映画『ナウ・アンド・ゼン』(2026)を紹介&解説。
映画『ナウ・アンド・ゼン』概要
映画『ナウ・アンド・ゼン』は、『百年と希望』『わたしの自由について SEALDs 2015』など、社会運動や政治と人々の生活を記録してきた西原孝至監督によるドキュメンタリー映画。2023年の改正入管法をめぐる難民・移民問題と、1923年の関東大震災時に起きた朝鮮人・中国人虐殺という約100年を隔てた出来事を見つめ、日本社会に残る差別や植民地主義の問題を問い直していく。難民支援に取り組む若者、仮放免中の当事者、歴史を伝える市民や映画監督、研究者ら、さまざまな立場の人々の声を記録する。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ナウ・アンド・ゼン』 |
|---|---|
| 英題 | Now and Then |
| 製作年 | 2026年 |
| 日本公開日 | 2026年8月29日 |
| ジャンル | ドキュメンタリー |
| 製作国 | 日本 |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 72分 |
| 監督 | 西原孝至 |
|---|---|
| 製作 | 西原孝至/増渕愛子 |
| 撮影 | 西原孝至/山崎裕/飯岡幸子/井手口大騎ダグラス |
| 編集 | 西原孝至/大川景子 |
| 音楽 | 篠田ミル |
| 音響 | 黄永昌 |
| 録音 | 川上拓也 |
| 主な出演・登場人物 | 宮島ヨハナ/宮島牧人/オ・チュンゴン ほか |
| 製作・配給 | ML9 |
あらすじ
2023年6月、改正入管法が成立。難民認定を求める人々をめぐる環境が変化するなか、大学生の宮島ヨハナは学内に難民支援団体を立ち上げ、国際基準に沿った入管制度を求めて活動していた。東京で牧師を務める父・牧人もまた、多くの仮放免者の保証人を務めてきた。
その2023年は、1923年の関東大震災時に朝鮮人や中国人が虐殺された事件から100年という節目でもあった。虐殺の記憶を伝え続ける市民や若者たち、長年にわたって記録映画を上映してきた映画監督、難民申請者や研究者らの声をたどりながら、カメラは100年前と現在の日本をつないでいく。
主な出演者
宮島ヨハナ:大学生。学内に難民支援団体を立ち上げ、難民や入管制度をめぐる問題に取り組んでいる。
宮島牧人:ヨハナの父。東京で牧師を務め、これまで多くの仮放免者の保証人となってきた。
オ・チュンゴン:映画監督。学生時代に関東大震災時の朝鮮人虐殺についてのドキュメンタリーを製作し、長年にわたって上映活動を続けながら歴史を伝えてきた。
作品の魅力解説
約100年離れた「ナウ」と「ゼン」を一本の映画で見つめる
本作の大きな特徴は、現在の難民・入管制度をめぐる問題と、1923年の関東大震災時に起きた虐殺を、単なる別々の歴史として扱わないことにある。
タイトルの「Now and Then」が示すように、映画は現在と過去を行き来しながら、社会のなかで外国籍の人々がどのように見られ、扱われてきたのかを考えていく。100年という時間の隔たりそのものを映画の構造に組み込むことで、「過去の出来事」として片づけられない問いを現在へと引き寄せている。
ひとつの主張だけではなく、多くの人々の“声”をつないでいく
登場するのは、難民支援に取り組む学生や牧師、難民申請者、歴史を継承する若者たち、映画監督、研究者などさまざま。ひとりの主人公だけを追うのではなく、それぞれの証言や活動、記憶を断片的につないでいくことで、社会のなかに存在する問題を立体的に浮かび上がらせていく。
過去について語ること、現在の当事者の声を聞くこと、記録すること。その行為自体が何を意味するのかを考えさせる構成も、本作ならではのポイントとなっている。
社会運動を記録してきた西原孝至監督の延長線上にある作品
西原孝至監督は2010年代半ばから、日本の社会運動を継続して撮影してきた映画作家。2018年には日本の難民制度を扱う短編ドキュメンタリーの制作をきっかけに、制度を変えようと活動する人々を追い続けてきた。
『ナウ・アンド・ゼン』では、その長期的な取材のなかで出会った現在の問題と、関東大震災時の虐殺をめぐる記憶が交差する。単発的に社会問題を紹介する作品というよりも、長年カメラを向け続けてきた監督だからこそ生まれたドキュメンタリーといえる。
