ルパート・グリントらが登壇したベルリン映画祭『Nightborn(原題)』会見で、政治議論が行われた。
ベルリン国際映画祭で上映された『Nightborn(原題)』の記者会見で、『ハリー・ポッター』シリーズのロン・ウィーズリー役などで知られるルパート・グリントが英国におけるファシズムの台頭について問われた。共演者や製作陣がアートと政治の関係について明確な姿勢を示すなか、グリントは「もちろん、僕は反対だよ」と述べつつも、発言のタイミングについては慎重な立場を示した。
会見で語られた“アートと政治”
現地時間2月14日(土)午後に行われた同作の会見には、監督・脚本を務めたハンナ・ベルクホルム、共演のセイディ・ハールラ、共同脚本家のイリヤ・ラウツィらが登壇した。本作は、フィンランドの人里離れた家に移り住んだ夫婦と、彼らのもとに生まれた赤ん坊をめぐる不穏な物語を描く。
世界の政治情勢や戦争、ファシズムの台頭について問われると、ラウツィは「我々が直面しているどんな問題であれ、光を当てることは大事だと思う」と語り、その理由を「アートの本質は共感にあるからね」と説明した。
さらに彼は、政治家や富裕層の責任に触れながら、「世界で何が起きているのか、ウクライナで何が起きているのか、パレスチナでのジェノサイドがどういうものか、人々に知ってもらうことが大切なんじゃないかな」と述べた。
また、パレスチナへの連帯を示すスイカのピンバッジを着けて登壇したベルクホルムは、「暴力や不正義に対して声を上げる責任があると思う。なぜなら声を上げないことも一つの選択だから」と語り、「仲間のアーティストたちに声を上げるなとは言えないよね」と付け加えた。
グリントが示した慎重なスタンス
会見の終盤、グリントは『ハリー・ポッター』原作者J・K・ローリングのトランスジェンダーに対する姿勢を以前批判した経緯に触れられたうえで、英国人として「英国におけるファシズムの台頭」についてどう考えているかを問われた。
これに対し、彼はまず「もちろん、僕は反対だよ」と明言した。しかし同時に、「発言するタイミングは自分で選ぶようにしてる」と述べ、即座に積極的な政治的メッセージを発信する姿勢は示さなかった。
それでも現在の状況については「今まさに非常に重要な問題だよね」と認識を示し、最後には「そのうち僕の声を届けるよ」と語った。
同じ会見の場で、製作陣がアートの役割や暴力、不正義について踏み込んだ発言を行ったのに対し、グリントは反対の立場を明確にしながらも、自身の発言のタイミングを重視する姿勢を示した形だ。
ベルリン映画祭で広がる“政治と映画”をめぐる議論
今年のベルリン国際映画祭では、出演者が政治的な質問への回答を避ける場面が相次ぎ、ヨーロッパのジャーナリストから不満の声が上がっている。
審査委員長のヴィム・ヴェンダースや、金熊賞受賞者のミシェル・ヨー、『Sunny Dancer(原題)』に出演するニール・パトリック・ハリスらは、米国の政治状況についてのコメントを避け、「政治と映画は切り離すべきだ」との立場を示した。
一方で、インドの作家アルンダティ・ロイは、ヴェンダースの「アートは政治的であるべきではない」という発言を受け、金曜日に映画祭への参加を取りやめた。
作品の枠を超え、映画人が社会的課題にどこまで向き合うべきか――。ベルリンの会見場では、その立場や温度差があらためて浮き彫りになっている。


