『聖☆おにいさん 第Ⅲ紀』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

映画『聖☆おにいさん 第Ⅲ紀』(2020)を紹介&解説。


映画『聖☆おにいさん 第Ⅲ紀』概要

映画『聖☆おにいさん 第Ⅲ紀』は、中村光による同名ギャグ漫画を福田雄一監督・脚本、山田孝之製作総指揮で実写化したコメディシリーズ第3弾。東京・立川で共同生活を送るイエスとブッダの日常を、宗教にまつわる知識と庶民的な生活を組み合わせた笑いで描く。主演は松山ケンイチと染谷将太。全10話のショートストーリーをまとめた作品で、2020年1月にNHK総合で2週連続放送、Netflixで配信された後、劇場版として1週間限定公開された。

作品情報

日本版タイトル 『聖☆おにいさん 第Ⅲ紀』
原題 聖☆おにいさん 第Ⅲ紀
製作年 2020年
テレビ放送日 2020年1月11日・18日
配信開始日 2020年1月20日
劇場公開日 2020年1月24日
ジャンル コメディ
製作国 日本
原作 中村光『聖☆おにいさん』(漫画)
エピソード数 全10話
上映時間 55分
前作 『聖☆おにいさん 第Ⅱ紀』(2019)
次作 『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』(2024)
監督・脚本 福田雄一
製作総指揮 山田孝之
撮影 工藤哲也
音楽 瀬川英史
出演 松山ケンイチ/染谷将太/山野海/木島杏奈/稲垣来泉
ナレーション 野田圭一
制作プロダクション ホリプロ
製作 パンチとロン毛製作委員会
配給 S・D・P

あらすじ

東京・立川のアパートで、下界のバカンスを満喫しているイエスとブッダ。漫才コンテストへの出場を思い立ったイエスは、渋るブッダを巻き込んで「パンチとロン毛」を結成する。その後もファミレスで長居したり、カラオケを楽しんだりしながら、何気ない日常の中で神仏ならではの奇跡を巻き起こしていく。

主な登場人物(キャスト)

イエス(松山ケンイチ):キリスト教における神の子。新しいものや娯楽が好きな浪費家で、商店街の漫才コンテストにも積極的。感情が高ぶると、意図せず奇跡を起こしてしまう。

ブッダ(染谷将太):仏教を開いた“目覚めた人”。家計を預かる倹約家で、自由奔放なイエスをたしなめる役回りが多い。苦行への耐性が高く、イエスに押し切られて漫才コンビを組む。

松田さん(山野海):イエスとブッダが暮らすアパートの大家。正体を知らないまま、風変わりなふたりの生活を見守っている。

ウェイトレス(木島杏奈):イエスとブッダが長時間滞在するファミリーレストランの店員。何気なく口にした言葉で、ふたりを慌てさせる。

愛子(稲垣来泉):イエスとブッダが下界で出会う少女。純粋な言動を通して、聖人ふたりの穏やかな一面を引き出す。

作品の魅力解説

宗教的逸話を庶民生活へ落とし込む神仏ギャグ

シリーズの持ち味である、キリスト教や仏教の逸話を現代日本の日常へ落とし込む神仏ギャグは本作でも安定している。アブラハムからイエスへハムが届く一方、ブッダには天部一同から「選べる苦行カタログ」が贈られてくるお中元のエピソードは、その代表例だ。

ファミレスの店員が口にした「お客様は神様ですから」という決まり文句を、イエスとブッダが正体を見破られたものと受け取って逃げ出す場面も秀逸。日常的に使われる言葉を、文字どおり“神様本人”の側から捉え直すことで笑いを生んでいる。

カラオケでは、ブッダが般若心経を唱える横でイエスがタンバリンを鳴らし、イエスが森進一の「おふくろさん」を歌えば、母マリアへの思いに反応するかのように楽曲が「アヴェ・マリア」へ変化する。宗教知識を必要としながらも、意味が分かれば直感的に笑える構成となっている。

聖痕まで笑いに変えるギリギリの発想

「もちろん踵は0インチ!」では、靴底の減り方からイエスの足に刻まれた聖痕へと話をつなげるなど、信仰の中心に位置する受難の象徴まで日常的な笑いへ変換している。扱い方によっては不謹慎になりかねない題材だが、イエス自身が明るく受け入れている作品世界と、ブッダとの穏やかな関係性によって、攻撃性の低い身内話のような笑いに仕上げられている。

松山ケンイチと染谷将太の対照的な掛け合い

新しいものにすぐ飛びつくイエスと、倹約家で現実的なブッダという対照的な人物像も健在。松山ケンイチの無邪気で妙に俗っぽいイエスと、染谷将太の落ち着いたブッダによる温度差が、ショートコント形式の物語を支えている。

ふたりが互いの宗教や過去を遠慮なくいじりながらも、決して険悪にはならない距離感も魅力だ。狭いアパートやファミレス、カラオケボックスといった身近な空間に聖人を置くことで、神話上の存在が仲の良いルームメイトへと変わっていく。

題材の広がりと、わずかに漂うネタ切れ感

一方、第3弾となる今回は、宗教ネタ以外の題材が増えている。「オータム・オブ・ザ・リビングデッド」ではゾンビ映画風の騒動が展開し、家電製品や虫、夏の暑さといった一般的な日常ネタも前作以上に取り入れられた。

エピソードの種類が広がったことで変化は生まれているものの、宗教的な逸話との結びつきが弱く、やや強引に神仏ギャグへ着地させているように感じられる場面もある。原作にも通じる傾向ではあるが、シリーズ本来の面白さである宗教知識と日常生活の鮮やかな接続を期待すると、わずかなネタ切れ感は否めない。

「パンチとロン毛」の漫才は後の映画へ

冒頭の「初舞台」では、イエスとブッダがお笑いコンビ「パンチとロン毛」を結成し、漫才コンテストへ向けて練習を始める。しかし、原作における漫才のくだりは比較的コンパクトに処理されており、本作だけでは少々物足りなさも残る。

その後、2024年公開の『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』でも「パンチとロン毛」の結成と漫才が改めて描かれた。結果として、本作で短くなった漫才要素を次の実写映画が補完するような構成になっている。

cula をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む