映画『聖☆おにいさん 第Ⅱ紀』(2019)を紹介&解説。
映画『聖☆おにいさん 第Ⅱ紀』概要
映画『聖☆おにいさん 第Ⅱ紀』は、中村 光による同名ギャグ漫画を、福田雄一監督・脚本、山田孝之製作総指揮で実写化したシリーズ第2弾。東京・立川でルームシェアするイエスとブッダが、秋葉原への“聖地巡礼”やゲームセンターなど、アパートの外でも騒動を巻き起こす全10話のショートコメディだ。イエス役の松山ケンイチ、ブッダ役の染谷将太が続投し、警察官役で山田裕貴がゲスト出演する。
作品情報
| 日本版タイトル | 『聖☆おにいさん 第Ⅱ紀』 |
|---|---|
| 英題 | SAINT☆YOUNG MEN 2nd Century |
| 製作年 | 2019年 |
| 配信開始日 | 2019年6月1日(第1~5話)/6月8日(第6~10話) |
| 日本公開日 | 2019年6月6日(立川シネマシティ)/6月7日(イオンシネマ) |
| ジャンル | コメディ |
| 製作国 | 日本 |
| 原作 | 中村 光『聖☆おにいさん』(漫画) |
| 上映時間 | 54分 |
| 話数 | 全10話 |
| 前作 | 『聖☆おにいさん(第Ⅰ紀)』(2018) |
| 次作 | 『聖☆おにいさん 第Ⅲ紀』(2020) |
| 監督・脚本 | 福田雄一 |
|---|---|
| 製作総指揮 | 山田孝之 |
| 撮影 | 工藤哲也 |
| 音楽 | 瀬川英史 |
| 出演 | 松山ケンイチ/染谷将太/山野 海/山田裕貴/川久保拓司 |
| ナレーション | 野田圭一 |
| 制作会社 | CREDEUS |
| 製作 | パンチとロン毛 製作委員会 |
| 配給 | S・D・P |
あらすじ
東京・立川のアパートで暮らし、商店街の福引きに挑戦したりしながら、ルームシェアを続ける神の子イエスと、目覚めた人ブッダ。やがてオタクの聖地・秋葉原へ向かったふたりは、自分たちを模したコスプレ衣装を試着する。さらに腹筋作りやインスタグラム、ゲームセンターなど、下界ならではの文化を満喫しながら、行く先々で聖人ゆえの奇跡と騒動を巻き起こしていく。
主な登場人物(キャスト)
イエス(松山ケンイチ):神の子イエス・キリスト。新しい物やインターネット、パソコンが好きな浪費家で、ブッダにたしなめられながら下界でのバカンスを楽しんでいる。穏やかで無邪気だが、本人に悪気のないまま奇跡や宗教的な逸話をコメディへ変えてしまう。
ブッダ(染谷将太):悟りを開いた仏教の開祖。節約を重んじる堅実な性格で、衝動買いしがちなイエスを管理する役回り。第Ⅱ紀ではインスタグラムに興味を持つなど、下界の新しい文化にも触れていく。
松田さん(山野 海):イエスとブッダが暮らすアパート「松田ハイツ」の大家。ふたりが本物の聖人だとは知らず、少し風変わりな外国人住人として接している。
警察官(山田裕貴):街をさまよっていたイエスを補導し、取り調べる警察官。イエスの常識では説明しにくい経歴や言動を前に、激しい反応を見せる。
コスプレショップ店員(川久保拓司):秋葉原のコスプレショップで働く店員。イエスとブッダが、自分たちをモデルにした衣装を試着するという奇妙な状況に立ち会う。
作品の魅力解説
アパートを飛び出したことで生まれる、前作以上の動き
第Ⅱ紀が第Ⅰ紀よりもにぎやかで面白く感じられる理由のひとつは、物語の舞台がアパートの一室だけにとどまらなくなったことだろう。イエスとブッダは秋葉原のコスプレショップやゲームセンターなどへ出かけ、下界の文化を全身で体験する。場面に視覚的な変化と動きが生まれたほか、店員や警察官といった第三者も自然に登場させられるようになり、ふたりの掛け合いとは異なる種類の笑いが加わった。
“本人が本人のコスプレをする”王道の設定コメディ
秋葉原を訪れたイエスとブッダが、自分たちをモデルにしたコスプレ衣装を試着する場面は、本作の設定を最もシンプルに生かしたエピソードだ。本物であるにもかかわらず、衣装を着たことで「イエスやブッダのコスプレをしている人」として扱われるという逆転が、難しい説明を必要としない王道の笑いを生み出す。宗教上の偉人と現代のオタク文化を無理なく接続できる、『聖☆おにいさん』ならではの発想である。
聖書の教えまでゲームセンターの笑いに変える
宗教的な逸話や教えを、日常の遊びへ落とし込む大胆さも健在だ。「海を割ったモーセなら腹筋も割れる」という強引な連想から腹筋トレーニングへ発展するネタや、イエスがパンチングマシーンの右頬と左頬を続けて平手打ちする場面など、聖書を知っているほど危うさと可笑しさが増していく。後者は「右の頬を打たれたら左の頬も向けなさい」という教えを、機械に対する左右のビンタへ転換した、文字どおりギリギリの宗教ジョークである。
松山ケンイチと染谷将太の脱力した聖人コンビ
イエスを演じる松山ケンイチは、無邪気さと妙な神々しさを共存させ、突拍子もない言動を自然に見せる。一方、染谷将太は倹約家で常識人に見えながら、時折イエス以上の奇跡や暴走を見せるブッダを淡々と演じている。実力派俳優ふたりが大げさに笑いを取りにいかず、奇妙な状況を日常として受け入れているからこそ、原作の脱力感が実写でも成立している。
原作の笑いと福田雄一監督の作風が前作以上にかみ合う
福田雄一監督の演出は好みが分かれやすい一方、第Ⅱ紀では屋外ロケや第三者との交流が増えたことで、会話中心の演出にもテンポと変化が加わった。原作由来の笑いが、福田作品と相性のよいアウトドアのステージで映像的なコメディへ昇華されている。ショートコントを連ねたような構成は変わらないものの、第Ⅰ紀より世界が広がった続編といえる。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
