映画『エノーラ・ホームズの事件簿』(2020)を紹介&解説。
映画『エノーラ・ホームズの事件簿』概要
Netflix映画『エノーラ・ホームズの事件簿』は、作家ナンシー・スプリンガーによる小説シリーズを原作に、名探偵シャーロック・ホームズの妹エノーラを主人公として描くミステリー・アドベンチャー。16歳の誕生日に母ユードリアが突然姿を消したことをきっかけに、エノーラがロンドンへ向かい、若き侯爵をめぐる陰謀に巻き込まれていく。主演・製作は『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のミリー・ボビー・ブラウン。共演にヘンリー・カヴィル、サム・クラフリン、ヘレナ・ボナム=カーター、ルイス・パートリッジら。
作品情報
日本版タイトル:『エノーラ・ホームズの事件簿』
原題:Enola Holmes
製作年:2020年
本国公開日:2020年9月23日(Netflix配信)
日本公開日:2020年9月23日(Netflix配信)
ジャンル:ミステリー/アドベンチャー/ドラマ
製作国:アメリカ
原作:ナンシー・スプリンガー『エノーラ・ホームズの事件簿 消えた公爵家の子息』(小説)
上映時間:123分
次作:『エノーラ・ホームズの事件簿2』(2022)
監督:ハリー・ブラッドビア
脚本:ジャック・ソーン
原作:ナンシー・スプリンガー
キャラクター原案:アーサー・コナン・ドイル
製作:メアリー・ペアレント/アレックス・ガルシア/アリ・メンデス/ミリー・ボビー・ブラウン/ペイジ・ブラウン
製作総指揮:ジョシュア・グローデ/マイケル・ドライヤー/ハリー・ブラッドビア
撮影:ジャイルズ・ナットジェンズ
編集:アダム・ボスマン
作曲:ダニエル・ペンバートン
出演:ミリー・ボビー・ブラウン/ヘンリー・カヴィル/サム・クラフリン/ヘレナ・ボナム=カーター/ルイス・パートリッジ/バーン・ゴーマン/アディール・アクタル/スーザン・ウォーコマ/フランシス・デ・ラ・トゥーア/フィオナ・ショウ
製作:レジェンダリー・ピクチャーズ/PCMAプロダクションズ
配給:Netflix
あらすじ
1884年、イギリス。16歳の誕生日を迎えたエノーラ・ホームズは、自由な精神を持つ母ユードリアと田舎の屋敷で暮らしていた。しかしある朝、母が謎めいた手がかりだけを残して姿を消す。久々に帰郷した兄シャーロックとマイクロフトは、エノーラを“淑女”として教育し直そうとするが、彼女は母を探すため単身ロンドンへ向かう。道中で出会った若き侯爵テュークスベリーの失踪事件にも関わることになり、エノーラは兄たちを出し抜きながら、自分自身の知恵と行動力で巨大な陰謀に迫っていく。
主な登場人物(キャスト)
エノーラ・ホームズ(ミリー・ボビー・ブラウン):シャーロック・ホームズの妹で、物語の主人公。母から読書、格闘術、暗号、科学など幅広い教育を受けて育った16歳の少女。母の失踪をきっかけに、社会が求める“女性らしさ”に縛られず、自分の道を切り開いていく。
シャーロック・ホームズ(ヘンリー・カヴィル):名探偵として知られるエノーラの兄。冷静で観察力に優れる一方、妹の自由な才能や成長を少しずつ理解していく存在として描かれる。
マイクロフト・ホームズ(サム・クラフリン):エノーラのもうひとりの兄。家制度や社会的体面を重んじ、エノーラを寄宿学校へ入れようとする。兄妹の対立を通して、当時の女性に求められた規範が浮かび上がる。
ユードリア・ホームズ(ヘレナ・ボナム=カーター):エノーラの母。娘に型破りな教育を施し、自立した思考と行動力を育てた人物。突然姿を消したことで、物語全体の謎の中心となる。
テュークスベリー(ルイス・パートリッジ):家を逃げ出した若き侯爵。エノーラと偶然出会い、彼女の冒険に大きく関わる。
リントーン(バーン・ゴーマン):テュークスベリーを追う謎めいた男。
レストレード警部(アディール・アクタル):シャーロックとも関わりを持つ警察関係者。
イーディス(スーザン・ウォーコマ):ロンドンで活動する女性。
ミス・ハリソン(フィオナ・ショウ):エノーラを“淑女”として教育しようとする寄宿学校の校長。
作品の魅力解説
本作の魅力は、シャーロック・ホームズの世界観を受け継ぎながら、物語の視点を“妹”エノーラへ大胆に移している点にある。観察力や推理力を備えた主人公でありながら、エノーラは兄シャーロックの単なる派生キャラクターではない。母から受け継いだ自由な精神と、自分自身の人生を選び取ろうとする意志によって、ホームズものに新しい角度を与えている。
ミリー・ボビー・ブラウンの軽やかな演技も作品の大きな軸である。エノーラは画面越しに観客へ語りかけるような場面も多く、ミステリーでありながらテンポのよい青春映画としても楽しめる。事件の謎解き、逃走劇、アクション、ユーモアがバランスよく組み合わされており、ホームズ作品に詳しくない視聴者にも入りやすい構成になっている。
また、物語の背景には、19世紀末のイギリスにおける女性の立場や参政権運動の空気が織り込まれている。エノーラがコルセットや寄宿学校に象徴される社会的な束縛から距離を取り、自分の知性と行動力で道を選ぶ姿は、作品全体のテーマと結びついている。単なる冒険活劇にとどまらず、“自分は何者として生きるのか”を問いかける成長物語としても見ることができる。
ヘンリー・カヴィル演じるシャーロックは、従来の冷徹な名探偵像とは少し異なり、妹の才能を静かに見守る存在として描かれる。サム・クラフリン演じるマイクロフトとの対比によって、エノーラを取り巻く家族関係にも奥行きが生まれている。ミステリー、家族ドラマ、フェミニズム的な視点、青春冒険劇が重なり合うことで、幅広い層が楽しめる作品となっている。
