【映画レビュー『スーパーガール』】等身大の新ヒーローが駆ける、荒々しい宇宙の冒険譚

『スーパーガール』IMAXほかラージフォーマット版ポスター解禁-新規場面写真10点も公開 Film Review
『スーパーガール』より © & TM DC © 2026 WBEI

新作映画『スーパーガール』 を紹介&解説するレビュー。


【本作のあらすじ・作品情報・キャラクター(キャスト)紹介はこちら】

映画『スーパーガール』は、新生DCユニバースにおける次なる一手として、スーパーガール/カーラ・ゾー=エルの単独作に挑んだヒーローアドベンチャーだ。『スーパーマン』に続くDCU作品として、より大きなユニバースの広がりを期待させる一方、本作の魅力は壮大な神話性よりも、荒々しく、未完成で、どこか投げやりなひとりのヒーロー像にある。

映画『スーパーガール』レビュー

ミリー・オールコックが体現する、等身大で不完全なスーパーガール

まず結論から言えば、ミリー・オールコックはスーパーガール/カーラ・ゾー=エル役によく合っている。少なくとも本作が目指す“模範的なヒーロー”とは異なるスーパーガール像において、彼女のキャスティングは大きな正解だったと思う。

カーラは、正義の象徴として最初から完成された存在ではない。過去の喪失を引きずり、何かに期待することを避けるように現実逃避的に生きている。それでいて、目の前の悪を見逃せるほど冷めきっているわけでもない。この、投げやりさと良心のあいだにある微妙なバランスを、オールコックは実に自然に体現している。

彼女の持つ茶目っ気、気だるさ、少し斜に構えた雰囲気は、カーラの等身大の人間性を引き出している。一方で、ひとたび力を振るえば、彼女はまぎれもなくスーパーヒーローであり、そのパワーはほとんど怪物じみている。この“脱力した若者”と“規格外の超人”のギャップこそ、本作のスーパーガールを魅力的に見せている最大の要素だ。

物語の深みは控えめ、それでも次を見たくなる導入編

一方で、スーパーガールというキャラクターの描き込みについては、やや物足りなさも残る。物語そのものはかなりシンプルで、要約しようと思えば2〜3行で済んでしまうような内容でもある。笑いを狙った場面も多いが、爆笑を生むというよりは、軽いノリや空気感で楽しませるタイプに近い。

そのため、観終わった後に強く残るのは、ドラマの深みというより、バトルアクションと宇宙冒険の爽快感だ。気楽に楽しめる反面、カーラの内面や成長がもう一段深く掘られていれば、作品としての手応えはさらに増していたはずだ。

ただし、この物足りなさは、スーパーヒーロー映画に対する観客側のハードルが上がりすぎていることとも無関係ではない。前作にあたる『スーパーマン』が、ヒーロー映画としても人間ドラマとしても非常に完成度の高い作品だったことで、本来なら十分に楽しめるはずのシンプルな冒険譚にも、ついそれ以上の深みを求めてしまう。

特に本作が描くのは、品行方正な救世主ではなく、パンクで不器用な若きヒーローの成長物語だ。そう考えれば、この軽さもまた作品の個性として受け止めるべきなのかもしれない。本作単体で大きな完成を見せるというより、ここで紹介されたスーパーガールが、今後のDCユニバースでどのように変化し、どんな活躍を見せるのか。その期待を高める導入編としては、十分に役割を果たしている。

『マッドマックス』を想起させる荒々しさと、惜しい脇役たち

ジェイソン・モモア演じる賞金稼ぎロボ、イヴ・リドリー演じるルーシー・メアリー・ノールも、それぞれキャラクターとしての存在感はある。特にモモアのロボは、俳優本人のワイルドな魅力と役柄の相性がよく、登場するだけで画面の温度を変える力がある。ルーシーも、カーラを物語へ引き込む存在として機能しており、キャスティング自体はかなり良い。

ただ、彼らの見せ方が十分に練られているかというと、そこには惜しさもある。キャラクターとしては魅力的なのに、物語上の配置や見せ場がやや直線的で、深く印象を刻むところまでは届いていない。スーパーガールの魅力を補強する存在ではあるが、単独で強く記憶に残るほどの厚みはもう少し欲しかった。

海外レビューで『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が引き合いに出されていたのには納得できる。パンクで豪快な世界観、荒野、アウトローな乗り物、砂埃の中で突き進む女性たち、わかりやすい悪党を相手にしたシンプルな戦い。本作には、確かにそうした要素が散りばめられている。

もちろん、『怒りのデス・ロード』ほど研ぎ澄まされた映像体験を期待すると、比較は酷かもしれない。それでも、荒々しいエネルギーと勢いで押し切るタイプのヒーロー映画として、本作はかなり楽しい。物語の薄さや脇役の扱いに不満は残るが、ミリー・オールコックのスーパーガールをもっと見たいと思わせるだけの魅力はある。

完璧なヒーローの誕生譚ではない。むしろ本作は、まだ未完成で、どこか危なっかしく、けれど悪を前にすれば立ち上がってしまうヒーローの出発点だ。その意味で『スーパーガール』は、新生DCユニバースに新しい風を吹き込む、脱力系で爽快なヒーローアドベンチャーになっている。


『スーパーガール』は、物語の厚みに物足りなさを残しつつも、ミリー・オールコックが体現する不完全で等身大のヒーロー像に確かな魅力が宿る一作だ。荒々しく、軽やかで、どこか危なっかしいカーラの旅は、新生DCユニバースにおける今後の成長を期待させる。脱力感と爽快感をあわせ持つヒーローアドベンチャーとして楽しめる映画『スーパーガール』は、6月26日(金)日本公開。

cula をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む