映画『モンスターズ 悪魔の復讐』(2018)を紹介&解説。
映画『モンスターズ 悪魔の復讐』概要
映画『モンスターズ 悪魔の復讐』は、クレイグ・ウィリアム・マクニール監督が、1892年にアメリカ・マサチューセッツ州で起きたリジー・ボーデン事件を題材に描く歴史サスペンスドラマ。厳格な父親のもとで抑圧された生活を送るリジー・ボーデンと、ボーデン家に雇われた若い女中ブリジット・サリヴァンの関係を軸に、一家を襲った殺人事件へ至るまでを独自の解釈で描く。
リジー役をクロエ・セヴィニー、ブリジット役をクリステン・スチュワートが演じる。
作品情報
| 日本版タイトル | 『モンスターズ 悪魔の復讐』 |
|---|---|
| 原題 | Lizzie |
| 製作年 | 2018年 |
| 本国公開日 | 2018年9月14日 |
| 日本公開日 | 2019年7月13日 |
| ジャンル | サスペンス/歴史/ドラマ |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 105分 |
| 監督 | クレイグ・ウィリアム・マクニール |
|---|---|
| 脚本 | ブライス・カス |
| 製作 | ナオミ・デスプレス/リズ・デストロ/クロエ・セヴィニー |
| 製作総指揮 | ロクサーヌ・ファイ・アンダーソン/エリザベス・スティルウェル/エドワード・J・アンダーソン/キャロリン・ハント/ブライス・カス/マイルズ・ネステル/リサ・ウィルソン |
| 撮影 | ノア・グリーンバーグ |
| 編集 | アビー・ジュトコウィッツ |
| 作曲 | ジェフ・ルッソ |
| 出演 | クロエ・セヴィニー/クリステン・スチュワート/ジェイミー・シェリダン/フィオナ・ショウ/キム・ディケンズ/デニス・オヘア/ジェフ・ペリー |
| 製作 | Powder Hound Pictures/The Solution Entertainment Group/Destro Films/Artina Films |
| 配給 | Roadside Attractions/Saban Films(米国)/AMGエンタテインメント(日本) |
あらすじ
1892年、アメリカ・マサチューセッツ州。裕福なボーデン家で暮らすリジーは、厳格で支配的な父アンドリューのもと、息苦しい日々を送っていた。そこへ若い女中ブリジットがやって来る。抑圧された境遇を抱えるふたりは次第に心を通わせ、秘密の関係を築いていく。しかし一家の緊張は高まり続け、やがてアンドリューと妻アビーが斧で惨殺される事件が発生。リジーが殺人の容疑者として疑われることになる。
主な登場人物(キャスト)
リジー・ボーデン(クロエ・セヴィニー):ボーデン家の次女。32歳の未婚女性で、裕福でありながら支配的な父のもとで自由を制限された生活を送っている。家にやって来たブリジットと親密な関係を築いていく。
ブリジット・サリヴァン/マギー(クリステン・スチュワート):ボーデン家に雇われた若い女中。リジーと心を通わせるようになり、やがてふたりだけの秘密を共有する存在となる。
アンドリュー・ボーデン(ジェイミー・シェリダン):リジーの父。裕福な実業家だが、家庭内では厳格かつ支配的に振る舞い、リジーやブリジットを強く抑圧する。
アビー・ボーデン(フィオナ・ショウ):アンドリューの妻で、リジーとエマの継母。アンドリューとともに暮らすボーデン家の一員。
エマ・ボーデン(キム・ディケンズ):リジーの姉。リジーと同じくボーデン家で父アンドリューの強い影響下に置かれている。
ジョン・モース(デニス・オヘア):ボーデン家に出入りする親族。事件前後の一家を取り巻く人物のひとり。
作品の魅力解説・レビュー
クロエ・セヴィニー&クリステン・スチュワートの抑制された演技
最大の見どころは、リジーを演じるクロエ・セヴィニーと、ブリジットを演じるクリステン・スチュワートによる二人芝居だろう。感情を露骨に爆発させるのではなく、視線や表情、沈黙によって人物の内側に蓄積していくストレスを表現している。
実在の殺人事件を題材にしながらも、犯人を過度に怪物化して狂気を強調する方向には進まず、閉塞した環境の中で追い詰められていく女性たちとして描こうとするアプローチが特徴的。セヴィニーとスチュワートの抑制を効かせながらも身体を張った演技には、一見の価値がある。
立派な屋敷を“逃げ場のない空間”として描く
舞台となるボーデン家は裕福な家庭の立派な屋敷でありながら、映画を観ていると決して快適な場所には感じられない。父親の支配や家庭内の緊張が充満し、登場人物たちにとって逃げ場のない閉鎖空間のように映し出されている。
広いはずの家の中にいるほど窮屈さが増していくような空気感は、本作のサスペンスを支える大きな要素。凄惨な事件そのものを派手に見せるだけでなく、「なぜここまで追い詰められていったのか」を屋敷の空気そのものから感じさせる作品になっている。
静かな演出ゆえの停滞感も
一方で、全編を通して抑制されたトーンを貫いているため、物語のテンポはかなりゆったりしている。事件へ向かう不穏さを少しずつ積み重ねていく構成ではあるものの、同じような緊張感が長時間続き、大きく状況が動かない時間も少なくない。
静かな心理劇としての空気感に乗れるかどうかで、評価が分かれやすい作品だろう。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
