『聖☆おにいさん THE MOVIE』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

映画『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』(2024)を紹介&解説。


映画『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』概要

映画『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』は、中村光による人気ギャグ漫画を、福田雄一監督(『銀魂』シリーズ)が実写映画化したコメディ。東京・立川でバカンスを過ごすイエスとブッダが、人間の走馬灯をヒーロー映画へ作り変える一大プロジェクトに巻き込まれていく。

原作は、劇場映画化のために中村光が描いた初の長編シリーズ「スクリーンへの長い途(みち)」。2018年から2020年にかけて展開された実写ドラマ版に続き、松山ケンイチがイエス、染谷将太がブッダを演じる。共演には賀来賢人岩田剛典白石麻衣勝地涼仲野太賀神木隆之介窪田正孝藤原竜也ら豪華キャストが集結した。

作品情報

日本版タイトル 『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』
製作年 2024年
日本公開日 2024年12月20日
ジャンル コメディ
製作国 日本
原作 中村光『聖☆おにいさん』(漫画)/長編シリーズ「スクリーンへの長い途(みち)」
上映時間 93分
前作 聖☆おにいさん 第Ⅲ紀』(2020)
監督・脚本 福田雄一
プロデューサー 北島直明/松橋真三/鈴木大造/山田孝之
製作統括 佐藤貴博
エグゼクティブプロデューサー 飯沼伸之
撮影監督 工藤哲也
撮影 倉田慎也
美術 高橋努
アクション監督 田渕景也
編集 臼杵恵理
音楽 瀬川英史
主題歌 Mrs. GREEN APPLE「ビターバカンス」
宗教監修 清水俊毅/松谷信司
出演 松山ケンイチ/染谷将太/賀来賢人/岩田剛典/白石麻衣/勝地涼/仲野太賀/神木隆之介/山本美月/桜井日奈子/川口春奈/中田青渚/吉柳咲良/田中美久/森日菜美/安斉星来/山田孝之/ムロツヨシ/佐藤二朗/窪田正孝/藤原竜也
制作プロダクション クレデウス
製作 映画『聖☆おにいさん』製作委員会
配給 東宝

あらすじ

世紀末を無事に乗り越えた神の子イエスと、悟りを開いたブッダは、東京・立川にある風呂なし6畳一間のアパートで共同生活を送りながら、下界でのバカンスを満喫していた。福引きに参加したり、お笑いコンビ「パンチとロン毛」を結成したりと、相変わらず平和な毎日を過ごしている。

そんなふたりのもとへ、梵天、ミカエル、帝釈天ら天界の住人が現れる。彼らが持ち込んだのは、人間が死の間際に見る走馬灯を、壮大なヒーロー映画へ作り変えるという計画だった。主役に選ばれたイエスとブッダは、マーラを敵役に据え、神、仏、天使、悪魔が入り乱れる前代未聞の撮影へ参加することになる。

主な登場人物(キャスト)

イエス(松山ケンイチ):神の子。ブッダとともに立川のアパートで下界のバカンスを楽しんでいる。流行や娯楽に敏感で、衝動買いも多い。天界が企画したヒーロー映画の主役に選ばれる。

ブッダ(染谷将太):仏の悟りを開いた人物。穏やかで倹約家という、イエスのよき同居人。天界から持ち込まれた計画に戸惑いながらも、イエスとともに撮影へ参加する。

梵天(賀来賢人):宇宙の原理が人の姿になった存在。人間の走馬灯をヒーロー映画に作り変える計画を持ち込み、イエスとブッダを巻き込んでいく。

ミカエル(岩田剛典):天使の軍団を率いる天使長。梵天や帝釈天らとともにイエスとブッダのもとを訪れ、映画作りに参加する。

弁才天(白石麻衣):音楽や芸術を司る女神。撮影現場では熱のこもった指導を繰り広げ、計画を進めていく。

帝釈天(勝地涼):雷を司る軍神。チーム天界の一員として、ヒーロー映画の制作に関わる。

十一面観音(仲野太賀):11の顔を持つ観音菩薩でYouTuber。ヨハネとともに、走馬灯映画の物語作りへ参加する。

ヨハネ(神木隆之介):イエスの弟子で、「黙示録」を記した人物。強すぎる想像力を持ち、ヒーロー映画の脚本を思わぬ方向へ膨らませていく。

マーラ(窪田正孝):人間の煩悩を象徴する悪魔。ヒーロー映画の敵役に起用されるなど、どこか気の抜けた悪役として振り回されていく。

マーラの娘たち(山本美月/桜井日奈子/中田青渚):マーラを応援するギャル風の三姉妹。悪魔側でありながら、父親とのやり取りには妙に親しみやすい家族感が漂う。

戦いの仙人(佐藤二朗):映画オリジナルキャラクター。イエスとブッダに戦い方を教えようとするが、その指導は次第に本筋から外れた長い掛け合いへ発展していく。

ルシファー(藤原竜也):天界から追放された堕天使。物語の終盤に登場し、イエスとブッダの前に強烈な印象を残す。

新生・女子ーズ(川口春奈/吉柳咲良/田中美久/森日菜美/安斉星来):福田雄一監督の映画『女子ーズ』をセルフオマージュした戦隊チーム。戦力を集める物語の流れに沿って、イエスとブッダのもとへ駆けつける。

作品の魅力解説

走馬灯をヒーロー映画へ改造する原作発のコンセプト

本作の核となるのは、人間が死の間際に見る走馬灯が地味すぎるため、神や仏の手で娯楽性の高い映像へ作り変えようとする奇抜な発想だ。壮大な宗教的概念を、映画制作やヒーロー番組という身近な娯楽に置き換える構造には、中村光による原作らしい知的なくだらなさがある。

イエスとブッダがヒーロー役、煩悩の化身であるマーラが悪役を担当する配置も、宗教的な関係性を現代のポップカルチャーへ落とし込んだもの。神仏と人間文化のズレを楽しむという『聖☆おにいさん』本来の面白さが、映画規模の物語へ拡張されている。

豪華俳優を惜しげもなく笑いへ投入

松山ケンイチと染谷将太は、周囲でどれほど奇妙な出来事が起きても、イエスとブッダの穏やかな空気を崩さない。多数の癖が強いキャラクターに囲まれながら、2人の友情と生活感が作品の軸になっている。

また、賀来賢人、岩田剛典、白石麻衣、勝地涼、仲野太賀、神木隆之介、藤原竜也らが、神仏や天使を大真面目に演じる光景も見どころ。とりわけ窪田正孝を、娘たちに応援されながら悪役を務める気弱なマーラ役へ起用した“贅沢な無駄遣い”は、豪華キャスト映画ならではの笑いにつながっている。

福田雄一流のセルフオマージュが原作の味を圧迫

一方で、映画全体は「福田雄一作品」としての色があまりにも強い。新生・女子ーズの登場くらいまでは、ヒーローを集める物語の流れには沿っており、単独のアイデアとして成立している。しかし、ほかのセルフオマージュ、身内ネタ、メタ発言、長いアドリブまで重なることで、ひとつひとつの笑いが次第にくどく感じられてしまう。

原作の魅力は、イエスやブッダにまつわる宗教的逸話を、現代日本の慎ましい日常へ結びつける繊細なユーモアにある。本作では終盤になるほど宗教や原作に直接関係しないギャグの比重が増し、その固有の味が福田監督の作家性に覆われていく。ツッコミを説明くさく重ねる演出や、佐藤二朗による長い掛け合いも、笑える瞬間はありながら物語のテンポを損ねている。

元ネタを説明しすぎるパロディー

ゲームを連想させる演出は、作品名を明言しなくても気づいた観客が笑える程度に留めた方が、パロディーとしての余韻が生まれたはずだ。ところが本作では「ドラクエ」と直接言及するなど、笑いの元ネタをセリフで説明しすぎる傾向が見られる。

藤原竜也と松山ケンイチの共演を利用した『DEATH NOTE』ネタも同様だ。2人の過去の共演をにおわせるだけで十分成立するところへ、2006年の実写映画で実際に撮影へ使われたデスノートの小道具まで登場させる。意外性は強いものの、作品世界より俳優本人の経歴を前面に出した内輪的な笑いとなり、『聖☆おにいさん』の物語から観客を引き離してしまうところがある。

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