『聖☆おにいさん(第Ⅰ紀)』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

映画『聖☆おにいさん』(2018)を紹介&解説。


映画『聖☆おにいさん』概要

映画『聖☆おにいさん』は、中村 光による同名ギャグ漫画を、福田雄一監督・脚本、山田孝之製作総指揮で実写化したコメディ。東京・立川でルームシェアをするイエスとブッダの、神々しくも庶民的な日常を描く。主演はイエス役の松山ケンイチとブッダ役の染谷将太。全10話の短編ドラマとして制作され、ピッコマTVでの配信に先駆けて、2018年10月12日から2週間限定で劇場公開された。現在は『劇場版 聖☆おにいさん 第Ⅰ紀』のタイトルでも配信されている。

作品情報

日本版タイトル 『聖☆おにいさん』
別タイトル 『劇場版 聖☆おにいさん 第Ⅰ紀』
製作年 2018年
劇場公開日 2018年10月12日
配信開始日 2018年10月18日
ジャンル コメディ
製作国 日本
原作 中村 光『聖☆おにいさん』(漫画)
上映時間 77分
次作 聖☆おにいさん 第Ⅱ紀』(2019)
監督・脚本 福田雄一
製作総指揮 山田孝之
撮影 工藤哲也
音楽 瀬川英史
出演 松山ケンイチ/染谷将太/山野 海/佐藤二朗
ナレーション 野田圭一
制作プロダクション ホリプロ
製作 パンチとロン毛製作委員会
配給 S・D・P

あらすじ

世紀末を無事に乗り越えた神の子イエスと、悟りを開いたブッダは、下界で休暇を過ごすため東京・立川のアパートで共同生活を送っていた。新しいものが好きで浪費しがちなイエスと、細かな出費を気にする倹約家のブッダ。沖縄旅行の計画、病気の看護、散髪や物件探しといった庶民的な出来事の中で、ふたりの聖人としての能力や宗教的逸話が思わぬ奇跡と笑いを巻き起こす。

主な登場人物(キャスト)

イエス(松山ケンイチ):神の子であり、世紀末を乗り越えた後、ブッダとともに下界で休暇を過ごしている。新しいものや流行が好きな浪費家。無邪気で人懐こい一方、感情が高ぶると後光や奇跡などの神聖な力が日常生活に現れてしまう。

ブッダ(染谷将太):悟りを開いた“目覚めた人”。イエスと立川のアパートをシェアしている。倹約家で生活費に厳しく、衣服も自分で作ろうとするほど几帳面。苦行に耐えてきた経験や螺髪など、仏教にまつわる特徴が日常的な笑いへと転化される。

松田さん(山野 海):イエスとブッダが暮らすアパートの大家。ふたりの正体を知らないまま、個性的な住人として接している。家賃の安い別の物件に興味を示すふたりに対し、大家として行動を起こす。

医者(佐藤二朗):高熱を出して寝込んだブッダを診察する町医者。目の前の患者がブッダ本人であることを知らず、独特の話し方と間を交えながら問診を進めていく。

作品の魅力解説

仏教とキリスト教の聖人が送る、あまりにも庶民的な生活

本作最大の魅力は、イエス・キリストとブッダという世界的な聖人を、立川の風呂なしアパートで暮らすごく普通の若者として描く設定にある。家賃や食費を気にし、旅行の計画を立て、体調を崩せば病院へ行く。壮大な宗教的存在と、慎ましい日常生活との落差そのものが笑いを生み出している。

原作漫画の時点で日常系コメディとして完成度が高く、その面白い設定と会話を実写に置き換えているため、作品の笑いは明快。大きな事件や明確な物語のゴールを追う映画ではなく、イエスとブッダの穏やかな共同生活を短いエピソードの積み重ねで楽しむオムニバス作品となっている。

宗教的な逸話を身近な笑いに変える唯一無二のギャグ

イエスの荊の冠や後光、触れたものに奇跡を起こしてしまう力、ブッダの螺髪や苦行の経験など、仏教・キリスト教にまつわる知識が次々と日常のコメディへ組み込まれる。宗教を攻撃的に風刺するのではなく、聖人たちの人間味や親しみやすさを強調する方向で笑いに変えている点が、中村 光の原作ならではの特色だ。

宗教に詳しくなくてもふたりの性格の違いや掛け合いは楽しめるが、聖書や仏教説話について少し知っていれば、台詞や小道具、身体に起こる異変の意味が分かり、さらに多くのギャグを拾える。原作から選ばれた人気エピソードに加え、ドラマオリジナルの短編も収録されている。

松山ケンイチと染谷将太が再現する“パンチとロン毛”

主演の松山ケンイチと染谷将太は、奇抜な外見を誇張して演じるだけでなく、長年一緒に暮らしている友人のような自然な空気を作り出している。無邪気で感情表現の大きなイエスと、冷静にツッコミを入れながら家計を守るブッダという対照的な人物像も分かりやすい。

螺髪や後光、荊の冠といった原作の視覚的なギャグが実写空間へ持ち込まれ、神々しい姿のふたりが炊飯器や扇風機に囲まれて生活する光景も本作ならでは。松山ケンイチと染谷将太の実力を、派手なドラマではなく脱力した会話劇へ注ぎ込んだキャスティングも見どころとなっている。

原作の“シュールな間”と福田雄一演出の相性

福田雄一監督は、テンポの速い掛け合いや、俳優のアドリブを交えた笑いの畳み掛けを得意としてきた。一方、『聖☆おにいさん』の中心にあるのは、何気ない静かな会話に漂う静かでシュールな笑いである。本作では原作のまったりとした空気を尊重しているが、そのために場面によっては演出が間を持て余しているように感じられることもある。

とりわけ佐藤二朗が登場するエピソードでは、福田作品らしい長い間や即興的な芝居が前面に出るため、好みが分かれやすい。映画的な展開やスピーディーなコメディを期待すると物足りなさが残る一方、ふたりが部屋でだらだらと話している時間そのものを楽しめる人には、原作の穏やかな世界へ浸れる作品となっている。

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