『きさらぎ駅』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

映画『きさらぎ駅』(2022)を紹介&解説。


映画『きさらぎ駅』概要

映画『きさらぎ駅』は、2004年にインターネット掲示板「2ちゃんねる」へ実況形式で投稿された、同名の都市伝説を映画化した異世界ホラー。民俗学を学ぶ女子大学生が、現実には存在しない駅へ迷い込んだという投稿者の正体を追い、その体験を自ら確かめようとする姿を描く。

監督は、同じくインターネット発の都市伝説を扱った『真・鮫島事件』の永江二朗。FPSゲームを思わせる1人称視点の長回しを取り入れ、怪異の世界を当事者の目線から追体験させる。恒松祐里が本作で映画初主演を務め、佐藤江梨子本田望結莉子らが共演する。

作品情報

日本版タイトル 『きさらぎ駅』
英題 Kisaragi Station
製作年 2022年
日本公開日 2022年6月3日
ジャンル 異世界ホラーミステリー
製作国 日本
原案 インターネット掲示板「2ちゃんねる」に投稿された都市伝説「きさらぎ駅」
上映時間 82分
次作 きさらぎ駅 Re:』(2025)
監督 永江二朗
脚本 宮本武史
製作 浅田靖浩/中島隆介/加瀬林亮/川上純平
プロデューサー 上野境介/伊藤修嗣
撮影・照明 早坂伸
録音・整音 指宿隆次
編集・VFX 遊佐和寿
主題歌 弌誠「通リ魔」
出演 恒松祐里/本田望結/莉子/寺坂頼我/木原瑠生/芹澤興人/佐藤江梨子
制作プロダクション キャンター
製作 「きさらぎ駅」製作委員会
配給 イオンエンターテイメント/ナカチカ

あらすじ

民俗学を学ぶ大学生・堤春奈は、現代版の神隠しとして語り継がれている都市伝説「きさらぎ駅」を卒業論文の題材に選ぶ。

2004年、「はすみ」と名乗る女性が、電車を降りた先で現実には存在しない「きさらぎ駅」へ迷い込んだ体験をインターネット掲示板へリアルタイムで投稿。しかし、彼女の書き込みは途中で途絶え、その後の消息は分からないままとなっていた。

調査を続けた春奈は、「はすみ」の正体と思われる元高校教師・葉山純子にたどり着く。純子は2004年に失踪し、7年後に突然帰還した女性だった。春奈の取材を受けた純子は、きさらぎ駅で体験した不可解な出来事を語り始める。

主な登場人物(キャスト)

堤春奈(恒松祐里):大学で民俗学を学んでいる女子大学生。卒業論文の題材として都市伝説「きさらぎ駅」を調査し、投稿者「はすみ」の正体と思われる葉山純子を探し当てる。好奇心と行動力に富み、純子の体験を聞くだけでは満足せず、伝説の核心へ踏み込んでいく。

葉山純子(佐藤江梨子):「きさらぎ駅」へ迷い込んだとされる元高校教師。2004年に失踪し、7年後に帰還した。春奈の取材に対し、自身が異世界で目撃した出来事と、そこに取り残してしまった人々について語る。

宮崎明日香(本田望結):純子がきさらぎ駅で出会う女子高校生。強い正義感を持ち、危険な状況でも他人を見捨てることができない。純子の体験と物語の行方を左右する重要人物。

松井美紀(莉子):きさらぎ駅へ迷い込んだ若者のひとり。派手な外見のギャルだが仲間思いで、大輔や翔太と行動をともにしている。

飯田大輔(寺坂頼我):美紀や翔太とともに異世界へ迷い込む、おとなしく気弱な青年。攻撃的な翔太に振り回されながら、きさらぎ駅からの脱出を目指す。

岸翔太(木原瑠生):ナイフを所持している粗暴な青年。異常事態に直面して苛立ちを募らせ、周囲に対して攻撃的な態度を取る。

花村貴史(芹澤興人):酒に酔った状態できさらぎ駅へ迷い込んだ会社員。不可解な状況に置かれても危機感が薄く、ほかの人物とは異なる反応を見せる。

作品の魅力解説

“特定の人しか知らない場所”が刺激するホラーロマン

気づかないうちに異世界へ迷い込み、元の世界へなかなか戻れなくなるという筋立て自体は、決して珍しいものではない。それでも本作が一旦は観る者を引きつけるのは、舞台が有名な都市伝説として長年語り継がれてきた「きさらぎ駅」だからだ。

普段利用している電車が、ある瞬間から見知らぬ場所へ向かい始める。駅名も所在地も分からず、そこへ行った者の話しか手がかりがない。そんな“存在を知る者だけが共有できる秘密の場所”という設定には、単なる恐怖だけではない、異界への好奇心をかき立てる独特のホラーロマンがある。

掲示板の都市伝説を1本の物語へ再構成

元となった都市伝説は、投稿者が自らの体験を短い文章で報告していく実況形式だった。本作では、その限られた情報を葉山純子の回想として映像化し、さらに都市伝説を研究する堤春奈の物語を加えることで、投稿の前後や登場人物同士の関係を膨らませている。

前半の体験談と、その情報を得た後に展開する後半では、同じ異世界に対する見え方も変化する。詳しく知るとネタバレになるが、単に元ネタを映像で再現するだけではなく、既に得た情報を使ってホラーゲームを攻略し直すような構成を採用した点は、本作ならではの工夫といえる。

FPSゲームを意識した1人称視点

純子の体験を描く場面では、登場人物自身の目を通して怪異を見るような1人称視点が多用される。永江二朗監督によれば、該当場面ではカメラを装着した演者が芝居をしながら撮影し、基本的にワンカットで進めるFPS型の手法が採用されたという。

そのため、観客は画面の外から人物を眺めるのではなく、暗いホームや線路沿いを自分で進んでいるような感覚を味わうことになる。物音がした方向へ視線を向けたり、突然現れる怪異から逃げたりする映像は、映画というより1人称視点のホラーゲームをプレイしているような体感に近い。

映像や演技の粗さは、明確な弱点でもある

一方で、2020年代の劇場公開映画として見ると、映像面の完成度はかなり厳しい。CGによる怪異や流血表現は安っぽさが目立ち、緊迫した場面でも恐怖より先に作り物らしさが伝わってしまう。1人称視点によって撮影現場の距離感や動きが露出しやすいため、俳優の演技や台詞回しまで普段以上に雑に見える場面もある。

特に序盤の異世界パートは、出来の悪いホラーゲームのイベント映像を延々と見せられているような感覚にもなりやすい。臨場感を狙った撮影手法そのものは理解できるが、CG、演技、画面構成が十分に噛み合っているとは言い難く、技術的な完成度については擁護しにくい。

“雑な感じ”まで含めて楽しむB級ホラー

しかし、その粗さが必ずしも退屈さだけにつながっているわけではない。大仰なCG、極端な性格の登場人物、唐突な怪異、ホラーゲームのような展開が次々と押し寄せるため、作品全体には妙な勢いがある。

洗練された恐怖映画を期待すると物足りないが、インターネットで拡散された都市伝説を、低予算感の強い映像で強引に映画へ仕立てた“雑な味わい”まで含めれば、どこか憎めないB級ホラーとして楽しめる余地はある。怖さよりも奇妙さや可笑しさが勝る瞬間も多く、それが結果的に本作の個性となっている。

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