ジョディ・フォスターが『F1』を例に、映画界のAI活用を語った。
ジョディ・フォスターが、ブラッド・ピット主演の映画『F1®/エフワン』について、「AIが作った映画みたい」と語った。
発言があったのは、アスペン・フェスティバル・オブ・アイデアズで行われたトーク「Who Owns the Future of Hollywood」。元ソニー・ピクチャーズCEOのマイケル・リントンとの対談の中で、フォスターはハリウッドの変化やAIの影響について語り、その具体例としてAppleの『F1®/エフワン』を挙げた。
ただし、フォスターは同作を一方的に切り捨てたわけではない。むしろ、興行的にも賞レース的にも結果を残した大作を例にしながら、現代の映画がどこまで「型」と「技術」によって作られているのかを問いかけた形だ。
ジョディ・フォスター、『F1®/エフワン』を「AIが作った映画みたい」と語る
フォスターは『F1®/エフワン』について、笑いを交えながら次のように語った。
「けなすつもりで言っているんじゃないよ。だって、どうしてけなすようなことができるの?この映画は何百万ドルも稼いだんだから。でも『F1』みたいな映画を見ると、『F1』はAIで作られたんだなって思うの」
さらにフォスターは、「そうじゃなかった?つまり、構成はまさに学校で習うような構成だった。俳優たちは、その場面にふさわしい正解をコンピューターが書いたらこうなる、という台詞を、そのまま言っているように見えたんだよ」と続けた。
ここでフォスターが指摘しているのは、『F1®/エフワン』が実際にAIで制作されたという断定ではない。むしろ、ハリウッド大作の脚本構造やキャラクターの台詞が、あまりにも整理され、正解に近い形で配置されていることへの違和感だろう。
『F1®/エフワン』は世界興収6億3,400万ドルを記録し、第98回アカデミー賞では作品賞を含む4部門にノミネート。音響賞を受賞した。だからこそフォスターの発言は、「失敗作への批判」ではなく、「成功した大作の中にもAI的な作りを感じる」という問題提起として響く。
AIは映画界の仕事を奪うのか フォスターが語った俳優と組合の問題
対談では、『F1®/エフワン』の話題から、AIが映画業界にもたらす変化にも話が及んだ。
リントンが「AIは俳優や脚本家を置き換えるのか」と尋ねると、フォスターは「私たちは人を置き換えているんだよね」と返答。すでにスタジオが群衆シーンなどで背景俳優を複製し、コストを抑えている現状に触れた。
そのうえでフォスターは、「私たちは多くの仕事をなくしている。だから願わくば、組合のようなものが入ってきて、『この俳優を20回使っていい。でも20回分払ってね』と言えるようになってほしい。それは公平だと思うよ」と語った。
この発言は、AIやデジタル技術そのものを否定するものではない。問題は、俳優やスタッフの労働がデータとして再利用されるとき、その対価や同意がどう守られるのかという点にある。
フォスターの言葉は、AI時代の映画制作において、技術の進歩とクリエイターの権利をどう両立させるべきかという、現在のハリウッドが抱える核心的なテーマにつながっている。
「映画作家がAIを使いこなすこと」が重要だと強調
一方でフォスターは、AIを完全に拒絶しているわけではない。プリビズ、つまり撮影前にシーンを視覚化する作業など、「小さく役に立つこと」にはAIツールを活用できると認めている。
フォスターは「私たちが望んでいるのは、映画作家たちがAIを支配できるようになって、そのことを決して見失わないことだよね」と語った。
また、自身の近作『My Private Life(原題)』では、夢のようなシーンにAIが関わった例にも言及。フォスターは、その映像について「意味はまったく通らない」ものだったとしながらも、結果としてうまく機能していたと振り返った。
そして最後に、「時間をかけて一貫してAIを使いこなせるなら、私たち自身を映すものを作れるし、もっと良いものにできるはずだよ」と述べている。
『F1®/エフワン』をめぐる今回の発言は、単なる大作批判というより、AI時代における映画の“人間らしさ”をめぐる問いに近い。構成が洗練され、台詞が過不足なく、映像が巨大で美しい。それでも、そこに作り手の揺らぎや違和感は残っているのか。フォスターの発言は、今後のハリウッドでさらに大きな論点になりそうだ。
