映画『コカイン・ベア』(2023)を紹介&解説。
映画『コカイン・ベア』概要
映画『コカイン・ベア』は、1985年にアメリカで実際に起きた“コカインを食べたクマ”の事件に着想を得て、コカインで凶暴化したクマと森に集まった人々の大混乱を描くパニック・ホラー・コメディ。奇抜な実話ベースの設定を、ブラックユーモアと過激なゴア描写、テンポのよい群像劇で娯楽映画に仕立てている。監督はエリザベス・バンクス、出演はケリー・ラッセル、オシェア・ジャクソン・Jr、オールデン・エアエンライク、レイ・リオッタら。
作品情報
日本版タイトル:『コカイン・ベア』
原題:Cocaine Bear
製作年:2023年
本国公開日:2023年2月24日
日本公開日:2023年9月29日
ジャンル:パニック/ホラー/コメディ
製作国:アメリカ
原作:無(実話に着想)
上映時間:95分
監督:エリザベス・バンクス
脚本:ジミー・ウォーデン
製作:フィル・ロード/クリストファー・ミラー/アディッティア・スード/エリザベス・バンクス/マックス・ハンデルマン/ブライアン・ダッフィールド
製作総指揮:ロビン・フィッシェラ/アリソン・スモール/ニッキ・バイダ
撮影:ジョン・ガレセリアン
編集:ジョエル・ネグロン
作曲:マーク・マザースボウ
出演:ケリー・ラッセル/オシェア・ジャクソン・Jr/オールデン・エアエンライク/イザイア・ウィットロック・Jr./レイ・リオッタ/マーゴ・マーティンデイル/ジェシー・タイラー・ファーガソン/ブルックリン・プリンス/クリスチャン・コンベリー/マシュー・リス
製作:ユニバーサル・ピクチャーズ/ブラウンストーン・プロダクションズ/ロード・ミラー
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ(アメリカ)/パルコ(日本)
あらすじ
1985年、アメリカ。麻薬の運び屋アンドリュー・カーター・ソーントン2世は、セスナ機から大量のコカインをジョージア州の森へ投下するが、自身も事故で命を落としてしまう。森に散らばったコカインを食べたのは、体重200キロを超えるクロクマだった。
一方、麻薬王シドは行方不明になったコカインを回収するため、ダヴィードとエディを森へ送り込む。同じ頃、看護師サリの娘ディーディーは友人ヘンリーとともに森へ入り、レンジャーや警察、観光客たちもそれぞれの目的で森に集まってくる。やがて彼らは、コカインで異常な興奮状態となったクマ“コカイン・ベア”と遭遇し、逃げ場のない大混乱へ巻き込まれていく。
主な登場人物(キャスト)
サリ(ケリー・ラッセル):看護師で、ディーディーの母親。無断で森へ入った娘を探すため、危険を承知で森の中へ向かう。
ダヴィード(オシェア・ジャクソン・Jr.):麻薬王シドの命令で、森に投下されたコカインを回収しに向かうフィクサー。エディとともに森へ入り、想定外の脅威に直面する。
エディ(オールデン・エアエンライク):シドの息子。妻を亡くした悲しみを抱えており、ダヴィードとともにコカイン回収へ向かうが、荒唐無稽な事態に巻き込まれていく。
シド(レイ・リオッタ):麻薬組織を率いるボス。失われたコカインを取り戻すため、部下たちをジョージア州の森へ送り込む。
ディーディー(ブルックリン・プリンス):サリの娘。絵を描くため、友人ヘンリーと学校を抜け出して森へ向かい、コカインを食べたクマと遭遇する。
ヘンリー(クリスチャン・コンベリー):ディーディーの友人。彼女と一緒に森へ入り、思いもよらない惨劇に巻き込まれる。
リズ(マーゴ・マーティンデイル):森で働くレンジャー。管理官ピーターへの好意を抱きつつ、クマが引き起こす異常事態の渦中に放り込まれる。
ボブ(イザイア・ウィットロック・Jr.):麻薬事件を追う刑事。
ピーター(ジェシー・タイラー・ファーガソン):森に関わる管理官。
アンドリュー・カーター・ソーントン2世(マシュー・リス):コカインを運んでいた麻薬の運び屋。物語の発端となる大量のコカイン投下に関わる人物。
作品の魅力解説
『コカイン・ベア』最大の魅力は、まず“コカインを食べたクマが暴れる”という一言で伝わる強烈なコンセプトにある。実際の事件に着想を得ながらも、本作は史実の再現ドラマではなく、ありえない方向へ振り切ったジャンル映画として作られている。現実では悲劇的な珍事件だった題材を、ブラックユーモアあふれるパニック・エンターテインメントへ変換している点がユニークだ。
また、クマの襲撃だけで押し切るのではなく、麻薬組織、母娘、子どもたち、警察、レンジャー、観光客といった複数の人物たちが森で交差していく群像劇として展開するのも見どころ。誰が次にクマと遭遇するのか、どの人物が生き残るのかというスリルが、コミカルな会話や皮肉な人間模様とともに描かれていく。
さらに、監督エリザベス・バンクスは、B級映画的なバカバカしさを隠さず、むしろその勢いを真正面から楽しませる演出を徹底している。過激なゴア描写、予測不能な死に方、妙に人間くさいキャラクターたちが入り混じり、ホラーでありながら笑える、コメディでありながらしっかり痛いという独特のバランスを生み出している。
そして本作は、レイ・リオッタの遺作のひとつとしても印象深い作品だ。シリアスな犯罪映画のイメージも強い名優が、荒唐無稽な設定の中で麻薬王シドを演じることで、作品全体に妙な説得力と迫力を与えている。ケリー・ラッセル、オシェア・ジャクソン・Jr.、オールデン・エアエンライクらのアンサンブルも、突飛な物語を最後まで勢いよく走らせる大きな魅力となっている。
