『オブセッション 災愛』のインディ・ナバレッテが、Z世代の映画観とオリジナル作品への思いを語った。
Z世代を映画館へ呼び戻すために、ハリウッドには何が必要なのか。世界的な大ヒットを記録したホラー映画『オブセッション 災愛』でブレイクした俳優インディ・ナバレッテが、その答えについて率直な思いを明かした。
ナバレッテが登場したのは、映画ジャーナリストのカイル・ブキャナンがホストを務める番組『The Kyle Buchanan Show』。若い世代が映画館に求めているのは、単なる娯楽や大規模な宣伝によって生み出される話題性ではないという。
彼女が訴えたのは、映画のなかで何かを売り込まれることへの疲労感と、オリジナルの物語に触れたいという切実な欲求だった。
インディ・ナバレッテが語るZ世代の本音「私たちは売り込まれたくない」
「Z世代はただ、何かを売りつけられていると感じずに済むものを観に行きたいだけなんだ」
そう切り出したナバレッテは、映画に登場する広告やプロダクト・プレイスメント(企業の商品を劇中に登場させる広告手法)に対して、若者が抱いているかもしれない不満に言及した。
「映画のなかに広告やプロダクト・プレイスメントが絶えず出てくることに、私たちはうんざりしているのかもしれない。それがビジネスに欠かせないことは理解しているよ。私たちはステートファームやアフラックみたいに、今でもセリフを引用するような楽しいCMを観て育った。ああいうのは楽しい。でも、何かを売りつけられたくはないんだ。私たちはオリジナルの物語を求めている」
広告という存在そのものを否定しているわけではない。企業活動としての必要性を理解したうえで、それでも観客として映画に求めるものは別にあるという主張だ。
さらにナバレッテは、デジタル技術に囲まれて育った世代だからこそ、人間らしい感情や体験を求める気持ちが失われるわけではないと強調した。
「私たちがテクノロジーの時代に生きているからといって、人間らしい生活を送っていないわけでも、人間らしい経験をしていないわけでもない。『オブセッション 災愛』がそうしたものを示してくれたことがうれしい。私たちはオリジナリティーを求めているし、何かを感じたいんだ」
彼女の発言から浮かび上がるのは、若い観客が映画という媒体への関心を失ったというよりも、そのなかでしか得られない体験を求めているのではないかという可能性だ。
製作費75万ドルの『オブセッション 災愛』、世界興収5億2200万ドル超の大ヒット
ナバレッテの言葉には、自身が出演した『オブセッション 災愛』の成功という説得力がある。
カリー・バーカーが監督・脚本を務めた同作は、思いを寄せる女性ニッキーの愛を手に入れようとした青年ベアが、不思議な願掛けの道具に頼ったことで恐ろしい事態に巻き込まれていくホラー映画だ。
ベア役にはマイケル・ジョンストン、ニッキー役にはナバレッテが起用され、2026年5月15日に全米公開。日本でも同年7月17日に劇場公開された。
製作費はわずか75万ドルと報じられているが、世界興行収入は5億2200万ドルを突破。ハリウッドでも異例の成功を収めた低予算映画となった。
特筆すべきは、その興行成績の推移だ。通常は公開初週末をピークに数字が落ちていく作品が多いなか、本作は口コミによる評判の広がりを背景に、4週連続で週末興行収入を伸ばすという珍しい現象を起こした。
その勢いを支えたのが、Z世代を中心とする若い観客たちだった。
既存の人気シリーズでも、著名スターを前面に押し出した超大作でもない。小規模なオリジナル作品が若い世代の支持を獲得し、世界的な興行現象へと発展した事実は、ナバレッテの主張を考えるうえでも興味深い。
Z世代の87%が映画館へ、若者こそ劇場映画の重要な観客層に
実際、若者の映画館離れというイメージとは異なる調査結果も発表されている。
米国の映画チケット販売サービスFandangoが2026年4月に公表した映画鑑賞動向調査によると、過去1年間に少なくとも1本の映画を劇場で鑑賞した人の割合は、Z世代で87%に達した。
ミレニアル世代の82%、X世代の70%、ベビーブーマー世代の58%を上回り、調査対象の世代のなかで最も高い割合を示した。
映画館への年間平均訪問回数でも、Z世代とミレニアル世代はともに約7回となり、X世代の6.1回、ベビーブーマー世代の5.7回を上回っている。
さらにZ世代は、映画館での飲食物の購入やIMAXなどのプレミアム上映形式にも、比較的多くのお金を使う傾向が確認されたという。
Fandangoのエグゼクティブ・バイスプレジデント、Jerramy Hainlineは、調査結果について次のようにコメントしている。
「Z世代は劇場での映画鑑賞にあまり積極的ではないという見方がありましたが、私たちのデータは、彼らの勢いが増していることを示しています。特に注目すべきなのは、彼らが体験を共有することの価値を非常に高く評価している点です。映画館が若い観客にとって、交流の場として重要な役割を果たし続けていることを裏付けています」
もちろん、映画館を訪れる頻度が高いことと、劇中広告への不満やオリジナル作品への需要が直接結びつくわけではない。それでも、Z世代が映画館に強い関心を持っているという事実は、ナバレッテの発言を考えるうえで重要な材料となる。
大ヒットを記録した『オブセッション 災愛』の成功、そして若年層の劇場鑑賞動向。ハリウッドが次世代の観客を引きつけようとするなら、宣伝の規模や知名度だけでなく、彼らが本当に観たいと思える物語を届けることもまた、重要な課題となりそうだ。
【動画】インディ・ナバレッテがZ世代の映画観を語る『The Kyle Buchanan Show』インタビュー
