第39回東京国際映画祭が閉幕。『妹兄とマンホールの蓋』がグランプリ、成田凌が最優秀男優賞を受賞した。
2026年10月26日に開幕した第39回東京国際映画祭が、11月4日に閉幕した。同日、東京・有楽町のヒューリックホール東京でクロージングセレモニーが開催され、各部門の受賞作品・受賞者が発表された。
最高賞となる東京グランプリ/東京都知事賞に選ばれたのは、ミルチョ・マンチェフスキ監督の『妹兄とマンホールの蓋』。日本映画では、『男ともだち』に出演した成田凌が最優秀男優賞を受賞した。
また、シンガポール製作のアニメーション映画『魔法の星図』が審査員特別賞に輝き、コンペティション部門におけるアニメーション作品として初の受賞を果たした。
東京国際映画祭の受賞結果、最高賞は『妹兄とマンホールの蓋』
東京グランプリ/東京都知事賞を受賞した『妹兄とマンホールの蓋』は、北マケドニア、ブルガリア、セルビア、アルバニア、イタリア、イギリスの6カ国による共同製作映画だ。
監督を務めたのは、『ビフォア・ザ・レイン』などで知られるミルチョ・マンチェフスキ。今回の受賞によって、第39回東京国際映画祭の頂点に立った。
コンペティション部門の審査委員長を務めたロルフ・デ・ヒーア監督は、本作について「ユーモアと悲劇、そしてドラマを見事に融合させていること」を評価。登場人物たちに向けられた深い人間味や温かなまなざしにも言及し、複雑でありながら整合性があり、感動と遊び心を兼ね備えた作品だと評した。
マンチェフスキ監督は授賞式に動画メッセージを寄せ、「『妹兄とマンホールの蓋』を愛してくれて嬉しいです。東京国際映画祭は、世界で一番好きな映画祭のひとつです」と喜びを表明した。
さらに、今回の受賞を「実現しないかもしれなかった風変わりな映画へのささやかな名誉回復」と表現。作品について、変わった家族や持てる者と持たざる者を描きながらも、メッセージではなく人間そのものに焦点を当てた映画だと説明した。
デ・ヒーア審査委員長は映画祭全体の総評でも、コンペティション作品の多様性を強調。それぞれの作品の個性が大きく異なり、単純な比較が難しい審査だったと振り返った。
そのうえで、審査委員同士が互いの専門知識を生かして議論を重ね、すべての賞を審査委員全員で選ぶことができたと語った。
成田凌が最優秀男優賞! 『魔法の星図』はアニメ作品初の審査員特別賞
日本映画からは、三島有紀子監督の『男ともだち』で主演を務めた成田凌が最優秀男優賞を受賞した。
審査員の渡辺真起子は、成田の演技について、主人公の痛みを静かな友情をもって見つめ続ける役柄を、絶妙な距離感と身体性によって表現したと評価した。
授賞式には成田に代わって三島監督が登壇。「この光景を成田凌さんに見せたいですね」と語り、受賞を祝福した。
三島監督は成田について、「成田さんは沈黙の中に、そして、身体性の中に、そして、言葉の裏に、感情を宿すことができる俳優さんです」とコメントしている。
さらに、撮影現場で雪が必要だった日に、成田が空へ向かって「雪、降れ」と呼びかけると実際に雪が降ったというエピソードも披露。映画や撮影現場を豊かにする力を持った俳優だとたたえた。
一方、審査員特別賞にはシンガポールのアニメーション映画『魔法の星図』が選出された。
同作は、東京国際映画祭コンペティション部門に選出された初のアニメーション作品であり、今回の受賞で同部門のアニメーション作品として初めて賞を獲得することとなった。
実写作品が中心となってきたコンペティション部門でアニメーションが評価されたことは、今回の映画祭を象徴するトピックのひとつといえるだろう。
そのほか、最優秀監督賞には『ふたつの自由』のリサンドロ・アロンソ監督、最優秀女優賞には『ふたりを結ぶ夜』のフー・リンが選出された。
最優秀芸術貢献賞は、映像表現が評価された『今日が終わるまで』が受賞。観客賞にはベルギー、オランダ、ドイツの合作映画『ヘイゼル85』が輝いた。
第39回東京国際映画祭の受賞作品・受賞者一覧
第39回東京国際映画祭では、コンペティション部門に加え、Nippon Cinema Now、アジアの未来、アジア学生映画コンファレンスなどの各部門でも受賞作品が発表された。
各賞の結果は以下のとおり。
コンペティション部門
| 賞 | 受賞作品・受賞者 |
|---|---|
| 東京グランプリ/東京都知事賞 | 『妹兄とマンホールの蓋』 監督:ミルチョ・マンチェフスキ |
| 審査員特別賞 | 『魔法の星図』 |
| 最優秀監督賞 | リサンドロ・アロンソ 『ふたつの自由』 |
| 最優秀女優賞 | フー・リン 『ふたりを結ぶ夜』 |
| 最優秀男優賞 | 成田凌 『男ともだち』 |
| 最優秀芸術貢献賞 | 『今日が終わるまで』 |
| 観客賞 | 『ヘイゼル85』 |
Nippon Cinema Now部門
| 賞 | 受賞作品・受賞者 |
|---|---|
| 作品賞 | 『シルバー・エクスプレス』 監督:田中未来 |
| 審査委員特別賞 | 『いえないふたり』 監督:まつむらしんご |
同部門では、150本以上の応募作品から8作品が選出された。
審査員の村田千恵子は、作品賞を受賞した『シルバー・エクスプレス』について、審査員全員が満場一致で推した作品だったと明かした。
受賞した田中未来監督は、現代を生きる若者の葛藤を描いた作品が評価されたことへの喜びを語り、再び東京国際映画祭に参加できるよう頑張りたいとコメントしている。
アジアの未来部門
| 賞 | 受賞作品 |
|---|---|
| 作品賞 | 『シェリフェ』(スイス/トルコ) |
| スペシャルメンション | 『12月のジャニ』(インドネシア) |
アジア学生映画コンファレンス
| 賞 | 受賞作品 |
|---|---|
| 作品賞 | 『太陽の下を駆け抜けて』(ベトナム) |
| 審査委員特別賞 | 『すべて順調』(シンガポール) |
| 審査委員特別賞 | 『彼女のすべて』(韓国) |
その他の受賞作品・受賞者
| 賞 | 受賞作品・受賞者 |
|---|---|
| 東京国際映画祭 エシカル・フィルム賞 | 『夢から覚めることはそうない』(ドイツ/ウクライナ) |
| 黒澤明賞 | 呉美保監督 |
| 黒澤明賞 | モハマド・ラスロフ監督 |
第39回東京国際映画祭、上映動員数は69,072人
映画祭の閉幕に合わせて、10日間の動員数なども発表された。
上映動員数は69,072人となり、前年の68,039人から1.5%増加。上映作品数も前年の184本から204本へと増加した。
一方、上映以外のリアルイベント動員数は89,269人で、前年の93,847人を下回った。
| 項目 | 2026年の実績 | 前年比 |
|---|---|---|
| 上映動員数 | 69,072人 | 101.5% |
| 上映作品数 | 204本 | 110.9% |
| その他リアルイベント動員数 | 89,269人 | 95.1% |
| ゲスト登壇イベント数 | 185件 | 100.5% |
| 海外ゲスト数 | 2,015人 | 73.8% |
※2026年11月4日発表の速報値。11月4日分は見込み動員数を含む。
また、上映作品204本のうち、女性監督による作品は男女共同監督作品を含め48本で、全体の23.5%を占めた。
クロージングセレモニーの最後には、久松猛朗フェスティバル・ディレクターが閉会を宣言。
久松ディレクターは、国内外のゲストや審査員、映画ファン、スタッフ、ボランティアへの感謝を述べるとともに、映画祭はさまざまな映画を楽しみ、語り合い、祝い合う場であるべきだと語った。
2027年には第40回という節目を迎える東京国際映画祭。久松ディレクターは、国内外からさらに多くのゲストを迎え、より多様で華やかさと祝祭感にあふれる映画祭にしたいという展望を示し、10日間にわたる祭典を締めくくった。
クロージングセレモニーでの主なゲストコメント
Nippon Cinema Now
村田千恵子 総評
海外の映画祭でも上映され、多くの方々に観てもらえることをとても楽しみにしています。今年のNippon Cinema Now部門は、人間ドラマ、コメディ、SF、ドキュメンタリーとバラエティーに富んだ8作品が150本以上の応募作品の中から選ばれたと聞いております。それぞれ個性あふれた作品で「日本映画界の未来は明るいね」とサブリナさんから言われました。グランプリの『シルバー・エクスプレス』は審査員全員が満場一致で推した作品でした。審査員特別賞には受賞作となった『いえないふたり』以外に『火の玉を見た』『プラスチックラブ』『恋する地球人』を推す声もあったことをここにお伝えいたします。
審査委員特別賞『いえないふたり』
まつむらしんご監督 コメント
この作品は関係が途絶えてしまった二つの家族が、向き合うというとてもシンプルな映画です。作品を作る前にみんなで話したのが、とにかく俳優を魅力的に撮ろう、その1点のみです。今日いただいた賞はすべての俳優に捧げます。
作品賞『シルバー・エクスプレス』
田中未来監督 コメント
名誉ある賞をいただき、ありがとうございます。本作は現代を生きる若者の葛藤を描いており、こうした部門の賞をいただけて大変うれしく思います。またこの映画祭に帰ってこられるように頑張ります。
コンペティション
最優秀男優賞授賞 渡辺真起子 講評
主人公の痛みを、静かな友情をもって見つめ続ける役。その絶妙な距離感を、身体性を伴って表現されました。そして、物語の外からも、この映画の歩みを同じように見守っていました。
最優秀男優賞受賞『男ともだち』 三島有紀子監督(成田凌 代理登壇)
この光景を成田凌さんに見せたいですね。 成田凌さん、本当におめでとうございます。そして成田さんの良さを、審査員の皆さん見つけてくださって、本当にありがとうございます。成田さんは沈黙の中に、そして、身体性の中に、そして、言葉の裏に、感情を宿すことができる俳優さんです。 私たちはもう本当に彼を信頼していましたし、この作品を豊かにしてくれたと思います。
この映画は、男ともだちがずっと見る、という行為を続けます。 彼は、我々の現場もずっと見て、監督の私のこともずっと見て、そばにいてくれました。 一つだけ、彼の素敵なエピソードを話させてください。 撮影でどうしても雪が降ってほしい日に、全然降らなくて。 私が空を見上げて「雪降ってくんないかなあ」って言ってたら、成田さんが横で「雪、降れ」って、空に向かって言ってくれて。 それで、雪が降ったんです。彼はそういう映画を、そして現場を豊かにする力がある俳優さんだと思います。
成田凌さん、本当におめでとうございます。私たちは全員、あなたのことを心から誇りに思っています。
東京グランプリ/東京都知事賞
ロルフ・デ・ヒーア審査委員長 講評
ユーモアと悲劇、そしてドラマを見事に融合させていること。登場人物たちに向けられた深い人間味と温かなまなざし。そして、感動的でありながら遊び心にも満ちた、複雑でありながら整合性のある作品であることを高く評価しました。
受賞『妹兄とマンホールの蓋』 ミルチョ・マンチェフスキ監督 動画コメント
『妹兄とマンホールの蓋』を愛してくれて嬉しいです。東京国際映画祭は、世界で一番好きな映画祭のひとつです。この賞は 実現しないかもしれなかった風変わりな映画へのささやかな名誉回復です。変わった家族の物語であり、持てる者と持たざる者の物語であり、メッセージではなく人間を描いた映画です。この映画を東京へ導くにあたり献身と安定した手腕を発揮してくれました。ありがとうございました。
クロージング作品
ヨン・サンホ監督 コメント
劇場では、自分が生きていて経験することができない非日常を、安全に集中して経験できます。ぞっとするような状況を映画館で満喫してほしいです。この映画が扱っているテーマについて一緒に映画をご覧になった皆さんと長い時間をかけてお話しできると嬉しいです。
ク・ギョファン コメント
この作品を紹介できて嬉しいです。映画をご覧になった後、ぜひ多くの方と語り合っていただければと思います。皆さんの感性に訴えかけてくる作品だと思います。皆さんのエキサイトしている姿、そして皆さんがこの作品を見て感じてくださったことを、私も知りたいです。
総合
山下聡東京都副知事(小池百合子都知事メッセージ代読)
『妹兄とマンホールの蓋』のミルチョ・マンチェフスキ監督をはじめ、受賞された皆さま、本当におめでとうございます。
近年、日本映画は世界各地で高い評価を受け、その創造力と豊かな表現は国際的な存在感を一層高めています。世界中の映画人がここ東京に集い、この映画祭を通じて多様な文化や感性に触れ、交流を深められることを心より喜ばしく思います。
映画には、国や地域、言葉や文化の違いを超えて、人々の心を結びつける力があります。変化の激しい時代にあっても、映画がもたらす感動や共感は、人々に希望を与え、未来を照らす光となることでしょう。
今年は、日本映画、そして日本とアジアの共同制作による作品の国際展開を支援する「ワーク・イン・プログレス」を新設いたしました。こうした取り組みを通じて、東京から映画の可能性が広く発信され、より多くの優れた作品が世界へ羽ばたいていくことを期待しております。
この東京国際映画祭が、世界中の人々を魅了する文化の祭典として、今後ますます発展することを願います。
ロルフ・デ・ヒーア審査委員長 総評
数日間にわたって作品を鑑賞するなかで、私たちにとって明らかになったのは、それぞれの作品が持つ驚くべき多様性、そして映画としての個性がいかに異なっているかということでした。
作品を選ぶ際に私たちを試すかのように、あるいは何かの仕掛けを施したかのようにも感じられました。作品同士に似ている点はほとんどなく、簡単に比較することもできません。いったいどのように比べ、評価すればよいのでしょうか。
世界の映画は、実に豊かです。審査委員同士の協議は、この山を登り切るための重要な鍵となりました。多様な顔ぶれがそろった審査委員会だからこそ、難しい問題の核心にまで踏み込み、互いに新たな気づきを与え合い、それぞれの専門知識を生かしながら議論を深めることができました。互いを尊重しながら、少しずつ結論へと歩みを進めていく時間は、本当に喜ばしいものでした。
何よりうれしいのは、すべての賞を、審査委員全員で選ぶことができたとお伝えできることです。私たちを支えてくださった皆様に心の底から感謝申し上げます。
久松猛朗フェスティバル・ディレクター コメント
まずは受賞された皆さま、おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。そして残念ながら受賞に至らなかった皆さまも、ぜひ次のチャレンジに向かっていただきたいと思います。
今年の東京国際映画祭も、本当にたくさんの方々のご支援、ご協力により、本日無事に閉幕を迎えることができました。ご参加いただいた国内外のゲストの皆さま、審査員の皆さま、熱心に映画館へ足を運んでくださった映画ファンの皆さま、映画祭を支えてくれたスタッフの皆さま、そして先ほど映像にも映っていました多くのボランティアの皆さまに、心より感謝申し上げます。
映画は必ずしも明るく楽しい作品ばかりではありません。しかし映画祭は、そうした作品も含めてさまざまな映画を楽しみ、映画について語り合い、祝い合う、映画のお祭りの場であるべきだと思っています。来年、東京国際映画祭は第40回という節目を迎えます。国内外からより多くのゲストをお迎えし、より多様で華やかさと祝祭感にあふれる映画祭にしたいと考えています。皆さまのさらなるご支援、ご協力を心よりお願い申し上げます。
本当にありがとうございました。そして、また来年お会いしましょう。
| 名称 | 第39回東京国際映画祭 |
|---|---|
| 開催期間 | 2026年10月26日(月)~11月4日(水) |
| 会場 | 日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区 |
| 公式サイト | http://www.tiff-jp.net |
