【映画レビュー『ゼイ・ウィル・キル・ユー』】不死身の敵を殴り、蹴り、それでも終わらない——ザジー・ビーツの新境地にして血みどろの快作

【映画レビュー『ゼイ・ウィル・キル・ユー』】不死身の敵を殴り、蹴り、それでも終わらない——ザジー・ビーツの新境地にして血みどろの快作 Film Review
『ゼイ・ウィル・キル・ユー』より © 2026 Warner Bros. Ent. All rights reserved

新作映画『ゼイ・ウィル・キル・ユー』 を紹介&解説するレビュー。


5月8日(金)日本公開の『ゼイ・ウィル・キル・ユー』は、不死身の住人たちが支配する高級マンションを舞台に、ひとりのメイドが命懸けの戦いを繰り広げるホラーアクションコメディだ。ゴア描写とブラックユーモアを惜しみなく詰め込んだ本作は、整ったホラー演出よりも、血みどろの快感と勢いで押し切ることを明確に選んでいる。そこに映画初主演のザジー・ビーツが加わることで、単なる騒々しいB級ホラーとは一線を画す強度が生まれた。

血みどろアクションとしての快感と、反復が生む賛否

本作最大の魅力は、『レディ・オア・ノット』を彷彿とさせる、血みどろのホラーアクションが放つ純粋な勢いだ。同じような戦いが繰り返される場面は少なくないが、相手が不死身であるがゆえに、身体を破壊してもなお立ち上がってくるという悪趣味な面白さがある。人体損壊描写の容赦なさは、バイオレンスホラーのファンにとって間違いなく大きな見どころとなるだろう。

一方で、その”不死身”という設定は、痛快さと裏腹に諸刃の剣でもある。敵を倒しても決着が見えにくく、戦いが続くほど「いつまで続くのか」という感覚が募るため、テンポが乗り切れない場面も正直なところある。終盤に向かうにつれて“ハチャメチャ”さはさらに加速し、物語の緊張感よりも勢いで押し切る展開が続く。派手で面白いことは確かだが、そこは好みの分かれるところだろう。

それでも本作は、整った恐怖演出や重厚なドラマで魅せるタイプの映画ではない。ゴア、アクション、ブラックユーモアを惜しみなく浴びせ続けるホラーエンタメとして、割り切って楽しむ作品だ。多少の反復や荒っぽさも込みで、血しぶきと暴力の快感で観客をねじ伏せるパワーは十分に備わっている。

“ホラーゲーム的”な建物探索の面白さと、姉妹ドラマの弱さ

不死身の住人たちが支配する謎めいた建物というコンセプトも、本作の楽しさを底から支えている。舞台となる高級マンション「バージル」は、単なる閉鎖空間ではなく、危険な住人たちが各所に潜む異様なダンジョンとして機能しており、エイジアが階層を進みながら戦い抜いていく構造には、ホラーゲームをプレイしているような独特の感覚がある。

住人やフロアごとに異なる部屋全体の個性も、作品の冒険感を着実に強めている。悪魔崇拝者たちの巣窟という設定はかなり大味だが、部屋ごとに仕掛けられた不気味さや悪趣味なビジュアルには、「次は何が出てくるのか」という期待を持続させる力がある。物語の整合性を追うより、建物そのものをアトラクションとして体験する映画——本作はそういう割り切りのうえに成立している。

ただし、物語の軸となるはずのエイジアとマリアの姉妹関係については、描き込みの物足りなさが残る。エイジアが命懸けでマリアを探す動機は明確だが、ふたりの関係性に深く感情移入できるだけの尺は与えられておらず、ドラマとしての重みはどうしても薄い。

もっとも、本作が目指しているのはあくまでホラーアクションコメディとしての派手な快感であり、そこに重厚な人間ドラマを求めるのは、そもそも的外れかもしれない。その割り切りをどこまで受け入れられるかで、本作の印象は大きく変わってくるだろう。

映画初主演ザジー・ビーツが支える推進力

本作で映画初主演を務めるザジー・ビーツの存在感も、見逃せない要素だ。『デッドプール2』や『ジョーカー』で強い印象を刻んできた彼女は、本作では高級マンションに迷い込んだメイド、エイジアを演じ、荒削りな物語を真正面から引っ張っていく。作品自体はかなり荒っぽく、血みどろの展開も容赦ないが、ビーツの佇まいが加わることで、単なる騒々しいホラーアクションでは終わらない芯の強さが生まれている。

特にアクション面では、彼女の身体の使い方と迷いのない勢いが、そのまま映画の推進力になっている。襲いかかる住人たちを相手に、殴り、蹴り、逃げ、そして再び立ち向かっていく姿には、主演として画面を支えるだけの説得力がある。不死身の敵との戦いが反復的に映る場面でも、エイジアの必死さとビーツ自身のエネルギーが、観客を次の場面へと引っ張り続ける。

ビーツの主演としての牽引力やアクションスターとしての魅力は、本作の評価を押し上げるポイントだ。物語やキャラクターの掘り下げに物足りなさが残る作品ではあるが、彼女の存在感と躍動感が本作の核にあることは疑いようがない。『ゼイ・ウィル・キル・ユー』は、ザジー・ビーツがホラーアクションの主演としても十分に映えることを証明した一作だ。


『ゼイ・ウィル・キル・ユー』は、5月8日(金)の日本公開に合わせて観るべき、純粋なホラーエンタメの快作だ。物語の精巧さや人間ドラマの深みを求める観客には物足りなさが残るかもしれないが、血しぶきとアクションと悪趣味なユーモアを一気に浴びたいなら、これ以上ない選択肢のひとつといえる。そしてなにより、ザジー・ビーツという主演の存在が、本作を単なる消費型ホラーで終わらせていない。スクリーンで彼女の奮闘を目撃する価値は、十分にある。

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