザードン、フシギバナ、カメックスなど、強力なポケモンたちのコピーが作られていく。見た目はオリジナルに似ているが、体には独特の模様があり、どこか異質な存在として描かれる。彼らはミュウツーの側に立つポケモンであり、オリジナルのポケモンたちと対になる存在として現れる。

この展開によって、物語のテーマはさらに明確になる。ミュウツー自身がミュウのコピーとして生まれた存在であり、今度は彼がほかのポケモンのコピーを生み出している。ミュウツーは、自分を苦しめてきた“作られた命”という問題を、自ら繰り返してしまっているのだ。

ロケット団が見つける、ミュウツー計画の裏側

そのころ、ムサシ、コジロウ、ニャースもポケモン城の内部へ入り込んでいた。彼らはいつものようにサトシたちを追ってきたはずだったが、城の中で奇妙な装置やコピー生成の現場に遭遇する。ロケット団の3人は、思いがけずミュウツーの計画の裏側を目撃する立場になる

彼らの場面はコミカルに描かれつつも、物語上は重要な役割を持っている。サトシたちがミュウツーと正面から対峙している一方で、ロケット団は城の奥で何が行われているのかを観客に見せる案内役になる。コピー装置の存在や、奪われたポケモンたちがどのように扱われているのかは、彼らの目の前でより具体的に示される。

ニャースは、ほかのポケモンたちとは少し違う位置にいる。人間の言葉を話し、自分の意思でロケット団の一員として行動しているニャースは、ポケモンでありながら人間社会の側にも深く入り込んでいる存在だ。そのため、後にコピーのニャースと向き合う展開に向けて、彼の存在は本作のテーマと静かにつながっていく。

ミュウの登場で、ミュウツーの怒りは“起源”との対決へ向かう

ポケモン城でミュウツーが自らの力を誇示し、集めたトレーナーたちのポケモンからコピーを作り出していく中、物語は大きな転換点を迎える。そこに現れるのが、幻のポケモン・ミュウである。

ミュウは、ミュウツーのもとになった存在だ。人間たちが発見したミュウの遺伝子から、人工的に生み出されたのがミュウツーであり、ミュウはその“オリジナル”にあたる。つまりミュウの登場は、ミュウツーにとって単なる強敵の出現ではない。自分が何から生まれ、何と比べられてきたのかを突きつけられる瞬間でもある。

ミュウは、ミュウツーのように人間への憎しみを語る存在ではない。軽やかに飛び回り、無邪気にも見える姿で現れる。しかし、その存在そのものがミュウツーを強く刺激する。ミュウツーは、自分がミュウのコピーとして作られたことを受け入れられない。だからこそ、ミュウを前にして、自分こそが優れた存在であることを証明しようとする。

ここから物語は、ミュウツーとミュウ、コピーとオリジナルの対決へ進んでいく

コピーポケモンたちが、オリジナルを圧倒する

ミュウツーが作り出したポケモンのコピーが次々と姿を現し、オリジナルのポケモンたちに立ちはだかる。やがて、オリジナルとコピーの戦いが始まる。フシギバナ同士、カメックス同士、リザードン同士が激突し、コピーたちはオリジナルのポケモンを圧倒していく。ミュウツーはその結果を通して、コピーこそがオリジナルより優れていると示そうとする。

サトシのリザードンも、コピーのリザードンと対峙する。サトシのリザードンはもともと気性が荒く、戦いに対して強い自信を持つポケモンだが、コピーのリザードンはその力を上回るように描かれる。サトシたちは、自分たちのポケモンと同じ姿をした存在が、より強い力で襲いかかってくる異様な光景を目の当たりにする。

ミュウツーとミュウ、ふたつの“最強”がぶつかる

ポケモンたちの戦いと並行して、ミュウツーとミュウも激しく衝突する。ミュウツーは、ミュウに対して強い敵意を向ける。自分の原型であるミュウを倒すことができれば、自分はただのコピーではないと証明できる。そう考えるミュウツーは、強大なサイコパワーでミュウに襲いかかる。

一方のミュウは、ミュウツーの攻撃を軽やかにかわしながら応戦する。ミュウの姿は小さく愛らしいが、その力は非常に強い。ミュウツーの圧倒的なパワーに対しても、決して一方的に押されることはない。

ミュウツーとミュウの戦いは、空間全体を巻き込むほど激しいものになっていく。城の中には緊張が走り、サトシたちもその戦いを止めることができない。ミュウツーは自分の力をすべてぶつけるように戦い、ミュウもまたそれに応じる。

技を使わず、傷つけ合うポケモンたち

やがて、オリジナルのポケモンとコピーポケモンの戦いは、さらに痛ましいものになっていく。この戦いは、通常のポケモンバトルとは決定的に違う。ポケモンバトルでは、トレーナーとポケモンの信頼関係や成長が描かれることが多い。しかしここで起こっているのは、存在の優劣を証明するための消耗戦である。オリジナルとコピーは、自分たちがなぜ戦わなければならないのかも十分に分からないまま、ただぶつかり合っていく

中でも象徴的なのが、ピカチュウとコピーのピカチュウの場面だ。コピーのピカチュウは、ピカチュウに攻撃を仕掛けようとする。だが、サトシのピカチュウは反撃しない。何度攻撃されても、同じ姿をした相手を傷つけようとはしない。

ニャースとコピーのニャースが見せる、もうひとつの答え

人間の言葉を話すロケット団のニャースも、自分のコピーと出会う。ここでは彼もまた、コピーという存在と向き合うことになる。

しかし、ニャースとコピーのニャースは、ほかのポケモンたちのように激しく戦おうとはしない。対話を通して、彼らは戦うこと以外の関係を選ぶ

サトシは、戦いを止めるために走り出す

ミュウツーとミュウの戦い、そしてオリジナルとコピーのポケモンたちの戦いは、ますます激しさを増していく。サトシは、この戦いを見ていられなくなる。ピカチュウが攻撃を受けても反撃しない姿、ポケモンたちが同じ姿の相手と傷つけ合う姿を前に、サトシは戦いを止めようとする

しかし、ミュウツーとミュウの力はあまりにも強大で、人間が簡単に割って入れるものではない。それでもサトシは、理屈ではなく行動で止めようとする。彼はミュウツーとミュウが強力なエネルギーをぶつけ合う、その間へ向かって走り出す

サトシが石化し、ピカチュウが必死に呼びかける

ミュウツーとミュウが放った強力な力がぶつかり合う。その瞬間、戦いを止めようと飛び込んだサトシは、エネルギーの直撃を受けてしまう。サトシの体は動かなくなり、石のように固まってしまう

突然の出来事に、場の空気は一変する。それまで争っていたポケモンたちも、サトシの姿を見て動きを止める。サトシは、人間でありながら、ポケモンたちの戦いを止めるために身を投げ出した。その姿は、ミュウツーの中にあった「人間はポケモンを利用するだけの存在」という考えを揺さぶる

動かなくなったサトシに駆け寄ったピカチュウは必死に呼びかけ、電撃で彼を目覚めさせようとする。しかし、どれだけ電撃を浴びせても、サトシは反応しない。ピカチュウは何度も何度もサトシに電撃を送り続けるが、サトシは戻ってこない。

ポケモンたちの涙が、サトシを救う

サトシの石化を前に、ポケモンたちは涙を流す。サトシのピカチュウだけではない。オリジナルのポケモンも、コピーポケモンも、同じように悲しみを見せる。さっきまで戦っていた存在同士が、サトシの犠牲を前にして、同じ感情を共有する。

その涙が集まり、サトシの体に届く。すると、石のように固まっていたサトシは元の姿へ戻り、意識を取り戻す。ピカチュウはサトシに駆け寄り、サトシもまたピカチュウを抱きしめる。ふたりの再会に、ポケモンたちの戦いは完全に止まる。

この奇跡は、単にサトシが助かる場面としてだけでなく、本作の結論へつながる重要な出来事である。オリジナルであれコピーであれ、ポケモンたちは同じように悲しみ、同じように涙を流す。そこに優劣はない。どのように生まれたかではなく、いま命として存在し、感情を持っていることそのものに価値がある

ミュウツーは、自分たちの生きる場所を探す

サトシが息を吹き返し、ポケモンたちの戦いが終わったあと、ミュウツーは自らの考えを改めていく。彼は、自分たちコピーがオリジナルを倒すことで価値を証明する必要はないと気づく。どのように生まれた命であっても、生きていることそのものに意味がある。

ミュウツーは、コピーポケモンたちとともに去ることを選ぶ。彼らは人間の世界にそのまま残るのではなく、自分たちが自分たちらしく生きられる場所を探しに行く。ミュウもまた、ミュウツーたちの前から離れていく。

ここでミュウツーは、サトシたちの記憶を消す。ポケモン城で起きた出来事、ミュウツーとの戦い、コピーたちとの衝突の記憶は、サトシたちの中から失われる。これは、ミュウツーが自分たちの存在を人間の世界から遠ざけるための選択でもある。

嵐が晴れ、サトシたちは港へ戻る

ミュウツーが去ったあと、サトシたちは港へ戻っている。彼らはポケモン城での出来事を覚えていない。嵐のために足止めされていたような感覚のまま、サトシ、カスミ、タケシ、ピカチュウたちは再び旅へ向かおうとする

空は晴れ、先ほどまでの激しい嵐は過ぎ去っている。港にいた人々も、トレーナーたちも、ポケモン城で起きた出来事を明確には覚えていない。

だが、すべてが完全になかったことになったわけではない。サトシは空の向こうに、幻のポケモンらしき姿を見たように感じる。かつて旅立ちの日に見た伝説的なポケモンの姿を思い出すように、サトシはまだ見ぬポケモンとの出会いに心を向ける。

このラストは、物語を静かに冒険の原点へ戻していく。サトシの旅は続く。ピカチュウとの絆も変わらない。そしてどこかで、ミュウツーとコピーポケモンたちもまた、自分たちの生きる場所を探している。

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