映画『96時間 レクイエム』(2014)を紹介&解説。
映画『96時間 レクイエム』概要
映画『96時間 レクイエム』は、リーアム・ニーソン演じる元CIA工作員ブライアン・ミルズの戦いを描いたサスペンス・アクション『96時間』シリーズの第3作。元妻殺害の容疑をかけられたブライアンが、警察の追跡をかわしながら真犯人を捜し、娘を守るために奔走する。前作に続いてオリヴィエ・メガトンが監督を務め、リュック・ベッソンとロバート・マーク・ケイメンが脚本を担当。フォレスト・ウィテカー、ファムケ・ヤンセン、マギー・グレイスらが共演するシリーズ最終章。
作品情報
| 日本版タイトル | 『96時間 レクイエム』 |
|---|---|
| 原題 | Taken 3 |
| 製作年 | 2014年 |
| 本国公開日 | 2015年1月21日(フランス) |
| 日本公開日 | 2015年1月9日 |
| ジャンル | アクション/サスペンス/クライム |
| 製作国 | フランス |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 109分 |
| 前作 | 『96時間 リベンジ』(2012) |
| 監督 | オリヴィエ・メガトン |
|---|---|
| 脚本 | リュック・ベッソン/ロバート・マーク・ケイメン |
| 製作 | リュック・ベッソン |
| 製作総指揮 | フェルナンド・ビクトリア・デ・レセア |
| 撮影 | エリック・クレス |
| 編集 | オドレイ・シモノー/ニコラ・トレンバジウィック |
| 作曲 | ナサニエル・メカリー |
| 出演 | リーアム・ニーソン/フォレスト・ウィテカー/ファムケ・ヤンセン/マギー・グレイス/ダグレイ・スコット/サム・スプルエル/リーランド・オーサー |
| 製作 | ヨーロッパコープ/M6フィルムズ |
| 配給 | ヨーロッパコープ・ディストリビューション(フランス)/20世紀フォックス(アメリカ・日本) |
あらすじ
トルコで犯罪組織を壊滅させた元CIA工作員ブライアン・ミルズは、娘キムや元妻レノーアとの穏やかな関係を取り戻そうとしていた。しかし、ブライアンが自宅へ戻ると、そこには殺害されたレノーアの姿があった。直後に現れた警察から逃走したことで、ブライアンは元妻殺害の容疑者として指名手配される。警察の捜査網をかいくぐりながら独自に事件を追うブライアンは、真犯人を突き止め、再び危険にさらされたキムを守るために“特殊なスキル”を駆使する。
主な登場人物(キャスト)
ブライアン・ミルズ(リーアム・ニーソン):かつてCIAで工作員として活動していた男。元妻レノーアを殺害した容疑をかけられ、警察に追われながら真犯人を捜す。研ぎ澄まされた判断力、格闘能力、追跡技術を駆使して娘キムを守ろうとする。
フランク・ドッツラー(フォレスト・ウィテカー):レノーア殺害事件の捜査を指揮するロサンゼルス市警の警部。鋭い観察力と推理力を持ち、逃走したブライアンの行動を冷静に分析しながら追跡する。
レノーア・セント・ジョン(ファムケ・ヤンセン):ブライアンの元妻で、キムの母親。現在はスチュアートと再婚しているが、夫婦関係に悩み、ブライアンとの距離を再び縮めようとしていた矢先に殺害される。
キム・ミルズ(マギー・グレイス):ブライアンとレノーアの娘。過去の事件を乗り越えて大学生活を送っている。母親を失ったうえ、父親が殺人容疑者として追われる事態に巻き込まれる。
スチュアート・セント・ジョン(ダグレイ・スコット):レノーアの現在の夫で、キムの継父。レノーアとの関係が悪化する中、ブライアンに彼女と距離を置くよう求める。
オレグ・メランコフ(サム・スプルエル):裏社会で勢力を持つロシア人犯罪組織のボス。レノーア殺害事件に関係している可能性が浮上し、ブライアンの追跡対象となる。
サム・ギルロイ(リーランド・オーサー):ブライアンの元同僚であり、長年の友人。仲間たちと協力し、警察に追われるブライアンの調査と逃亡を支える。
作品の魅力解説
追う側から追われる側となったブライアン
過去2作では犯罪組織を追跡して家族を救ってきたブライアンが、本作では元妻殺害の容疑者として警察に追われる立場となる。逃亡しながら事件を捜査する展開により、シリーズおなじみのアクションへ冤罪サスペンスの緊張感が加わっている。
ブライアンとドッツラーの頭脳戦
フォレスト・ウィテカー演じるドッツラーは、力ずくでブライアンを追い詰めるだけの刑事ではない。現場に残されたわずかな手掛かりやブライアンの行動パターンを読み解き、少しずつ真相へ迫っていく。高度な技能を持つふたりの静かな知恵比べが、物語を牽引する。
ロサンゼルスを駆け抜ける逃亡アクション
舞台をロサンゼルスへ移し、市街地や高速道路、地下施設、空港などを使った追跡劇を展開。格闘や銃撃戦に加え、カーチェイスや警察包囲網からの脱出など、ブライアンの判断力と即応力を生かしたアクションが連続する。
家族の物語を締めくくるシリーズ最終章
本作でブライアンが守ろうとするのは、娘の命だけではなく、失われかけた家族の絆でもある。レノーアの死による悲しみと怒りを軸に、娘キムとの関係や父親としての責任を改めて描き、『96時間』3部作の物語を締めくくっている。
ストーリー解説(ネタバレ)
不穏な取り立て
物語は、夜中にひとりの会計士が武装した男たちによって勤務先へ連行される場面から始まる。オフィスではロシア人犯罪者オレグ・メランコフが待ち受けていた。会計士の雇い主が多額の金を滞納しており、メランコフは金庫を開けるよう要求する。しかし、中に目的の金は入っていなかった。
メランコフは債務者の留守番電話へ、これ以上は待てないという趣旨の警告を残す。さらに会計士を撃ち、金を返さなければ家族にも危害を及ぼしかねない冷酷さを示す。この時点では、金を借りている人物の正体や、ブライアン・ミルズ一家との関係は明かされない。
キムへの早すぎる誕生日プレゼント
一方、元CIA工作員のブライアン・ミルズは、娘キムの誕生日を祝うため、巨大なパンダのぬいぐるみを購入する。誕生日はまだ3日後だったが、いつも行動が予測しやすいと言われているブライアンは、今回は意表を突こうと早めにプレゼントを届けたのだった。
キムの部屋には恋人のジミーもいた。すでに大人になったキムに巨大なぬいぐるみは幼すぎる贈り物で、彼女は戸惑いながらも父親の気持ちを受け取る。ブライアンが帰ったあと、キムはひとりで感情を乱す。彼女は妊娠していることを知ったばかりだったが、ジミーにも父親にも、まだその事実を打ち明けられずにいた。
レノーアが打ち明けた夫婦関係の苦悩
帰宅途中のブライアンは、元妻レノーアに電話をかける。パンダを喜んでもらえなかったことを冗談交じりに話し、夕食に誘うが、レノーアはいったん断る。しかしその夜、彼女はブライアンの部屋を訪れる。
レノーアは、現在の夫スチュアートとの関係がうまくいっていないと告白する。夫婦そろって、あるいは別々にカウンセリングを受けても状況は改善せず、スチュアートは関係を修復しようとしているものの、レノーア自身は彼に対して何も感じられなくなっていた。形式だけの結婚生活を続け、閉じ込められているように感じているという。
さらにレノーアは、ブライアンとよりを戻すことを空想していると明かす。ふたりの間には互いを求める気持ちが残っていたが、ブライアンは彼女とスチュアートの関係が整理されていない状態で踏み込めば、キムを含む全員を傷つけると考える。レノーアの気持ちを拒絶したわけではないものの、彼は一線を越えなかった。
ブライアンは近く1か月ほど仕事で町を離れる予定だと説明し、ひとりになりたいときに使える場所の鍵をレノーアへ渡す。その後、ブライアンは旧友のサム、ケイシー、バーニーと会い、彼らから仕事への参加を求められるが、レノーアのことが気にかかり、長期間留守にする仕事を断る。
父親に相談できないキム
キムはブライアンを呼び出し、相談したいことがあると切り出す。本当は妊娠について話すつもりだったが、言い出せなくなり、友人が保護した子犬を飼うべきか迷っているという話にすり替える。
事情を知らないブライアンは、大学生活を送りながら子犬を育てるのは大きな責任を伴うと説明する。子犬には常に食事や散歩が必要で、子どもを育てることと変わらないと語るが、その言葉は妊娠を隠しているキムに重く響く。結局、キムは真実を話せないまま父親と別れる。
スチュアートからの警告
その夜、レノーアの夫スチュアートが突然ブライアンの部屋を訪れる。スチュアートは、レノーアから夫婦間の問題について聞いているのだろうと確認したうえで、結婚生活を修復するためにはブライアンが間に入るべきではないと主張する。
ブライアンは、レノーアとの間にあるのはキムの両親としての関係だけだと答える。それでもスチュアートは、夫婦の問題が解決するまで自分の妻と会わないでほしいと要求。ブライアンは約束を受け入れる。スチュアートは翌朝の仕事のため、これからラスベガスへ向かうと説明して帰っていく。
ベーグルを求めるレノーアからのメッセージ
翌朝、ブライアンの携帯電話にレノーアから緊急のメッセージが届く。自宅で会いたいという内容で、朝食用のベーグルを買ってくるよう書かれていた。ブライアンは店に立ち寄り、焼きたてのベーグルとクリームチーズを購入してから自宅へ戻る。
玄関前にはレノーアの車があったが、部屋の中から返事はない。寝室へ入ったブライアンが目にしたのは、ベッドの上で喉を切られ、すでに死亡しているレノーアだった。衝撃を受けたブライアンが彼女を抱き起こそうとした直後、警官たちが部屋へ突入する。
警察にはその直前、女性が殺されかけているという匿名の通報が入っていた。警官たちの目には、凶器のそばにいるブライアンが犯行現場で発見されたように映る。ブライアンは自分が殺したのではないと訴えるが、現場の状況はあまりにも不利だった。
殺人容疑者となったブライアンの逃走
そのまま逮捕されれば、事件の真相を突き止めることもキムを守ることもできないと判断したブライアンは、警官たちを素早く制圧して部屋から脱出する。住宅街の路地や建物の間を走り抜け、次々に集まる警官とヘリコプターの捜索をかわしていく。
追い詰められたブライアンは、民家のガレージへ逃げ込み、床下から雨水排水路へ入る。警察は建物を包囲するが、彼はすでに地下水路を通って別の場所へ移動していた。警察は武装したブライアンが誰も撃たずに逃げたこと、さらに空からの監視を受けながら姿を消したことに驚かされる。
キムに伝えられた母親の死
逃走したブライアンは、レノーアの自宅にいるキムへ電話をかける。スチュアートはラスベガスにおり、キムはひとりで母親の服を探していた。ブライアンは「恐ろしいことが起きた」と前置きし、レノーアが自分の部屋で殺害されたことを告げる。
さらに、現場の状況から自分が犯人に見えるよう仕組まれていること、誰が何のために行ったのかはまだ分からないことを説明する。ブライアンは必ず真相を突き止めると約束し、周囲の人間を簡単に信用しないようキムへ警告する。突然母親を失い、父親まで追われる身となったキムは、言葉を失う。
フランク・ドッツラーの捜査
レノーア殺害事件の捜査を指揮するのは、ロサンゼルス市警のフランク・ドッツラーだった。ドッツラーは現場に残された証拠を確認し、匿名通報の発信元、ブライアンとレノーアの通話やメッセージ、双方の車の移動記録を徹底的に調べるよう部下に指示する。
スチュアートはドッツラーの事情聴取に対し、ブライアンがレノーアとの復縁を望んでいたように思うと証言する。レノーアにはブライアンと距離を置くよう頼んでいたとも話し、結果としてブライアンに疑いが向く説明を行う。
キムは、父親が母親に暴力を振るうはずがないと強く否定する。スチュアートはパリやイスタンブールで起きた過去の事件に触れ、ブライアンには多くの敵がいると説明。キムも、父親自身が危険なのではなく、父親が生きてきた世界が危険なのだと訴える。
ブライアンの軍歴を調べたドッツラーは、彼が若くして軍の特殊部隊に入り、その後の経歴がほとんど公的記録から消えていることを知る。通常の逃亡犯ではないと理解しながらも、ほかに容疑者がいない以上、ブライアンを最重要容疑者として追うことになる。そして、父親と深く結びついているキムを監視すれば、いずれ接触してくると考える。
“ウサギの穴”から始まる独自捜査
ブライアンは旧友サムへ連絡し、自分は“ウサギの穴”へ入ると伝える。それは、警察や外部から隔離された秘密の隠れ家を意味していた。そこには武器、通信機器、監視装置、偽装に使う道具などが用意されており、ブライアンは服を替え、事件を独自に調べる準備を整える。
警察が押収したレノーアの車のGPS記録から、彼女が殺害前夜、人里離れたガソリンスタンド付近へ立ち寄っていたことを突き止める。ブライアンは警察関係者を装って現地へ行き、防犯カメラの映像を確認する。
映像には、ひとりで立っているレノーアへ複数の男が近づき、彼女を力ずくで連れ去る様子が残っていた。男たちの手には特徴的な入れ墨がある。これにより、レノーアが自らブライアンの部屋へ向かったのではなく、何者かに拉致され、殺害後に遺体を運び込まれた可能性が高まる。
逮捕を利用した警察データへの侵入
ブライアンが防犯映像を調べているところへ、ドッツラーの部下であるガルシアとスミスが到着する。ブライアンは抵抗せず、いったん拘束されてパトカーへ乗せられる。しかし、それは警察の通信機器と内部データベースへ近づくための計算された行動だった。
移送中、ブライアンは警官たちの隙を突いてパトカーを奪取。車載端末からロサンゼルス市警の保護されたデータへ接続し、自分とレノーアの通話記録や削除されたメッセージなどを記憶媒体へ保存する。
ブライアンは無線でドッツラーへ連絡し、自分は無実であり、2日あれば真犯人を突き止められると告げる。ドッツラーは無実の可能性を完全には否定しないものの、それを判断するのは裁判所であり、自分の仕事はブライアンを逮捕することだと応じる。
ブライアンは追跡用の携帯電話をわざと車内へ残し、警察を誤った方向へ誘導する。ドッツラーは、経験豊富なブライアンが単純なミスをするはずがないと見抜く。一方、警察もガソリンスタンドの防犯映像を入手し、レノーアを拉致した正体不明の男たちの存在を認識する。
レノーアの葬儀と暗号のような伝言
ブライアンはサムたちのもとへ行き、警察から入手した通信記録の分析と、レノーアに関する検査を依頼する。そして、警察が厳重に監視していると分かっていながら、レノーアの葬儀を見届けたいと話す。
ブライアン自身は姿を見せず、サムの服に仕込んだ小型カメラと通信装置を通じて葬儀を見守る。警察はサムたちの会話を盗聴していたが、ブライアン側は通信妨害を行い、内容を正確に聞き取らせない。
サムはキムを慰めながら、父親はいずれ連絡してくるため、いつもどおりの“非常に予測しやすい日課”を続けるよう伝える。これは、ブライアンとキムだけに意味が分かる合図だった。ブライアンは、キムが毎朝大学近くの同じ店へ行き、同じ桃味のヨーグルトドリンクを買う習慣を知っていた。
予測可能な日課を使った父娘の再会
葬儀後、キムはスチュアートの家に戻る。家の外には警官が待機し、スチュアートは新たにボディーガードまで雇っていた。母親が長く苦しんでいたのはスチュアートにも責任があると感じるキムは、彼に冷たい態度を取る。
翌朝、キムは父親からの合図どおり、いつもの店で桃味のヨーグルトドリンクを購入する。ただし普段と違い、その場ですべて飲み干す。その後、大学の講義中に強い吐き気を覚え、教室を出てトイレへ向かう。
店にあったドリンクには、ブライアンが一時的に吐き気を起こす成分を加えていた。警察の監視下にあるキムと人目を避けて会うためだった。女子トイレで待っていたブライアンは、吐き気を治める薬を飲ませ、キムに取り付けられていた警察の盗聴器も発見して取り外す。
父親と再会したキムは感情を抑えられなくなり、自分が妊娠していることを告白する。突然の報告にブライアンは動揺するが、まずはレノーアの事件と現在の危機を乗り越え、そのあとでキムにとって何が最善なのかを一緒に考えようと落ち着かせる。
さらにキムは、スチュアートの様子が明らかにおかしく、何かを恐れているように見えること、複数のボディーガードを雇ったことを伝える。ブライアンは、スチュアートがレノーア殺害の背景について何か知っている可能性を疑い始める。
警察が大学へ迫ると、ブライアンは盗聴器を利用して捜査員を別方向へ誘導し、校舎から脱出する。ドッツラーはキムが父親との接触を隠したと察するが、キムは母親を殺したのは絶対に父親ではないという姿勢を崩さない。
スチュアートを追うブライアン
ブライアンはスチュアートの行動を監視する。スチュアートが車でマリブ方面へ向かうと、ブライアンは別の車で尾行。スチュアートは海辺にある別宅へ向かっていた。
ところが山道へ入ったところで、黒いSUVに乗った男たちがブライアンを襲撃する。SUVは何度もブライアンの車へ体当たりし、最後には崖下へ押し落とす。車は斜面を転がり落ち、炎上。襲撃者たちはブライアンが死亡したと思い、その場を離れる。
しかしブライアンは、車が完全に崖下へ転落する前に外へ脱出していた。物陰に身を隠して襲撃者たちをやり過ごすと、通りかかったマイクという男性の車を止め、自分が運転すると告げる。子どもがいるというマイクへ、成長を一日も見逃さないよう助言したあと、ブライアンは逃走した男たちを追い始める。
ロシア人襲撃者との対決
ブライアンは襲撃者たちが立ち寄った道路沿いの酒販店を突き止める。店内には、レノーアを拉致した映像に映っていたものと同じ特徴的な入れ墨を持つロシア人たちがいた。
ブライアンは男たちを次々に制圧し、誰の命令で動いているのかを聞き出そうとする。生き残った男のひとりにロシア語で質問するが、男は情報を渡すくらいなら死を選ぶと抵抗し、自ら命を絶つ。黒幕の名前までは聞き出せなかったものの、スチュアートを尾行した直後にロシア人から襲われたことで、両者がつながっていることは明らかだった。
スチュアートへの尋問
ブライアンはマリブの別宅へ侵入する。スチュアートは、襲撃を依頼した男たちが戻ってくるものと思っていたが、現れたのは生き延びたブライアンだった。
ブライアンはスチュアートを拘束して連れ出し、水を使った激しい尋問を行う。スチュアートは当初、レノーア殺害について何も知らないと否定する。しかし追及に耐えられなくなり、オレグ・メランコフという名前を口にする。
スチュアートによれば、メランコフは元ロシア軍特殊部隊スペツナズの隊員で、ソ連崩壊後に犯罪組織の世界へ入った危険人物だった。スチュアートは重機を扱う取引をきっかけに知り合い、何度もビジネスを行ってきたが、最後の取引に失敗して多額の借金を抱えたという。
メランコフは、金を返さなければスチュアートの家族を殺すと脅していた。スチュアートは、借金を回収できないメランコフが報復としてレノーアを殺したのだと説明する。
ブライアンをロシア人へ売ったスチュアート
さらにスチュアートは、ブライアンの正体や能力をメランコフ側へ教えていたことを認める。レノーアがブライアンと会っていたことに腹を立て、ブライアンなら犯人を追跡し、メランコフたちを殺すだろうと伝えたのだった。
スチュアートにとっては、ブライアンがメランコフを倒せば借金が消える。反対にメランコフがブライアンを殺せば、レノーアとの関係をめぐる邪魔者がいなくなる。どちらが勝っても自分に都合がよいと考えていたことになる。
ブライアンは、メランコフの部下が自分を殺せなかった以上、次に狙われるのはキムだと指摘する。債務者本人を殺してしまえば金を回収できないため、メランコフは家族を標的にしてスチュアートを追い詰めるはずだった。
キムをスチュアートの家から救出
ブライアンはサム、ケイシー、バーニーへ連絡し、キムをスチュアートの家から連れ出す。家の周囲には警察とボディーガードが配置されていたが、ブライアンの仲間たちは彼らを制圧。ブライアンはキムを保護し、スチュアートも連れて秘密の拠点へ移動する。
一方、ドッツラーはブライアンの仲間たちの経歴を詳しく調べる。バーニーは狙撃手、ケイシーは元Navy SEALsで爆発物の専門家、サムは通信技術の専門家だった。彼らはいずれも民間警備会社に所属し、ブライアンと長く行動をともにしてきた実戦経験者だった。
ドッツラーは、ブライアンが追い詰めたロシア人が情報を渡さず自殺したことにも注目する。ブライアンは警官を殺す機会が何度もありながら殺しておらず、ロシア人からも犯人につながる情報を得ようとしていた。ドッツラーは、ブライアンたちの目的が無差別な復讐ではなく、レノーア殺害の真相解明であると理解し始める。
メランコフをおびき出す計画
秘密の拠点でスチュアートは、メランコフの経歴や警備体制を説明する。メランコフはダウンタウンの高層ビル最上階にあるペントハウスを拠点とし、専用エレベーターと多数の武装警備員に守られていた。
キムは、母親がスチュアートの失敗した取引のために殺されたと知り、激しい怒りをぶつける。今にもスチュアートへ襲いかかりそうになるが、ブライアンはメランコフへ近づくために彼が必要だと制止する。
ブライアンはスチュアートへメランコフに電話をかけさせ、返済する金を用意したと伝えさせる。メランコフは、1時間後にダウンタウンのビルへ来るよう指示する。スチュアートは返済用のバッグを持ってメランコフのもとへ向かうことになり、実質的にブライアンの“餌”として使われる。
ドッツラーが発見した生命保険
同じころ、警察の捜査から新たな事実が判明する。スチュアートとレノーアには、それぞれ1200万ドルの生命保険がかけられていた。レノーアが死亡すれば、夫であるスチュアートが巨額の保険金を受け取れる契約だった。
ドッツラーはスチュアートへ電話をかけるが、彼はブライアンに監視されているため、マリブで商談中だとうそをつく。ところが携帯電話の位置情報は、スチュアートがダウンタウンにいることを示していた。ドッツラーは部隊を高層ビルへ向かわせる。
メランコフのペントハウスへ潜入
スチュアートは金の入ったバッグを持ち、ビルの地下駐車場へ入る。メランコフの警備員が本人であることを確認すると、専用エレベーターの使用を許可する。
ブライアンはサムたちの通信支援を受け、監視カメラとエレベーターの警備を突破する。スチュアートを利用して警備員を油断させると、専用エレベーターへ侵入。上階の警備所を制圧し、メランコフのペントハウスへ進む。
異変を察知したメランコフは武装した部下を向かわせる。ブライアンは激しい銃撃戦と格闘の末、警備員たちを倒しながら室内を進む。最後にメランコフ本人と肉弾戦となり、互いに傷を負いながら戦ったブライアンが優位に立つ。メランコフは致命傷を負い、床へ倒れる。
メランコフが明かした本当の黒幕
ブライアンは、レノーアを殺したことへの怒りをメランコフへぶつける。しかしメランコフは、ブライアンと自分は同じ人物に利用されたのだと告げる。その人物こそスチュアートだった。
スチュアートは単に借金を返せなかったのではなく、レノーアの殺害をメランコフへ依頼していた。目的は1200万ドルの生命保険金だった。レノーアが彼のもとを去ろうとしていたことも、殺害を決断する動機となっていた。
スチュアートはブライアンの部屋を訪れた際に携帯電話を操作し、レノーアと会う約束をしたように見せかけるメッセージを送り、その記録を削除していた。メランコフの部下はレノーアを拉致して殺害し、遺体をブライアンの部屋へ運ぶ。さらに匿名で警察へ通報し、ブライアンを現行犯同然の状況に置いた。
当初の計画では、メランコフがブライアンも殺す予定だった。しかしブライアンが生き延びたため、スチュアートは彼にメランコフを追わせた。ブライアンがメランコフを殺せば、スチュアートは借金の相手を消し、レノーアの保険金を独占できる。反対にメランコフがブライアンを殺しても、計画を知る人物が減る。スチュアートは両者を戦わせ、最後に自分だけが利益を得ようとしていたのだ。
すべてを語ったメランコフは、自分も敗者になったとして、ブライアンにとどめを刺すよう求める。ブライアンはレノーア殺害に直接手を下した彼を許さず、メランコフはその場で死亡する。
スチュアートの裏切りとキムの拉致
ブライアンがメランコフと戦っている間、キムは通信記録の分析から、スチュアートの携帯電話でレノーアを殺害前夜の待ち合わせ場所へ呼び出したメッセージを発見する。スチュアートが事件を仕組んだ決定的な証拠だった。
キムがその事実をブライアンへ伝えようとした瞬間、スチュアートが行動を起こす。彼はサムを銃撃し、キムを人質に取って地下駐車場から逃走する。サムは重傷を負うが息はあり、到着した警察によって救護される。
スチュアートはサンタモニカの航空会社へ連絡し、15分後に出発できるよう自家用機を準備させる。保険金を持って国外へ逃げるつもりだった。キムには、ブライアンとその仲間たちが危険な殺人者であり、自分は逃げなければならないとうそをつく。しかし、すでに真相を知ったキムは彼を母親殺しだと非難する。
黒いポルシェで空港へ
メランコフのペントハウスを出たブライアンは、彼が所有していた黒いポルシェを奪い、スチュアートを追う。ドッツラーもペントハウスへ到着し、生命保険と通信記録から事件の構図を把握。ポルシェの車載電話を追跡してブライアンへ連絡する。
ドッツラーは、スチュアートを逮捕し、レノーア殺害の罪で起訴することが最優先だと話す。しかしブライアンにとっては、法的な解決よりもキムの救出が先だった。警察に任せて待つことはできず、そのままサンタモニカ空港へ急ぐ。
離陸寸前の自家用機
スチュアートはキムを銃で脅しながら自家用機へ乗せる。パイロットは離陸許可を求め、機体は滑走路を走り始める。警察も空港へ向かっていたが、到着までには時間がかかる。
ブライアンはポルシェで空港の敷地内へ突入し、離陸しようとする自家用機を追う。そのまま機体の着陸装置へ車を衝突させ、離陸を阻止。大破したポルシェから脱出し、機内にいるスチュアートへ迫る。
ブライアンとスチュアートの決着
ブライアンはスチュアートを制圧し、銃を向ける。そして、レノーアが自分との復縁を考えていたことに嫉妬し、携帯電話を使って偽のメッセージを送り、ロシア人に遺体を運ばせ、自分へ罪を着せた計画を突きつける。
スチュアートは、もう警察が近くまで来ているため自分を殺せないと訴える。ブライアンは殺意を抑えきれないが、キムが父親を呼び止める。その声を聞き、ブライアンは彼女の目の前でスチュアートを殺すことを思いとどまる。
ただしブライアンは、スチュアートには多くの人脈があり、優秀な弁護士を雇えば数年で釈放される可能性があると指摘する。その場合は自分が必ず見つけ出し、決着をつけると警告。スチュアートを殴って気絶させる。
そこへドッツラーと警察が到着し、スチュアートを逮捕する。キムは無事に救出され、レノーア殺害事件の真犯人と計画の全容も明らかになる。
温かいベーグルが示した無実
事件後、ブライアンとドッツラーは改めて話をする。ドッツラーは、事件の早い段階からブライアンの犯行には疑問を持っていたと明かす。そのきっかけは、現場に残されていた温かいベーグルだった。
レノーアを殺すつもりの人間が、わざわざ焼きたてのベーグルを買ってから部屋へ戻り、直後に殺人を犯すとは考えにくい。ドッツラーはベーグルを購入した時刻と、削除されていたメッセージの時刻を照合。ブライアンが警察のデータベースから違法に入手した記録も分析し、スチュアートが携帯電話を利用して偽装工作を行ったことを突き止めた。
レノーアはスチュアートのもとを去ろうとしており、彼には1200万ドルの保険金が必要だった。さらにブライアンをメランコフへ差し向ければ、借金の相手まで始末できる。ドッツラーは一連の計画を再構築し、ブライアンの無実を認める。
警察から逃走し、内部データを盗み出した行為については問題が残るものの、ドッツラーはブライアンを逮捕しない。念のため1か月ほど町を離れないよう求め、ふたりの追跡劇は終わる。
レノーアの名前を受け継ぐ命
後日、ブライアンはキムとジミーに会い、妊娠について話し合う。ブライアンは、ふたりがどのような選択をしても全面的に支えると約束し、レノーアも同じように応援したはずだと伝える。
キムとジミーはすでにふたりで話し合っていた。生まれてくる子どもが女の子だった場合、亡くなった母親にちなんで「レノーア」と名付けたいとブライアンへ告げる。ブライアンは、レノーアもきっと喜ぶだろうと静かに答える。
ブライアンは元妻を取り戻すことはできなかったが、彼女を殺した者たちの計画を暴き、娘とその新しい家族を守り抜いた。こうして『96時間』シリーズは、失われたレノーアの名前が次の世代へ受け継がれる可能性を示して幕を閉じる。
