新作映画『28年後… 白骨の神殿』 を紹介&解説するレビュー。
1月16日(金)に公開されたポストアポカリプスホラー『28年後… 白骨の神殿』は、ニア・ダコスタ監督、アレックス・ガーランド脚本によるシリーズ続編。医師ケルソンと、少年スパイクがジミー・クリスタル率いるカルト集団に飲み込まれていく悪夢を描く。出演はレイフ・ファインズ、ジャック・オコンネル、アルフィー・ウィリアムズほか。
『28年後… 白骨の神殿』あらすじ
パンデミックから28年が経過し、隔離状態に置かれた英国。島で暮らす少年スパイクは、外の世界を求め本土へと渡るが、そこで待ち受けていたのは医師ケルソンの研究、そしてジミー・クリスタル率いるカルト集団“ジミーズ”の狂気だった。感染者の脅威だけでなく、生存者たちの非情さまでもがスパイクに牙をむき、彼は逃れることのできない悪夢の渦中へと引きずり込まれていく。
ゾンビ映画の枠を超えた三部作の要
『28年後… 白骨の神殿』は、前作『28年後…』から地続きの物語でありながら、本シリーズを単なる“ゾンビ映画”ではなく、普遍的な「人間同士の対立と心理」を描く作品群として確立させた続編だ。
三部作の2作目特有の”つなぎ”感が完全には払拭できていない部分もあるが、本作は狂気的な信仰と有害なカリスマの権威に焦点を絞り、これを徹底的に掘り下げることで物語を着実に前進させている。崩壊世界のカオスと、そこに生きる人間たちの葛藤を濃密に描き出し、最終章への期待を確実に高めることに成功した一作と言えるだろう。

『28年後… 白骨の神殿』より
現実の傷を映すカルト指導者ジミー
本作が描くのは、感染者の恐怖そのものではない。崩壊後の社会で人々が何にすがり、誰に従い、どう自分を保とうとするのか——その選択の残酷さこそが、本作の真の主題だ。
喪失とカルト的支配、操作と盲信。この構図の中心に立つのが、カリスマ的指導者ジミー・クリスタルである。死後に性加害が大きく報じられた英テレビ司会者、故ジミー・サヴィルを想起させるキャラクター造形は、カリスマの仮面、メディア的偶像、そして集団の盲目という現実社会の傷痕を物語に重ね合わせる。
ジミー・クリスタルという存在が物語を牽引することで、本作は単なるゾンビパニックではなく、いわゆる“人コワ”を描くカルトスリラーとして、一段階深い領域へと到達している。

『28年後… 白骨の神殿』より
品格を装うスーツで有害性を覆い隠し、配下に汚れ仕事を押し付けるカリスマ、ジミーを演じたのはジャック・オコンネル。不愉快極まりないのに目が離せない、不気味な引力を備えたキャラクターを、オコンネルは見事に体現してみせた。
ファインズが紡ぐ、奇怪さの中に宿る温もり
ジミーの対極に位置し、物語のもう一つの軸を担うのが、前作でも強い存在感を放ったケルソン医師だ。荒廃した世界で独自の哲学と信念を貫く彼もまた、ジミーの陰謀に巻き込まれていくが、ポスターにも採用されている“儀式”的なシーンは、本作の核心として強烈なインパクトを放っている。

『28年後… 白骨の神殿』より
一見すれば血まみれの狂人にしか見えないが、前作から描かれてきたケルソンの温厚さと思慮深さを知る観客には、その外見と内面のギャップがより鮮明に映るはずだ。
彼を演じたレイフ・ファインズは、この複雑なキャラクターに圧倒的な求心力を与えた。見た目の奇怪さを超えて温かい人間味、そして愛らしさすら感じさせるのは、ひとえにファインズの卓越したキャラクター造形によるものだろう。
もちろん、終盤には次作への期待を煽る要素が存在しており、最終章でどのような展開が待ち受けているのか、観客の想像力を大いに刺激する。
終末世界を舞台にしながら、文明が崩壊しても決して消えることのない人間の欲望、支配の恐怖、そして盲信の危うさを、容赦なく描き出す『28年後… 白骨の神殿』。本作は1月16日(金)より日本公開。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
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