【映画レビュー『OCHI!-オチ-』】不思議な生き物との相互理解と絆--A24が蘇らせる、王道ファンタジーの系譜

【映画レビュー『OCHI!-オチ-』】不思議な生き物との相互理解と絆--A24が蘇らせる、王道ファンタジーの系譜 Film Review
『OCHI!-オチ-』より ©2024 KURKAMART LLC AND IPR.VC FUND II KY. ALL RIGHTS RESERVED.

新作映画『OCHI!-オチ-』 を紹介&解説するレビュー。


4月3日(金)日本公開となるA24映画『OCHI!-オチ-』は、少女と伝説の生き物の秘密の冒険を描いたファンタジー映画だ。製作はルッソ兄弟率いるAGBO、メガホンをとったのはミュージックビデオ界で頭角を現したアイザイア・サクソン監督。主演のヘレナ・ツェンゲルウィレム・デフォーエミリー・ワトソンフィン・ヴォルフハルトと、個性豊かなキャストが顔を揃える。

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映画『OCHI!-オチ-』レビュー

現代に蘇る、王道ファンタジーの系譜

少女を主人公に据え、周囲の人々から理解されない不思議な生物との秘密の友情と絆を描くという構図は、『E.T.』や『ネバーエンディングストーリー』、『グレムリン』といった由緒正しき王道ファンタジーの系譜を確かに受け継いでいるように思う。

『OCHI!-オチ-』とはどんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・トリビアまとめ

ヘレナ・ツェンゲル、『OCHI!-オチ-』より ©2024 KURKAMART LLC AND IPR.VC FUND II KY. ALL RIGHTS RESERVED.

“違い”を嫌い、憎み合い、罵り合う声がSNSを中心に可視化されて久しい現代において、“理解と歩み寄り”をこれほどピュアにまっすぐ描いた物語が今まさに求められているのではないか――本作はそんな問いかけを静かに投げかけてくる。

“オチ”のデザインに宿る、物語の本質

伝説の生き物“オチ”のデザインは非常に可愛らしく、そのつぶらな瞳と愛らしい仕草には思わず微笑んでしまう。生物由来のリアルな動きと、VFXに頼りすぎない生身の造形が絶妙なバランスで共存し、物語への没入感と心地良いフィクション体験を同時にもたらしてくれる。

【映画レビュー『OCHI!-オチ-』】不思議な生き物との相互理解と絆--A24が蘇らせる、王道ファンタジーの系譜

『OCHI!-オチ-』より ©2024 KURKAMART LLC AND IPR.VC FUND II KY. ALL RIGHTS RESERVED.

実在の猿”キンシコウ”を思わせるそのリアルな風貌も印象的だ。“恐れられ忌避されている存在”でありながら、特段の害もなさそうでそれほど突飛な外見でもないという造形は、オチを恐れる人々のバカバカしさをデザインそのもので体現しており、設定と見た目が見事に噛み合った好例と言えるだろう。

映像が運ぶノスタルジーと、大自然の息吹

ミュージックビデオ監督としてのキャリアを積み上げてきたアイザイア・サクソン監督らしく、ノスタルジックな空気をまとった映像はどこかアート作品としての色合いを帯びている。街の店でのドタバタ騒動のシーンなどは、一昔前のミュージックビデオや80〜90年代映画のテイストそのものだ。

【映画レビュー『OCHI!-オチ-』】不思議な生き物との相互理解と絆--A24が蘇らせる、王道ファンタジーの系譜

『OCHI!-オチ-』より ©2024 KURKAMART LLC AND IPR.VC FUND II KY. ALL RIGHTS RESERVED.

Netflix映画『エレクトリック・ステイト』やPrime Videoの『ザ・ブラフ』も含め、ルッソ兄弟率いるAGBOが製作する最近の作品群には、ノスタルジーと王道エンターテインメントを携えながら、かつて大衆を無邪気に楽しませていた映画へと立ち返ろうとする一貫した姿勢が感じられる。

さらに、雄大な大自然の映像がもたらすヒーリング効果と冒険のワクワク感も、本作の大きな魅力のひとつだ。

【映画レビュー『OCHI!-オチ-』】不思議な生き物との相互理解と絆--A24が蘇らせる、王道ファンタジーの系譜

『OCHI!-オチ-』より ©2024 KURKAMART LLC AND IPR.VC FUND II KY. ALL RIGHTS RESERVED.

ヘレナ・ツェンゲル、ウィレム・デフォーらが物語を彩る

キャストにも注目したい。主演を務めるのは『システム・クラッシャー』や『この茫漠たる荒野で』で鮮烈な印象を残したヘレナ・ツェンゲル。見知らぬ生き物オチとともに冒険へと踏み出す少女を体当たりで演じている。過去作で与えられてきた役どころが強烈だっただけに、この年齢のうちに王道な少女像を体現する姿を目撃できたのは、ファンとしてひとつの喜びでもある。

【映画レビュー『OCHI!-オチ-』】不思議な生き物との相互理解と絆--A24が蘇らせる、王道ファンタジーの系譜

ウィレム・デフォー、フィン・ヴォルフハルト
、『OCHI!-オチ-』より ©2024 KURKAMART LLC AND IPR.VC FUND II KY. ALL RIGHTS RESERVED.

ウェス・アンダーソン作品やロバート・エガース作品で唯一無二の存在感を放ってきたウィレム・デフォーは、本作でもやはり彼にしか出せないスパイスを効かせてくる。シュールでバカバカしい可笑しみと、恐ろしいほどの人間臭さを同居させ、物語の文脈では明らかに浮いているはずの奇妙な衣装さえも、気づけば作品の空気に溶け込んでいる。これはひとえに、彼のビジュアルと演技があってこその妙技だろう。

『OCHI!-オチ-』より ©2024 KURKAMART LLC AND IPR.VC FUND II KY. ALL RIGHTS RESERVED.

フィン・ヴォルフハルト、『OCHI!-オチ-』より ©2024 KURKAMART LLC AND IPR.VC FUND II KY. ALL RIGHTS RESERVED.

エミリー・ワトソン(『ハムネット』)やフィン・ヴォルフハルト(『ストレンジャー・シングス 未知の世界』)が脇を固めるキャスト陣も盤石で、隙がない。


ノスタルジーとほっこり、シュールと人間の美醜——それらの要素をすべて練り込み、現代映画として鮮やかに昇華させる手腕はいかにもA24らしい。映画『OCHI!-オチ-』、4月3日(金)の公開に向けて、注目していただきたい。

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