映画『妹兄とマンホールの蓋』(2026)を紹介&解説。
映画『妹兄とマンホールの蓋』概要
映画『妹兄とマンホールの蓋』は、『ビフォア・ザ・レイン』(1994)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したミルチョ・マンチェフスキ監督が、現代の北マケドニアを舞台に描く社会派ブラックコメディ。首都スコピエの周縁部で、銅像やマンホールの蓋を盗んで生活する貧しい兄妹が、ある事故をきっかけに社会の不条理と向き合うことになる。主演はサラ・クリモスカとフィリップ・トライコヴィッチ、共演にソニャ・ミハイロヴァら。第39回東京国際映画祭コンペティション部門で世界初上映される。
作品情報
| 日本版タイトル | 『妹兄とマンホールの蓋』 |
|---|---|
| 原題 | Сестра, брат и шахта |
| 英題 | Sister Brother Manhole Cover |
| 製作年 | 2026年 |
| 本国公開日 | 未定(2026年10月30日に東京国際映画祭で世界初上映) |
| 日本公開日 | 未定(映画祭上映:2026年10月30日ほか) |
| ジャンル | ドラマ/コメディ |
| 製作国 | 北マケドニア/ブルガリア/セルビア/アルバニア/イタリア/イギリス |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 116分 |
| 監督・脚本 | ミルチョ・マンチェフスキ |
|---|---|
| 製作 | ヤネ・チョルトシェフ/ガリナ・トネヴァ/ミラン・ストヤノヴィッチ/アグロン・ドミ/ユー・ファイ・スエン/ルドヴィコ・カンティザーニ・ダウリア/アウグスト・ペッリッチャ |
| 撮影 | ステファーノ・ファリヴェーネ |
| 編集 | ブラゴヤ・ネデルコフスキ |
| 作曲 | イゴール・ヴァシレフ・ノヴォグラツカ |
| 出演 | サラ・クリモスカ/フィリップ・トライコヴィッチ/ソニャ・ミハイロヴァ/ペタル・ミルチェフスキ/ヨルダン・シモノフ/デヤン・リリッチ/ヤスミナ・ヴァシレヴァ/ステファン・ニコロフスキ |
| 製作 | Banana Film/Gala Film/Sense Production/Tirana Film Institute/Berkeley Media Group/Amarcord Production |
| 配給 | 未発表(2026年10時点/海外セールス:Coccinelle Film Sales) |
あらすじ
北マケドニアの首都スコピエ。その周縁部で暮らす兄妹マリナとヴィクトルは、英雄たちの銅製胸像やマンホールの蓋を盗み、スクラップとして売ることで生計を立てていた。
しかし、ある日ふたりが盗み出した国家的英雄の重い胸像がヴィクトルの足に落下し、彼は大けがを負ってしまう。治療にやって来た医師は、その弱みにつけ込んで理不尽な要求を突きつける。
事故をきっかけに、兄妹はスコピエのスクラップ置き場や荒廃した工業地帯などをさまようことに。社会の底辺で生きるふたりの前には、貧困、腐敗、不平等といった厳しい現実が立ちはだかる。
そんな中、ふたりは医師の盲目の母親が暮らす裕福な家にたどり着く。そこでの思いがけない出会いを通じて、兄妹は人間の尊厳や善悪、そして他者とのつながりについて向き合っていく。
主な登場人物(キャスト)
マリナ(サラ・クリモスカ):北マケドニアの首都スコピエの周縁部で暮らす女性。兄ヴィクトルとともに銅製胸像などを盗み、スクラップとして売って生活している。現実的で機転が利く性格だが、心臓に持病を抱えている。
ヴィクトル(フィリップ・トライコヴィッチ):マリナの兄。力が強く、純朴で、妹に深い愛情を抱いている。盗みの最中に胸像を足に落として大けがを負い、その出来事が兄妹の運命を大きく変えることになる。
作品の魅力解説(公開前時点)
『ビフォア・ザ・レイン』の鬼才が描く社会派ブラックコメディ
本作を監督したミルチョ・マンチェフスキは、デビュー長編『ビフォア・ザ・レイン』(1994)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞し、国際的な評価を確立した映画作家だ。
その後も『DUST ダスト』(2001)、『Willow』(2019)、『カイマック』(2022)などを発表し、個人の感情と社会的な問題を結び付けた物語を描き続けている。
本作では、窃盗で生計を立てる貧しい兄妹を主人公に、社会の腐敗や貧富の格差、人間の尊厳といった問題を扱う。深刻な題材でありながらユーモアや寓話性を取り入れた、ブラックコメディとしての表現が特徴となっている。
英雄の銅像とマンホールの蓋に込められた社会風刺
物語の特徴的な要素となるのが、兄妹が盗み出す英雄たちの銅製胸像だ。社会の歴史や理想を象徴するはずの記念物が、貧困の中で生きるふたりにとっては、売却して生活費に換えるための金属に過ぎない。
かつての国家的英雄を称える象徴と、現代社会で生きるために盗みを働かなければならない人々との対比からは、社会が掲げる理想と現実との隔たりが浮かび上がる。
さらに、医師による弱者への搾取など、社会的に尊敬される立場の人間が必ずしも倫理的であるとは限らないという皮肉も描かれる。登場人物たちの行動や立場を通じた風刺が、物語の重要な見どころとなりそうだ。
貧困と不条理の中に描かれる、兄妹の愛情と人間の尊厳
本作の中心にあるのは、どれほど厳しい環境にあっても互いを支えようとする兄妹の関係だ。盗みを繰り返すふたりは決して模範的な市民ではないものの、その行動の背景には貧困や社会的な孤立が存在する。
マンチェフスキ監督は、孤独、貧困、腐敗、精神的な問題などを扱いながら、兄妹の愛情や自己犠牲も本作の主題であると説明している。
また、腐敗した医師とその盲目の母親という対照的な人物の存在も、物語に複雑な倫理的問いを与える。正しさや善悪を単純に分けられない社会で、人々がどのように他者とつながり、生き延びていくのか。社会風刺と人間ドラマを両立させた物語に期待が集まる。
