DCユニバースの新たな出発点として注目を集める『スーパーマン』が、いよいよ7月11日(金)に日本公開を迎える。メガホンを取るのは、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズで独自のヒーロー像を確立したジェームズ・ガン監督。果たして彼の手によって、伝説的ヒーローはどのような新たな魅力を獲得したのだろうか。
ジェームズ・ガンが描く新生スーパーマン
ジェームズ・ガンといえば、マーベルの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズやDCの『ザ・スーサイド・スクワッド』~『ピースメイカー』といった作品群で、アメコミヒーローの物語に人間臭さとユーモアという独自のスパイスを効かせてきた稀代のヒットメイカーだ。そんなガンが手がける新生スーパーマンは、他の誰にも真似のできない絶妙なバランス感覚によって成立しており、DCの新ユニバースにふさわしい最高のスタートを切った記念すべき1作に仕上がっている。
完成度の高いエンターテインメント
特筆すべきは、お馴染みの起源譚——クリプトン星の崩壊からカル=エルの地球降臨、超人的能力の覚醒を経てスーパーマンとクラーク・ケントの二重生活が始まり、ロイス・レインとの恋愛関係に発展するまでの一連の流れを、「観客はもう知っているはずだ」と言わんばかりに大胆にも省略した点だ。この思い切った構成によって生み出された時間的余裕を、ガン監督はストーリーの深化に注ぎ込んでいる。結果として、彼が得意とする複数ジャンルの要素を贅沢に盛り込みながらも、そのすべてにおいて高い完成度を実現することに成功している。

『スーパーマン』© &TM DC © 2025 WBEI
ガン監督らしいコメディ要素の中核を担うのが、スーパードッグのクリプトである。アニメ映画『DC がんばれ!スーパーペット』で描かれたような賢明さとは一線を画し、本作のクリプトはあくまで”犬”としての本能的な行動パターンを貫いている。その予測不可能な動きこそが、本作のユーモアを生み出す源泉となっているのだ。
一方で、レイチェル・ブロズナハンが演じるロイスとの恋愛描写は、観る者の胸を打つ仕上がりを見せている。とりわけ終盤のロイスとの場面では、過剰な台詞に頼ることなく、映像だけで壮大なロマンチシズムを表現し切っており、その情感豊かな演出には心を奪われずにはいられない。

『スーパーマン』© &TM DC © 2025 WBEI
当然ながら、アクション・ヒーロー・SF各要素における世界観の構築とスリルの演出にも一切の妥協はない。知略と実行力を兼ね備えたメインヴィランのレックス・ルーサーに対し、実際の戦闘場面では彼の配下であるエンジニアや“ボラビアのハンマー”が主要な敵役を務めるが、これらとの激突は息つく暇もないスリルに満ちている。破壊力とスピード感に満ちた戦闘シーンの数々は、まさに大スクリーンでこそ真価を発揮する迫力を備えている。
ガン流チームワークの妙味
アクションとコメディの双方において重要な役割を果たしているのが、ジャスティス・ギャングの面々である。彼らが披露する独創的な戦闘スタイルと個性的なキャラクターは、ガン監督がこれまで手がけてきた一癖も二癖もあるヒーローチームの系譜に連なるものであり、その扱いにくさこそが魅力となっている。各メンバーの持つ強烈な個性と、彼らが信じる独自の正義観が、スーパーマンやロイスの抱く正義とどのような化学反応を起こすか——この価値観の衝突と融合こそが、本作における最も興味深い見どころの一つと言えるだろう。
深化するヒューマンドラマと的確なキャスティング
そして何より、スーパーマンとレックス・ルーサーを軸に展開される重層的なヒューマンドラマこそが、本作における最大の“新生スーパーマン”らしさを体現している部分であろう。いかに強大な力を持とうとも、人間的な感情を抱く限り、その心は脆弱で複雑な悩みに支配される。精神的な弱さや孤独感は、どれほどのスーパーパワーを以ってしても解決できない——この普遍的なテーマを、力強くも孤独で、繊細な感情を内包するスーパーマン像として昇華させた手腕は、長年にわたってヒーローたちの人間的側面を掘り下げてきたガン監督ならではの達成と言える。

『スーパーマン』© &TM DC © 2025 WBEI
デヴィッド・コレンスウェットは、歴代の名優たちが築き上げてきたスーパーマン/クラーク・ケントの系譜を受け継ぐに相応しい端正な容姿を持つだけでなく、この脆弱で孤独なスーパーマン像を表現するための、哀愁と切なさを湛えた演技力をも兼ね備えている。

ニコラス・ホルト演じるレックス・ルーサー、『スーパーマン』より © &TM DC © 2025 WBEI
対する宿敵レックス・ルーサーの造形も秀逸だ。嫉妬と羨望に身を焦がし、傲慢な振る舞いで自らの虚栄心を満たそうとする承認欲求の塊——そんなレックス像を、ニコラス・ホルトが圧巻の演技力で体現してみせている。
現代社会への鋭い眼差し
さらに注目すべきは、本作が内包する鋭い政治的・社会的批評性である。SNSを介して人種間、国家間、性別間の憎悪が加速度的に拡散する分断社会において、スーパーマンという異質な存在も必然的に特異な立ち位置に置かれることになる。本作は正統派アメコミ映画としてのエンターテインメント性を保ちながら、同時に人々が憎悪をぶつけ合い、猜疑心に支配され、偏向した情報に踊らされ、利己的な権力者の思惑に翻弄され、暴力と言葉によって相互に傷つけ合う現代社会の病理を鮮やかに描写した社会派作品としても機能している。

『スーパーマン』© &TM DC © 2025 WBEI
つまり本作は、アクション、ヒーロー、SF、ファンタジー、ヒューマンドラマ、ロマンス、コメディ、そして現代のアメリカないし世界情勢を反映した社会派映画という、これ以上ないほど多彩なジャンル要素を、奇跡的なまでに調和させた稀有な作品なのである。
伝統への敬意を忘れない姿勢
しかも驚くべきことに、これほどまでに多様な要素を統合させながらも、歴代スーパーマン作品群への敬意を決して忘れることがない。細やかなタイポグラフィの選択や楽曲の使用法を通じて過去のスーパーマン映画への目配せを効かせ、どれほどジェームズ・ガン独自の色彩が注入されようとも、本作が紛れもなくスーパーマン映画であり、アメリカの象徴ともいえる伝統的スーパーヒーロー映画の正統な継承者であることを、観客に絶えず意識させる配慮が行き届いている。
ジェームズ・ガンという稀代の映像作家が、アメリカ最大のヒーローアイコンに新たな生命を吹き込んだ本作は、間違いなく今年最も重要な映画体験の一つとなるはずだ。大スクリーンでその圧倒的な完成度を確かめてほしい。『スーパーマン』は、7月11日(金)日本公開。


作品情報
タイトル:スーパーマン
原題:Superman
監督:ジェームズ・ガン
出演:デヴィッド・コレンスウェット、レイチェル・ブロズナハン、ニコラス・ホルト、マリア・ガブリエラ・デ・ファリア、サラ・サンパイオ、アンソニー・キャリガン、フランク・グリロ、スカイラー・ギソンド、ウェンデル・ピアース、ミカエラ・フーバー、ベック・ベネット、イザベラ・メルセド、ネイサン・フィリオン、エディ・ガテギ、アラン・テュディック
日米同時公開:2025年7月11日(金)
2025年|アメリカ|英語|カラー
© &TM DC © 2025 WBEI
配給:ワーナー・ブラザース映画
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