童話「ピノキオ」を題材にしたホラー映画『PINOCCHIO: UNSTRUNG』と『Pinocchio Unleashed』の2作品が、現在それぞれ異なる方向性で制作が進行している。
近年、パブリックドメインとなった童話や児童文学をホラーとして再解釈する動きが広がりを見せている。『プー あくまのくまさん』を皮切りに、かつて“無垢”の象徴だった物語が、残酷で暴力的な世界観へと転じる例も珍しくなくなった。
そうした潮流の中、現在「ピノキオ」を題材にしたホラー映画が2本、並行して制作されていることが明らかになっている。それが、『PINOCCHIO: UNSTRUNG(ピノキオ:アンストラング)』と、『Pinocchio Unleashed(ピノキオ・アンリーシュド)』だ。
同じ原作を共有しながらも、両作は制作体制や作風、目指す恐怖の方向性が大きく異なる。本記事では、混同されそうな2作品について、現時点で判明している情報を整理する。
ピノキオ題材のホラー映画が同時進行している背景
『アンストラング』と『アンリーシュド』は、シリーズ作品や直接的な続編関係ではなく、それぞれ独立した企画として進められている。共通点は、原作である童話「ピノキオ」がパブリックドメインとなっている点にある。
近年、著作権の制約を受けないキャラクターを用いたホラー作品が増加しており、同一モチーフを複数の制作陣が異なる解釈で映像化するケースも見られるようになった。ピノキオもその流れの中で、“無垢な人形”から“恐怖の象徴”へと再構築されつつある存在のひとつだ。
今回進行中の2作品も、同じ題材を扱いながら、ユニバース展開を前提としたスラッシャー路線と、心理性や実用的特殊効果を重視するインディー作品という、異なる方向性を選択している。
『PINOCCHIO: UNSTRUNG』-ユニバース展開の一環として制作されるスラッシャー作品
『PINOCCHIO: UNSTRUNG』は、ホラー映画『プー あくまのくまさん』で注目を集めた制作陣による、いわゆる“ツイステッド・チャイルドフッド・ユニバース”の一作として、『子鹿のゾンビ』や『ネバーランド・ナイトメア』とともに世界観を共にするものとして企画されている作品である。

『Pinocchio: Unstrung』より
パブリックドメインとなった児童文学のキャラクターを、暴力性の高いホラーとして再構築する路線を継承しており、本作もスラッシャー色の強い内容になるとされている。
監督はリース・フレイク=ウォーターフィールド。制作はジャギッド・エッジ・プロダクションズが手がけ、海外では同ユニバースの拡張作品として位置づけられている。公開された初期ビジュアルやコンセプトアートでは、従来の愛らしいイメージとは大きく異なる、歪んだ造形のピノキオ像が提示された。

『Pinocchio: Unstrung』より
キャストには、ホラー映画の象徴的存在として知られるロバート・イングランドが名を連ねており、物語上の重要なキャラクターである“クリケット”の声を担当すると報じられている。また、リチャード・ブレイクがゼペット役として出演することも明らかになっている。
現時点では、過激な描写や高いキルカウントを前面に押し出した作品になるとされており、同ユニバースの他作品と同様に、ショック性を重視したアプローチが特徴となりそうだ。配給側は、米劇場公開時期を2026年と案内している。
『Pinocchio Unleashed』-実用的特殊効果と心理性を重視するインディーホラー
『Pinocchio Unleashed』は、『アンストラング』とは異なり、特定のホラーユニバースには属さない独立したインディー作品として制作が進められている。脚本・監督を務めるのはカルロ・バスで、自身が主宰するフィルム・イット VFX スタジオを拠点に企画・製作を行っている。

Pinocchio Unleashed』より
本作の特徴として強調されているのが、実用的な特殊効果を重視した表現手法だ。CGに過度に依存せず、造形や質感を前面に出すことで、より生々しい恐怖表現を目指す姿勢が、公開されたティーザー映像や制作陣のコメントからうかがえる。
物語は、魔法によって命を得た木製の人形が創造主の工房を離れ、恐怖と虚飾に満ちた世界へ足を踏み入れるところから始まる。人間になることを目指す過程で、彼は選択を迫られ、道徳や人間性そのものが試されていくという。スラッシャー的な即物的恐怖よりも、心理的葛藤や内面的な変化に焦点を当てたダークファンタジーとして構想されている点が、本作の大きな特徴だ。
出演者にはジェームズ・ウィンゲート、スティーブン・ガイ、ジェローム・ワイズ、ケイティ・ジャーヴィスらが名を連ねる。製作はJNRプロダクションズ、マッド・エンジェル・エンターテインメントとの共同体制で行われ、現在はロンドンで制作が進行中とされている。
米公開時期については、当初は年内公開を視野に入れていると報じられていたが、制作側の公式情報では2026年表記も見られ、現段階では流動的な状況にある。
【動画】『Pinocchio Unleashed(原題)』予告編
同じ童話「ピノキオ」を題材としながら、『アンストラング』と『アンリーシュド』は、制作背景や恐怖表現の方向性において大きく異なる作品として進行している。ユニバース展開の一環としてスラッシャー性を前面に打ち出す前者と、心理的テーマや実用的特殊効果を重視するインディー作品として構想される後者は、同一モチーフから生まれた“別の解釈”と言えるだろう。
パブリックドメイン化によって、童話や児童文学が自由に再構築される時代において、こうした並行企画は今後さらに増えていく可能性がある。ピノキオというキャラクターが、恐怖の象徴としてどのように描かれるのか。2作品の続報と公開動向に注目が集まりそうだ。


