米国を襲う大規模な冬の嵐の影響で興行全体が低調となる中、クリス・プラット主演『MERCY/マーシー AI裁判』が首位に立った。
アメリカ各地を覆う大規模な冬の嵐が、北米映画興行に深刻な影響を及ぼしている。多くの都市やコミュニティが市民に外出を控えるよう呼びかけており、今週末の興行収入は年初最低水準に落ち込む見通しだ。この影響により、2025年の同週末を下回る初のケースとなる可能性も指摘されている。そうした厳しい状況の中で、新作スリラー『MERCY/マーシー AI裁判』が首位に浮上した。
冬の嵐の逆風の中で首位に浮上した『MERCY/マーシー AI裁判』
今週末の首位は、ティムール・ベクマンベトフ監督による新作スリラー『MERCY/マーシー AI裁判』が獲得する見込みだ。クリス・プラットが妻殺害の罪で裁判にかけられる男を演じ、彼の運命が人工知能の裁判官に委ねられていることが明らかになるところから、物語は予想外の展開を見せていく。
MGMアマゾン・スタジオは、同作のオープニング興行収入を1,260万ドル(約19億4,670万円)と見込んでいる。この数字は事前予想の範囲内とされる一方で、関係者の中には1,500万ドル規模を期待していた声もあり、やや慎重なスタートと受け止められている。
『アバター』シリーズの連続首位がストップ、2位に後退
『MERCY/マーシー AI裁判』の首位獲得は、単なる新作ヒットにとどまらず、ボックスオフィスの勢力図が動いたことを示す結果でもある。これまで5週連続で首位を守ってきた、ジェームズ・キャメロン監督による『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が、今週末は2位に後退する見込みだ。
20世紀フォックス配給の同作は、週末興行収入として約700万ドル(約10億8,150万円)を稼ぎ、国内累計は3億8,000万ドル台(約587億円超)に達すると見られている。依然として安定した集客力を維持しているものの、厳しい天候条件が続く中で、長期にわたる首位記録はここで途切れる形となった。
なお、数年前に公開された『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は、7週連続で首位を維持した実績があり、シリーズ作品の中でも異例のロングランを記録していた。今回の結果は、フランチャイズの強さを示しつつも、市場環境の影響が興行成績に色濃く反映された週末だったと言えそうだ。
アニメ大作、ヒット作が上位を維持、厳しい週末でも底堅さを示す
3位以下には、悪天候による客足減少が続く中でも、比較的安定した成績を維持する作品が並んでいる。ディズニーのアニメーション大作『ズートピア2』は3位をキープし、週末興行収入として最大600万ドル(約9億2,700万円)を稼ぐ見込みだ。同作はこの週末に国内興行収入4億ドル(約618億円)を突破する新たな節目を迎えると予想されており、世界興行収入も17億ドル(約2,626億5,000万円)を超えるなど、引き続き記録的なヒットを続けている。
4位には、ポール・フェイグ監督による『The Housemaid(原題)』がランクインした。シドニー・スウィーニーとアマンダ・サイフリッドが出演する同作は、公開6週目を迎えた今週末も推定600万ドル(約9億2,700万円)を記録し、安定した推移を見せている。女性観客を主なターゲットとした作品で、世界興行収入はすでに2億5,000万ドル(約386億2,500万円)を超えており、ライオンズゲートにとっては大きな成功例となっている。
期待を下回ったホラー続編、2週目で失速する結果に
一方で、今週末は期待された続編作品が苦戦を強いられる結果ともなった。ニア・ダコスタ監督による高尚なホラー・ゾンビ続編『28年後… 白骨の神殿』は、公開2週目にして5位へと後退する見込みだ。
同作はMLKホリデー期間のオープニング興行で予想を下回るスタートを切っており、その流れを引きずる形で今週末の興行収入は推定420万ドル(約6億4,890万円)にとどまっている。国内累計興行収入も2,140万ドル(約33億630万円)と、制作規模やシリーズの知名度を考えると、厳しい数字となっている。
冬の嵐による市場全体の冷え込みが続く中でも、上位を維持する作品がある一方で、本作のように初動の勢いを欠いた作品は、早くも順位を落とす結果となった。
賞レース効果は限定的ながらも、候補作が粘り強さを見せる
主要アカデミー賞ノミネート後に作品が享受してきた、いわゆる“興行ブースト”は年々縮小しているとされるが、それでも今週末のチャートでは一定の影響が見られる。A24配給によるジョシュ・サフディ監督作『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』は、1月22日に作品賞やティモシー・シャラメの主演男優賞を含む9部門で主要ノミネートを獲得する以前から、予想を上回る成績を記録していた。
同作は今週末、推定350万ドル(約5億4,075万円)で6位にランクインする見込みで、前週からの下落率は35%にとどまっている。この数字は、トップ10作品の中でも比較的良好な粘りを示すものといえる。
この成績を上回る可能性があるのは、もう一つのオスカー有力候補であるクロエ・ジャオ監督の『ハムネット』だ。1月11日に行われたゴールデン・グローブ賞でドラマ部門作品賞を受賞した同作は、フォーカス・フィーチャーズにとって8部門でノミネートを獲得したアートハウス作品で、賞レースを背景に着実な拡大公開を続けている。
再上映イベントも健闘、厳しい市場環境の中で多様な動き
チャート上位では新作や話題作が並ぶ一方で、再上映イベントも一定の存在感を示している。8位にランクインしているのは、ピーター・ジャクソン監督による『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の25周年記念再上映イベントだ。
ワーナー・ブラザースとファゾム・イベンツがパートナーシップを組んで実施している同イベントは、週末までに1,100万ドルから1,200万ドル(約17億円〜18億5,400万円)、あるいはそれ以上を稼ぐ可能性があると見込まれている。新作が苦戦する週末においても、長年支持されてきた作品の集客力が改めて示された形だ。
大規模な冬の嵐という外的要因により、全体的に低調な週末となった今週の北米ボックスオフィス。新作が首位に立つ一方で、フランチャイズ作品、アニメ大作、賞レース候補作、さらには再上映イベントまで、それぞれが異なる形で観客を引きつけた。市場環境の厳しさが続く中、今後の天候回復とともに興行がどこまで持ち直すのかが注目される。

