「電話が鳴らない生活」から75歳でアカデミー賞へ―エイミー・マディガン、ホラー映画『WEAPONS』で60年ぶりの歴史を塗り替える

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『WEAPONS/ウェポンズ』 より © 2025 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved

エイミー・マディガンが『WEAPONS ウェポンズ』でアカデミー賞助演女優賞を受賞。ホラー映画としては異例の快挙となった。


エイミー・マディガンが映画『WEAPONS ウェポンズ』でアカデミー賞助演女優賞を受賞した。ジャンル映画、とりわけホラー作品から俳優賞が選ばれることは極めて珍しく、今回の受賞はハリウッドと映画ファンの双方にとって印象的な出来事となった。

登壇後のマディガンは魔女のような高笑いをする様子を見せたが、授賞式の舞台に上がる前のマディガンは、どこか呆然とした様子を見せていた。だがそれも無理はない。『WEAPONS ウェポンズ』は現代社会への含意を持ちながらも、その主目的は観客を恐怖へと引き込むことにある作品であり、こうしたジャンル映画が俳優部門で評価される例は多くないからだ。

それでも彼女が演じた“叔母グラディス”という存在は、その例外となった。誇張された振る舞いと静かな威圧感を行き来するそのキャラクターは、観客を恐怖へ導く中心的な存在として強烈な印象を残したのである。

ホラー映画『WEAPONS』で異例のアカデミー賞受賞―マディガンが演じた“グラディス”

『WEAPONS ウェポンズ』でマディガンが演じた叔母グラディスは、ホラー映画史に残る悪役のひとりとして語られつつある人物だ。公衆の前ではどこか風変わりながら愛される人物を装いながら、密室では邪悪な存在としての顔をのぞかせる。その二面性を、マディガンは誇張された振る舞いと静かな不気味さを交互に見せる演技で体現した。

作中でグラディスは、人々から生気を吸い取ることで生き続ける存在として描かれる。なぜその行為を行うのか――その答えは明白であり、同時に私たち“魔女でない”人間には理解しきれない領域にある。マディガンは、その不条理さと説得力を同時に成立させ、キャラクターに豊かな生命を与えた。

こうした演技がアカデミー賞で評価されることは通常多くない。ホラー映画の演技で助演女優賞を受賞した例としては、『ローズマリーの赤ちゃん』で魔女を演じたルース・ゴードンの名前が挙げられるが、それは約60年前の出来事である。しかも今回、マディガンは『WEAPONS ウェポンズ』から唯一の候補者としてノミネートされ、他の作品が幅広く評価された4人の候補者を退けて受賞を果たした。彼女の演技がいかに強烈な印象を残したかを示す結果と言えるだろう。

「電話が鳴らない生活」―長い沈黙の末につかんだアカデミー賞

今回の受賞は、マディガンにとって長い年月を経て訪れた出来事でもある。彼女は『WEAPONS ウェポンズ』の宣伝期間を通じて、ハリウッドでの自身の立場について率直に語ってきた。かつては「電話が鳴らない生活にすっかり慣れてしまっていた」と語り、長い間仕事のオファーが来ない状況に置かれていたことを明かしている。

その背景には、俳優としてのキャリアの空白がある。マディガンがこれまでにアカデミー賞にノミネートされたのは、1985年の映画『燃えて再び』の助演女優賞のみだった。当時のノミネート俳優の多くがまだ生まれていなかった時代であり、今回の受賞はそれから約40年を経て実現した形となる。

『WEAPONS ウェポンズ』で彼女が演じた叔母グラディスは、脚本に細かく書き込まれていない部分も多いキャラクターだったという。しかしマディガンは、ザック・クレッガー監督がページ上に書き残さなかった出自や動機にまで想像力を巡らせ、役に独自の奥行きを与えた。その結果、観客の前ではどこか奇妙で愛される人物として振る舞いながら、裏では人々の生気を吸い取る邪悪な存在として現れるという複雑な人物像が生まれたのである。

その演技は、作品の中で単なる悪役以上の存在感を放った。『WEAPONS ウェポンズ』が今回のアカデミー賞で唯一のノミネート作だったにもかかわらず、マディガンが助演女優賞を勝ち取った事実は、彼女の演技がいかに強烈な印象を残したかを物語っている。

75歳での受賞―俳優たちに希望を示した遅咲きのオスカー

今回の受賞は、マディガンのキャリアにおいて象徴的な意味を持つ出来事でもある。75歳での受賞となった彼女は、アカデミー賞助演女優賞の歴史の中でも史上2番目に高齢の受賞者となった。

長い沈黙の時期を経て訪れたこの瞬間は、彼女自身にとっても予想外のものだったのかもしれない。受賞スピーチでは即興のような言葉で感謝を述べ、「名前を読み上げるのははしたない」という風潮に反旗を翻した。なぜなら、その名前こそが今日の自分をここへ導いた人々だったからである。

その姿は、長い間ハリウッドから距離を置かれていたと感じていた俳優が再び脚光を浴びる瞬間でもあった。舞台へ歩み出たマディガンは、飾らない態度のまま観客の前に立ち、自身のキャリアを振り返るような時間を生み出した。

『WEAPONS ウェポンズ』における演技は、それだけでも十分に語られるべき成果だろう。しかし同時に、この受賞は俳優という職業そのものにも示唆を与える出来事となった。長い空白や不遇の時間があったとしても、俳優にとって「最高の機会は一度の出会いの先にある」という事実を、マディガンの受賞は改めて示したと言える。

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