『クリシャ』とはどんな映画?あらすじ・キャスト・魅力まとめ

映画『クリシャ』(2015)を紹介&解説。


映画『クリシャ』概要

映画『クリシャ』は、トレイ・エドワード・シュルツ監督(『イット・カムズ・アット・ナイト』『WAVES/ウェイブス』)による長編デビュー作。長く疎遠になっていた家族のもとへ戻った女性が、感謝祭の一日を通して過去の傷や依存症と向き合う姿を描く家族ドラマである。監督自身の同名短編映画を長編化した作品で、実際の親族を多数キャストに起用。2015年のSXSW映画祭では、長編劇映画部門の審査員大賞と観客賞を受賞した。

作品情報

日本版タイトル 『クリシャ』
原題 Krisha
製作年 2015年
本国公開日 2016年3月18日
日本公開日 2021年4月17日
ジャンル ドラマスリラー
製作国 アメリカ
原作 トレイ・エドワード・シュルツ監督の同名短編映画
上映時間 83分
監督・脚本 トレイ・エドワード・シュルツ
製作 ジャスティン・R・チャン/トレイ・エドワード・シュルツ/ウィルソン・スミス/チェイス・ジョリエット
製作総指揮 ジョナサン・R・チャン/JP・カステル
撮影 ドリュー・ダニエルズ
編集 トレイ・エドワード・シュルツ
作曲 ブライアン・マコーマー
出演 クリシャ・フェアチャイルド/ロビン・フェアチャイルド/ビル・ワイズ/トレイ・エドワード・シュルツ/クリス・ダベック/オリヴィア・グレース・アップルゲイト
製作 Hoody Boy Productions
配給 A24(アメリカ)/グッチーズ・フリースクール(日本)

あらすじ

長年にわたって疎遠になっていた家族と関係を修復するため、クリシャは感謝祭の日に姉妹の家を訪れる。集まった親族から温かく迎えられる一方、その態度には彼女への警戒心もにじんでいた。

過去の過ちを悔いるクリシャは、感謝祭の七面鳥を料理し、自分が変わったことを証明しようとする。しかし、かつて置き去りにした息子トレイとの間には深い溝が残されていた。家族の何気ない会話や視線によって古い傷が呼び起こされるにつれ、クリシャの精神は次第に不安定になっていく。

主な登場人物(キャスト)

クリシャ(クリシャ・フェアチャイルド):長年疎遠になっていた家族のもとへ戻ってきた女性。依存症や精神的な不安定さを抱えながら、感謝祭の料理を成功させ、自分が変わったことを家族に証明しようとする。

ロビン(ロビン・フェアチャイルド):クリシャの姉妹。クリシャに再び家族と過ごす機会を与え、感謝祭を穏やかに終わらせようと努めるが、過去に傷つけられた記憶も抱えている。

トレイ(トレイ・エドワード・シュルツ):クリシャの息子。自分を置き去りにした母親に対して強い怒りと不信感を抱いており、彼女の謝罪や歩み寄りを簡単には受け入れられない。

ドイル(ビル・ワイズ):クリシャの過去に厳しい目を向ける家族の一員。周囲が表面的な平穏を保とうとする中、クリシャが家族に与えた傷を容赦なく指摘する。

作品の魅力解説

『クリシャ』が描くのは、家族の中では愛と憎しみが同時に存在し得るという厄介な現実である。クリシャは過去に家族を傷つけた当事者である一方、依存症や孤独に苦しむ人間でもある。家族も彼女を愛しているからこそ簡単には切り捨てられず、それでも再び傷つけられることへの恐怖や、長年蓄積してきた怒りを消すことができない。

誰かひとりを完全な加害者や被害者として整理しない点も、本作の重要な特徴となっている。問題を抱えた本人には立ち直りたいという意志があるが、その意志だけで失われた信頼が戻るわけではない。迎える家族にも彼女を受け入れる義務はなく、かといって愛情を完全に捨て去ることも難しい。正解が見つからず、仮に正解らしきものが存在しても簡単にはたどり着けないという人生の苦しさが、感謝祭の一日に凝縮されている。

演出面では、家族ドラマを心理スリラーやホラーのような緊張感で包み込む手法が際立つ。クリシャの精神状態に合わせて画角や撮影スタイル、音楽の調子が変化し、にぎやかな家族の会話さえも彼女を追い詰める不協和音へと変わっていく。観客は出来事を外側から眺めるのではなく、崩れていくクリシャの主観へ引き込まれていく。

さらに、クリシャ役のクリシャ・フェアチャイルドはシュルツ監督の実の叔母であり、ロビン役には監督の母、トレイ役には監督自身が起用されている。実際の親族が一つの家に集まって演じたことで、会話や視線には通常のフィクションでは生み出しにくい生々しさが宿った。愛しているのに憎くて仕方がない、憎んでいても愛を捨てられない――そんな家族という関係の逃げ場のなさを、痛切なまでに突きつける作品である。

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