アダム・ドライバーとスティーヴン・ソダーバーグが、カイロ・レンを主役にした『スター・ウォーズ』映画を企画していたことが明らかになった。
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)などでカイロ・レンを演じたアダム・ドライバーが、かつてスティーヴン・ソダーバーグと共に同役を主軸としたスピンオフ映画を構想していたことが分かった。ドライバーはAPの最新インタビューで、2年にわたって『The Hunt for Ben Solo(原題)』という脚本を開発していたと明かしている。本作は“ベン・ソロ”が贖罪を求めて旅をする物語として企画され、ディズニー側に持ち込まれたものの、最終的に実現には至らなかったという。
カイロ・レンが主人公の新作『The Hunt for Ben Solo』
スティーヴン・ソダーバーグは『ローガン・ラッキー』の脚本家レベッカ・ブラントと共にストーリーの骨格を作り、スコット・Z・バーンズが脚本執筆に参加した。ドライバーは当時の経緯について次のように語っている。
「僕はずっと別の『スター・ウォーズ』をやることに興味があったんだ。2021年から別の作品をやることについて話していたよ。キャスリーン(・ケネディ)から連絡があったんだ。僕はいつもこう言っていた:『すばらしい監督とすばらしいストーリーがあれば、すぐにでも参加するよ』ってね。あのキャラクターが大好きで、演じるのも大好きだったんだ」
この発言からもわかるように、ドライバーにとってカイロ・レンというキャラクターは単なる役柄を超えた存在だった。『The Hunt for Ben Solo』は、贖罪の旅を描くことで、彼の“人間としての再生”をテーマに据えた企画だったとされる。
1980年『帝国の逆襲』を意識した“手作りのスター・ウォーズ”
ドライバーはこの未完の企画を「手作りでキャラクター重視」と表現し、1980年公開の『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』を例に挙げた。彼は同作を「『スター・ウォーズ』映画のあるべき姿の“基準”」だと語り、シリーズの原点に立ち返るようなアプローチを目指していたことを明かしている。
この発言には、シリーズの大規模なVFXや拡張された世界観ではなく、登場人物の感情や関係性に焦点を当てたいという俳優としての意志がにじむ。ドライバーが「『帝国の逆襲』を基準にしたい」と語ったのも、物語の内面性を掘り下げる方向性を示唆している。
この“キャラクター主導のスター・ウォーズ”という構想は、ソダーバーグの現実的かつミニマルな演出スタイルとも相性が良く、もし実現していればシリーズの中でも異色かつ挑戦的な作品となっていたに違いない。
ルーカスフィルムは好感触も、ディズニーが却下
スティーヴン・ソダーバーグとアダム・ドライバーは、『The Hunt for Ben Solo』をルーカスフィルムのキャスリーン・ケネディ、デイヴ・フィローニ、ケアリー・ベックに売り込んだという。ドライバーによれば、3人はその企画を「気に入ってくれた」といい、当初は前向きに進展するかに見えた。
しかし、脚本をディズニー側に提出した段階で状況は一変した。ドライバーは当時をこう振り返っている。
「脚本をルーカスフィルムに提出したんだ。彼らはそのアイデアを気に入ってくれた。僕たちの視点と、なぜそれをやるのかを完全に理解してくれたよ。それをボブ・アイガーとアラン・バーグマンに持ち込んだら、NOと言われた。彼らはベン・ソロがどうやって生きているのか理解できなかったんだ。それで終わりだった」
この発言が示すように、ディズニーの上層部はキャラクターの生存をめぐる設定や、物語の再構築に納得を示さなかったとみられる。ルーカスフィルムが企画に興味を示しながらも、最終的に却下された背景には、ブランドとしての『スター・ウォーズ』をどう続けるかという経営判断があったのかもしれない。
本作は結局、正式な開発段階に進むことなく幕を閉じた。
「これまでで最もクールな脚本のひとつ」だった幻の企画
ルーカスフィルムはこの件についてコメントを控えているが、ソダーバーグとドライバーの双方にとって、このプロジェクトは特別な意味を持っていたようだ。ソダーバーグは『AP』誌の取材に対し、「頭の中で映画を作るのは本当に楽しかったよ。ファンがそれを見られないのが残念だね」と語っている。
ドライバーもその言葉に同意し、「これまで参加した中で最もクールでヤバい脚本のひとつだった」と振り返っている
『The Hunt for Ben Solo』は、もし実現していればシリーズの中でも異彩を放つ“アフター・スカイウォーカー”の物語になっていた可能性が高い。キャラクターの贖罪と再生を軸に据え、手作りの質感を重視した構想は、従来の『スター・ウォーズ』が持つスケール感とは異なる親密さを描こうとしていた。
アダム・ドライバーは2015年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』で初めてカイロ・レンとして登場し、『最後のジェダイ』(2017)、『スカイウォーカーの夜明け』(2019)と続く3部作で、シリーズの象徴的存在としてその複雑な内面を体現してきた。彼が再びこのキャラクターに向き合おうとしていた事実は、ファンにとっても大きな驚きであり、惜しまれる企画となった。
いつかこの幻の脚本が日の目を見ることがあるのか――“もう一つのスター・ウォーズ”として、今後も語り継がれていくことになりそうだ。
