【映画レビュー『トイ・ストーリー5』】テクノロジー時代に、ただ善悪や是非を問うことをしない新たな“おもちゃ物語”の傑作

【映画レビュー『トイ・ストーリー5』】テクノロジー時代に、ただ善悪や是非を問うことをしない新たな“おもちゃ物語”の傑作 Film Review
『トイ・ストーリー5より』©2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

新作映画『トイ・ストーリー5』を紹介&解説するレビュー。


トイ・ストーリー5』が、7月3日(金)に日本公開を迎える。おもちゃたちの物語として愛され続けてきたこのシリーズが、今回挑むのはテクノロジーという新たな相手だ。タブレット端末リリーパッドの登場によって、ウッディたちが担ってきた“子どもに遊ばれる存在”としての役割そのものが揺さぶられていく。果たしておもちゃは、テクノロジーの時代を生き抜くことができるのか。

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おもちゃはもう要らないのか——テクノロジー時代への問い

リリーパッドというタブレット端末の登場により、ウッディたちが担ってきた“子どもに遊ばれる存在”としての役割そのものが揺さぶられる。これが本作の大きな軸だ。テクノロジーが行き渡った時代に、アナログのおもちゃはもはや不要なのか——本作はまず、そうした問いを観客に突きつけてくる。

確かに現代では、スマートフォンやタブレットでオンラインゲームに興じることができ、情報は溢れんばかりに行き渡り、誰とでも繋がれるテクノロジーの利便性は計り知れない。だがその一方で、直接友達同士で対面して遊ぶことのない遊び方が増え、かえって孤独を深めているようにも見える。この一長一短こそが、本作を語るうえで見逃せないポイントだろう。

『トイ・ストーリー5より』

『トイ・ストーリー5より』©2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

さすがはピクサーと言うべきか、本作はテクノロジーを単純な悪役として描こうとはしない。描かれるのは「おもちゃと電子機器の戦い」ではなく、“もはや誰もおもちゃで遊んでいない”という実存的な問題への気づきである。そしてその過程で本作は、おもちゃもテクノロジーも「ボニーのために何かしたい」という点では変わらないという事実に辿り着く。ただし、得意なことと苦手なことはそれぞれ異なる。ならばどうするのか——それこそが本作の描こうとしている物語なのだ。

主人公はジェシー——居場所を失う恐怖という新たなドラマ

本作の主人公はウッディでもバズでもなく、ジェシーである。彼女とバズのもとへウッディも駆けつけ、おなじみのキャラクターたちが力を合わせて奮闘する様子は、シリーズならではの楽しさを存分に味わわせてくれる。

ジェシーは『トイ・ストーリー2』において、最初の持ち主に捨てられた過去をトラウマとして語っていた。そんな過去を抱えるジェシーが、テクノロジーの台頭によって再び“自分の居場所”を失いかねない状況に追い込まれる——この設定にこそ、本作にドラマを持ち込む切なさと苦しさが宿っている。居場所を失うことへの恐怖は、ある意味で一線を超えた暴走を彼女にもたらしてしまう。その暴走ぶりは、冷静に見ている観客からすれば「落ち着け」と言いたくなるようなものだが、当のジェシーにとっては切迫した死活問題なのだ。ブルズアイもこの騒動に巻き込まれ、ジェシーを支える存在として動くことになる。

『トイ・ストーリー5より』

『トイ・ストーリー5より』©2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

一方、置いていかれる形で事態を追いかけるウッディとバズは、本作にシリーズらしいコメディの役割をもたらしている。50体もの“ハイテクバズ”が登場する場面も含め、彼らの存在が本作を安心して楽しめるエンターテインメント作品として成立させているように感じられる。

『トイ・ストーリー5より』

『トイ・ストーリー5より』©2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

“遊び”の定義を広げ続けるシリーズ

『トイ・ストーリー4』では、ゴミから生まれたフォーキーの登場によって、おもちゃの定義そのものが拡張された。“子どもの遊び相手になり得るなら、たとえゴミでもおもちゃたり得る”というわけだ。本作ではそこにさらにテクノロジー機器という新たな存在が加わることで、“遊びの世界”はいっそうの広がりを見せることになる。結局のところ、何をおもちゃと捉え、何を遊びと捉えるか——それを決めるのは遊ぶ人間自身なのだと、本作は改めて気づかせてくれる。

『トイ・ストーリー5より』

『トイ・ストーリー5より』©2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

こうして本作もまた、今回監督も務めたアンドリュー・スタントン脚本らしい“トイ・ストーリー(おもちゃの物語)”として、しっかりと完成された一本に仕上がっている。


テクノロジーとおもちゃ、そのどちらが優れているかという単純な二項対立には落とし込まない——そこにこそ、『トイ・ストーリー5』というシリーズ最新作の誠実さがある。何を遊びと捉えるかは、結局のところ遊ぶ人間次第なのだという気づきを、本作は改めて僕たちに手渡してくれる。ジェシーの物語に涙し、おなじみのキャラクターたちの掛け合いに笑いながら、7月3日(金)の日本公開をぜひ劇場で確かめてほしい。

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