第38回東京国際映画祭が開幕。オープニングを飾る『てっぺんの向こうにあなたがいる』をはじめ、注目の3作品を紹介する。
第38回東京国際映画祭が、ことしも華やかに幕を開ける。世界各国から多彩な作品が集うなか、開幕を飾るオープニング作品には吉永小百合主演の『てっぺんの向こうにあなたがいる』、センターピースには山田洋次監督の『TOKYOタクシー』、そしてクロージング作品にはクロエ・ジャオ監督による『ハムネット』が選ばれた。
日本映画界の重鎮から世界的巨匠まで、時代と国境を越えた3作品が並ぶ今年のラインナップは、まさに“映画祭の縮図”ともいえる。ここでは、その注目の3本を紹介する。


オープニングを飾るのは吉永小百合主演『てっぺんの向こうにあなたがいる』

© 2025「てっぺんの向こうにあなたがいる」製作委員会
1975年、エベレスト登頂に挑むひとりの女性の姿を通して、人生の強さと儚さを描いた人間ドラマ。監督は『どついたるねん』『北のカナリアたち』などで知られる阪本順治。脚本を坂口理子、音楽を安川午朗が手がける。
主人公・多部純子を演じるのは吉永小百合。女性として初めて世界最高峰を制覇した登山家としての誇りと、家族・友人との絆の間で揺れる姿を繊細に体現する。共演には佐藤浩市、天海祐希、のん、木村文乃らが名を連ね、世代を超えたキャストが集結。
「苦しい時こそ笑う」という純子の信念を軸に、阪本監督が長年描いてきた“生きることの尊厳”を再びスクリーンに刻む。山頂の向こうに見える“あなた”とは誰なのか――人生を懸けた挑戦の先にある光を描く、壮大な1作だ。
センターピース作品『TOKYOタクシー』-山田洋次監督91作目、東京を走る人生讃歌

© 2025 映画「TOKYOタクシー」製作委員会
日本映画界を代表する名匠山田洋次監督が、91本目の監督作として送り出す最新作。原作はフランス映画『パリタクシー』(2022)。時代や人々の変化を見つめ続けてきた山田監督が、舞台を現代の東京に移し、ひとりのタクシー運転手と老婦人の“一日の旅”を描く。
出演は、長年にわたり山田作品を支えてきた倍賞千恵子と、『武士の一分』(2006)以来19年ぶりの山田組参加となる木村拓哉。さらに蒼井優が共演し、人生が交わる温かなドラマが織り上げられる。
物語は、終活のために東京から葉山へ向かう老婦人を木村演じる運転手が乗せるところから始まる。道中で語られる記憶や風景が、やがて過去の痛みと赦しを浮かび上がらせていく。
人生の“終わり”を見つめながらも、そこに確かに存在する“生きる歓び”をすくい取る。半世紀以上にわたり人間の機微を描き続けてきた山田監督が、再び東京という街で「希望」を紡ぐ珠玉の一作だ。
クロージング作品『ハムネット』-クロエ・ジャオが描く“喪失の果てに生まれる芸術”

『ハムネット』より ©2025 FOCUS FEATURES LLC
映画祭の幕を閉じるのは、『ノマドランド』でアカデミー賞®を受賞したクロエ・ジャオ監督の最新作『ハムネット』。16世紀末のイングランドを舞台に、若きウィリアム・シェイクスピアとその妻アグネスの愛と別れを描く物語だ。主演は『ワイルド・ローズ』のジェシー・バックリーと、『aftersun/アフターサン』のポール・メスカル。ふたりの繊細な演技が、歴史の中に埋もれた感情を静かに掘り起こす。
家庭を守るアグネスと、ロンドンで劇作の道を歩み始めるシェイクスピア。すれ違うふたりを襲う悲劇が、やがて不朽の名作「ハムレット」を生むきっかけとなる。
フォーカス・フィーチャーズとジャオ監督が手を組み、愛と創造の関係を壮大なスケールで描き出す本作は、「失うこと」と「生み出すこと」の間にある人間の力を見つめる。静謐な映像と深い余韻を残し、映画祭のラストを飾るにふさわしい一篇となった。


作品情報
『てっぺんの向こうにあなたがいる』
監督:阪本順治
脚本:坂口理子
音楽:安川午朗
出演:吉永小百合、佐藤浩市、天海祐希、のん、木村文乃、若葉竜也、工藤阿須加、茅島みずき
2025年/日本/130分
© 2025「てっぺんの向こうにあなたがいる」製作委員会
『TOKYOタクシー』
監督・脚本:山田洋次
脚本:朝原雄三
原作:クリスチャン・カリオン(映画『パリタクシー』)
出演:倍賞千恵子、木村拓哉、蒼井優、迫田孝也、優香、中島瑠菜
2025年/日本/103分
© 2025 映画「TOKYOタクシー」製作委員会
『ハムネット』
監督・脚本:クロエ・ジャオ
脚本:マギー・オファーレル
出演:ジェシー・バックリー、ポール・メスカル、エミリー・ワトソン、ジョー・アルウィン
2025年/イギリス/126分
© 2025 FOCUS FEATURES LLC

