アマンダ・サイフリッドが教団創設者役『The Testament of Ann Lee』での挑戦「こうも自由にやらせてもらったことはない」【ベネツィア映画祭】

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アマンダ・サイフリッドが新作映画『The Testament of Ann Lee』でシェーカー教団創設者を演じ、自由な演技に挑む。


アマンダ・サイフリッドが新作映画『The Testament of Ann Lee』(後に邦題が『アン・リー/はじまりの物語』に決定)で、18世紀にシェーカー教団を創設したアン・リー役に挑んだ。本作は従来のミュージカルや伝記映画の枠に収まらない独自の作品であり、現在開催中のベネツィア国際映画祭で公式上映された。記者会見に登壇した監督のモナ・ファストヴォルドは、サイフリッドを主演に起用した理由を語っている。

監督が語るキャスティング理由―強さと優しさを兼ね備えた存在

ファストヴォルドは「アマンダにはすごいパワーがある。彼女は本当に強い。すばらしい母親だし、ちょっとマッドでもあるの」と説明し、エミー賞受賞歴やアカデミー賞ノミネート経験を持つサイフリッドを高く評価した。さらに「だから彼女なら、優しさ、穏やかさ、思いやりといったものにアクセスできると分かっていた。同時に、このパワーと狂気にもアクセスできる」と、その多面的な表現力を起用の決め手とした。

『The Testament of Ann Lee』より

『The Testament of Ann Lee』より

 

シェーカー教団の歴史を再構築―音楽と動きで描かれる独自の世界

本作は「推測による再話」と位置付けられ、サイフリッドは過激な宗教集団シェーカー教団の創設者アン・リーを演じる。シェーカー教団は1747年、イングランド・マンチェスターでクエーカー教から分派して誕生し、震える、踊る、異言を話すといった礼拝様式からその名が付いた。リーは性別や社会的平等を唱え、自らをキリストの女性的化身と信じ、信者は独身主義と共同生活を実践した。その後、迫害を逃れてアメリカへ移住し、ニューヨーク州オルバニー近郊にユートピアを築いた歴史を持つ。

ファストヴォルドの映画では、十数曲のオリジナル・シェーカー賛美歌が、振付師セリア・ローソン=ホールによる恍惚とした「ムーブメント」へと昇華されている。監督は「シェーカー教団には1000曲近い賛美歌が残されていて、物語に属すると感じられるものを見つけた。豊かな歴史にアクセスするのは美しく刺激的だった」と振り返る。ただし誰も台詞を歌うわけではなく、伝統的なミュージカルとは一線を画している点も強調された。

『The Testament of Ann Lee』より

『The Testament of Ann Lee』より

自由な演技への挑戦―監督への信頼が後押し

参考となる作品がほとんど存在しない中で、サイフリッドは演技における完全な自由を楽しんだと語る。

これは本当に何にも繋がれていない機会のように感じられた。基本的に、私はモナ(監督)について光の中に入っていく感じで、何でもありなの。すごく自由だから、唯一の脅威は、その自由をアーティストとして有利に使わないことよ。可能な限り深く進んで、最もクレイジーな音を作るの。こんな風に自由にやらせてもらったことは一度もないよ」と彼女は記者会見で語った。

一方で、役を引き受けるにあたってためらいもあったという。サイフリッドは「私をキャスティングする必要はない、『イギリス人にしなよ』って言い続けていた。アクセントがすごく難しそうだったから。でもそれが一番大変な部分ではなかった」と振り返る。『レ・ミゼラブル』のコゼットや『ドロップアウト〜シリコンバレーを騙した女』のエリザベス・ホームズといった難役を経験してきた彼女にとっても、新たな挑戦だった。

それでも監督の熱意が女優を動かした。「モナが持っていた愛が見えたの。これは彼女の赤ちゃんみたいなもので、台無しにしたくなかった。でも彼女が私を信じてくれたから、私も自分を信じることができた。そして私たちはここにいる」と強調し、監督との深い信頼関係が演技の原動力となったことを明かした。

守られた共同体としての撮影現場―困難を支えた仲間たち

記者から「激しくて身体的に困難な役をどう演じきったのか」と問われたサイフリッドは、現場で築かれた環境の重要性を強調した。
言えることがたくさんある。アーティストとしてたくさんの困難に立ち向かえた理由は、愛情深いアーティストたちに完全に守られ、支えられ、囲まれていると感じたからよ。みんながこれを作ることの価値を知っていて、モナのビジョンを理解している場所だった。本当に稀なことよ。これは信じられないほど稀なことで、二度と起こらないかもしれないね」と語り、現場がシェーカー教団の共同体に似た空気を持っていたことを明かした。

音楽を担当したダニエル・ブルームバーグも「プリプロダクションからサウンドミックスまで全過程でモナと共に取り組めた。これは私がやった中で最も実験的で極端なプロジェクトの一つだったけど、物事を試し、直感を信じることができた」と話し、創作の自由と共同作業の価値を強調した。

制作陣が語る挑戦と意義―難題を乗り越えたシェーカー・ミュージカル

ベネツィアでの記者会見には、ファストヴォルド監督と脚本を共同執筆したブラディ・コーベット、主演のサイフリッド、音楽のブルームバーグ、プロデューサーのアンドリュー・モリソン、振付師ローソン=ホールらが登壇した。会場でコーベットは「1000万ドルでこの映画を製作できたのはモリソンのおかげだ。想像できる通り、シェーカー・ミュージカルのエレベーター・ピッチは軌道に乗せるのが最も簡単なことではなかった」と述べ、難しい企画を実現させた背景を明かした。また、自らセカンドユニット監督を務めたことや、恋愛と仕事双方のパートナーであるファストヴォルドと共に作品の最終編集権を主張したことにも触れた。

映画祭ディレクター声明でファストヴォルドは、世俗的な家庭で育ちながらもアン・リーの預言に強く動かされたと語っている。「彼女の信仰を共有しているからではなく、彼女の中に正義、超越、共同体の恩寵への憧れを認識するからだ。自ら作り上げたユートピアへの過激な追求は、すべての芸術的努力の中心にある創造的衝動を物語っている」と述べ、その精神性を芸術の原動力に重ね合わせた。

さらに監督は、自身の映画を「リーの夢、そして今それを取り囲む沈黙」への賛辞として捧げると結んだ。『The Testament of Ann Lee』は現地時間9月1日、サラ・グランデでワールドプレミアを迎え、映画祭における注目作のひとつとなった。

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