ジェームズ・ガンが、今後の作品では避けたい“お決まり”のシーンを3つ明かした。
DCスタジオの共同CEOであるジェームズ・ガンが、マーベルとDC両方の映画で繰り返されてきた象徴的なシーンの中から、「もう二度と観る必要はない」と考える3つの場面を語った。彼は現在、新たなDCユニバースの幕開けとなる映画『スーパーマン』の公開を控えており、これまでにもスーパーヒーロー映画に数々の新風を吹き込んできた人物でもある。今回の発言は、長年にわたり繰り返されてきた“定番演出”に対する問題提起とも受け取れる内容だ。
スーパーヒーロー映画の“定番”に対する疑問
ガンが語った「もう観たくないシーン」は、いずれもスーパーヒーローの起源や成り立ちを描く場面である。どれもこれまで数え切れないほど描写されてきたものばかりで、ファンの多くはすでに背景を熟知している。ガン自身も、“何度も繰り返される定番の物語”が、時に物語全体の新鮮さを損なうと考えているようだ。
彼の視点は、現在制作が進行中の『スーパーマン』にも反映されている。これは単なる演出の変化ではなく、観客がすでに共有している知識を前提に、新しい物語の入り口を模索する姿勢とも言える。
語り尽くされた“バットマンの原点”-両親の死
ジェームズ・ガンがまず挙げたのは、裏路地でバットマンの両親が命を落とす場面である。これはバットマンの誕生を語るうえで欠かせない要素とされ、過去数十年の映像作品で繰り返し描かれてきた。とくに象徴的なのが、銃声とともに母親の真珠のネックレスがはじけ飛ぶ演出であり、コミックや映画、アニメを問わず定番の演出として定着している。
実写映画では、1989年のティム・バートン版『バットマン』を皮切りに、2005年の『バットマン ビギンズ』(監督:クリストファー・ノーラン)ではフラッシュバック形式で、2016年の『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(監督:ザック・スナイダー)ではスローモーションで再現された。この他にもアニメ作品を含めて数多くのバリエーションが存在し、ファンはブルース・ウェインがヒーローとして目覚める動機をすでに十分理解しているといえる。
ガンはこのような繰り返しの末に、「今さら語り直す必要はない」と判断しているのだろう。現在開発中の新作『The Brave and the Bold』では、ブルース本人ではなく、その息子であるダミアン・ウェインに焦点が当てられる予定である。これにより、あの“裏路地の悲劇”に頼ることなく、スーパーヒーローとしてのバットマンの新たな側面を描くことが可能となる。
スパイダーマンと放射能グモの因縁にも終止符
続いてジェームズ・ガンが取り上げたのは、スパイダーマンの象徴的なオリジンシーンである「放射能グモに噛まれる瞬間」だ。マーベルでも屈指の人気を誇るヒーローであるスパイダーマンは、その誕生の過程が20世紀から現在に至るまで何度も映像化されてきた。
2002年のサム・ライミ版『スパイダーマン』(主演:トビー・マグワイア)では、研究施設で遺伝子操作されたクモに噛まれるという演出が広く知られることとなった。その後、2012年の『アメイジング・スパイダーマン』(主演:アンドリュー・ガーフィールド)でも同様の描写がなされ、改めて観客にオリジンが再提示された。さらに、2018年のアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』では、主人公マイルズ・モラレスがコミカルなタッチでクモに噛まれる場面が描かれている。
しかし、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)ではこの流れが変わった。2016年の『キャプテン・アメリカ:シビル・ウォー』に登場したトム・ホランド版のスパイダーマンでは、オリジンを詳細に描かず、「6か月前に能力を得た」と簡潔に語るのみで導入されている。これは観客がすでにスパイダーマンの起源を知っていることを前提とした演出であり、ガンの考え方とも共通している。
ガンは、こうした過去の反復を繰り返すよりも、新たな切り口でキャラクターを描くことに重点を置く姿勢を明確にしていると言える。
“赤ちゃんカル=エル”のロケット描写ももう十分
ジェームズ・ガンが「もう観たくない」と語った最後のシーンは、スーパーマンのオリジンとして知られる「赤ん坊のカル=エルがロケットでクリプトン星を脱出する場面」である。1938年に生まれたスーパーヒーローの草分け的存在であるスーパーマンは、その誕生と地球への到来の物語が実写・アニメを問わず幾度も語られてきた。
近年では、アニメシリーズ『My Adventures With Superman』でその描写が更新されており、地球に墜落する宇宙船がドラマの発端として登場した。また、2013年の実写映画『マン・オブ・スティール』では、クリプトンの崩壊とともに、両親が幼いカル=エルを地球へ送り出すシーンが壮大な映像で描かれた。こうした演出は時代や媒体ごとに表現を変えてきたが、本質的なストーリーラインは大きく変わっていない。
新たにガンが手がける『スーパーマン』では、このおなじみのオリジン描写をあえて回避し、主人公クラーク・ケントがすでに記者として働き、スーパーヒーローとしても活動している時点から物語が始まることが発表されている。観客は登場人物たちの会話や背景から過去の出来事をうかがい知ることになるが、物語自体はすでに動き出している状態からスタートする。
このアプローチによって、従来の“語り直し”に時間を割くことなく、物語は冒頭からダイナミックに展開していくことが期待されている。ガンの選択は、観客の理解度や時代の変化を踏まえた上での、現代的なスーパーヒーロー映画のあり方を示している。



