ルーマニアの片田舎を舞台に、一人の警察官が直面する村の闇を描いた異色のサスペンス映画『おんどりの鳴く前に』が1月24日(金)より日本公開となる。小さな村特有の空気感と、時折垣間見える人間くさいユーモアが絶妙なバランスで融合した1作だ。
『おんどりの鳴く前に』予告編
ルーマニアの村に隠された闇――『おんどりの鳴く前に』あらすじ

© 2022 Papillon Film / Tangaj Production / Screening Emotions / Avanpost Production
ルーマニア・モルドヴァ地方の静かな村の中年警察官イリエ。野心を失い鬱屈とした日々を送っている彼の願いは、果樹園を営みながら、ひっそりと第2の人生を送ること。しかし平和なはずの村で惨殺死体が見つかったことをきっかけに、イリエは美しい村の闇を次々と目の当たりにすることになる。正義感を手放した警察官がたどり着く、衝撃の結末とは―。
美しい村に潜む閉塞感:風景と人間ドラマのコントラスト

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色鮮やかな風景が広がり、家族の何気ない会話が続く。バックグラウンドで流れるカントリー音楽も相まって、まるでノスタルジックな青春ドラマのオープニングを見ているかのような錯覚すら覚える序盤。
だが、その牧歌的な印象は長くは続かない。広大な自然に囲まれた村の景色とは対照的なコミュニティの息苦しい閉塞感が、次第に登場人物たちを押しつぶすような重圧となって現れてくる。やがて、陽光に満ちた画面の隅々に潜む不穏な気配を見逃せなくなっていく。
停滞する村の生活と、揺らぐ主人公の正義

© 2022 Papillon Film / Tangaj Production / Screening Emotions / Avanpost Production
外の世界から切り離されたような小さな村。そこに住む人々からは、いつしか夢や目的が失われ、日々の営みがスローモーションのように滞っているように見える。その混濁した空気の中で生きる主人公イリエもまた、確かな良心と漠然とした理想を胸に秘めながら、自らの非力さに絡め取られるように優柔不断な日々を送る。
映像は彼の内面を巧みに映し取る。窓ガラスに映る制服姿は不確かにぼやけ、まるで彼の揺らぐ心を表すかのよう。だが、物語の重要な転換点で見せる彼の姿は鮮明だ。そんな繊細な映像表現の積み重ねが、この作品の大きな魅力となっている。

© 2022 Papillon Film / Tangaj Production / Screening Emotions / Avanpost Production
主演のユリアン・ポステルニクは、そんなイリエという役柄を体現するハマり役。優柔不断な態度や歯切れの悪い物言いは時に観客の苛立ちや焦りを誘うが、必死になると思わず漏れる裏返った声や、非力ながらも正しさを求めて右往左往する不器用さはどこか愛おしい。そうした細やかな描写の積み重ねによって、イリエは観る者の共感と愛着を引き出す魅力的な人物として確かな存在感を放っていた。
粗削りで不器用な村民たちに苦笑

© 2022 Papillon Film / Tangaj Production / Screening Emotions / Avanpost Production
終盤、物語は思いがけない展開を見せる。一見すると粗削りで素朴な行動の数々が、しかしこの村のコミュニティの洗練されておらず物事に不慣れな本質を浮き彫りにしていく。たとえば「なぜその距離で直接攻撃ではなく投げつける…?」と思わずツッコミを入れたくなるシーンなど、登場人物たちの不器用な判断・行動は、思わず何度も笑いを誘われた。

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静かに、しかしじわりと心を掴んでいく『おんどりの鳴く前に』の原題は「OAMENI DE TREABĂ」(英題:MEN OF DEEDS)。意味は「善良な人々」であり、コミュニティ波風を起こさないことを“善行”として闇に目を瞑る人々への見事な皮肉になっている。のどかな村の風景と人々の生活を丁寧に描きながら、ギリギリ緩慢すぎない絶妙なテンポ感でそこに潜む闇をじわじわと浮かび上がらせていく手腕は見事の一言。観終わった後、不思議と心に残り続けるなんともいえない余韻こそが、本作最大の魅力かもしれない。
『おんどりの鳴く前に』は1月24日(金)より日本公開。
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作品情報
原題:OAMENI DE TREABĂ
監督:パウル・ネゴエスク
出演:ユリアン・ポステルニク、ヴァシレ・ムラル、アンゲル・ダミアン、クリナ・セムチウク 他
ルーマニア・ブルガリア|2022年|106分|カラー|ルーマニア語|スコープ|5.1ch|PG12|日本語字幕:近田レイラ|字幕監修:篁園誓子
© 2022 Papillon Film / Tangaj Production / Screening Emotions / Avanpost Production
配給・宣伝:カルチュアルライフ
後援:在日ルーマニア大使館・駐日ブルガリア共和国大使館
公式サイト:https://culturallife.co.jp/ondori-movie
X:@ondori_movie
Instagram:@culturallife_filminfo



