映画『クロノス・カイロス』(2025)を紹介&解説。
映画『クロノス・カイロス』概要
映画『クロノス・カイロス』は、フィンランドのロックミュージシャン、グラフィックデザイナー、作家として活動するヘッラ・ウルッポが長編映画監督デビューを果たしたシュールレアリズムSF。
監督自身の離婚や喪失、耳鳴りの体験をベースに、恋人に去られた男が、甲殻類アレルギーの殺し屋とともに荒野をさまよう奇妙な旅を描く。スペイン・アンダルシアの山岳地帯を舞台に、モノクロームの映像、ブラックユーモア、幻想的な出来事を組み合わせる。
主演はトニ・“プロトニ”・ヤルヴィネン。共演にミラ・ルオティ、カリ・レイニ、共同脚本・製作も務めるミカ・ラッティら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『クロノス・カイロス』 |
|---|---|
| 原題 | Kronos Kairos |
| 製作年 | 2025年 |
| 本国公開日 | 2025年11月7日 |
| 日本公開日 | 2026年9月11日 |
| ジャンル | SF/ドラマ |
| 製作国 | フィンランド |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 70分 |
| 監督・撮影・編集 | ヘッラ・ウルッポ |
|---|---|
| 脚本 | ミカ・ラッティ/ヘッラ・ウルッポ |
| 製作 | ミカ・ラッティ/ヘッラ・ウルッポ/トニ・ヤルヴィネン/ヤリ・サラスヴオ/マリスカ/ブー・マルムベリ/ヤリ・ラハテイネン |
| 作曲 | HRDMNN |
| 出演 | トニ・“プロトニ”・ヤルヴィネン/ミラ・ルオティ/カリ・レイニ/ミカ・ラッティ/テロ・ホーグルンド |
| 製作 | Kovameno |
| 配給 | Elävän kuvan keskus ELKE ry(フィンランド)/UPLINK、KUJIRA ROUTE(日本) |
あらすじ
誕生日を祝う席で、男は恋人から「新しい男ができた」と告げられる。彼女が去った日から、男の耳には鳴りやまない音が響き始める。
嫉妬と喪失にのみ込まれた男は、彼女が使っていたダンスポールを切断してしまう。壊してしまったものを元に戻すため、新しいポールを建てようとする男。
やがて荒野をさまよう彼は、甲殻類アレルギーを抱えた殺し屋と出会う。奇妙な二人旅の中で、現実なのか幻想なのかも定かではない不可解な出来事が次々と起こっていく。
主な登場人物(キャスト)
男(トニ・“プロトニ”・ヤルヴィネン):誕生日に恋人から別れを告げられ、その後、耳鳴りに悩まされる主人公。失われた人生の均衡を取り戻そうと荒野を旅する。
女(ミラ・ルオティ):主人公の恋人だった女性。別の男性ができたことを告げて彼のもとを去り、男が喪失と混乱へ陥るきっかけとなる。
作品の魅力解説
離婚と耳鳴りを“宇宙的な苦悩”へ変換する異色SF
物語の出発点にあるのは、恋人との別れや耳鳴りという非常に個人的な体験。しかし本作は、それを現実的な離婚ドラマとして描くのではなく、男が荒野をさまよい、奇妙な殺し屋と出会い、不可解な出来事に巻き込まれていくシュールレアリズムSFへと変換する。
ヘッラ・ウルッポ自身の離婚や耳鳴りの経験を下敷きにしており、極めて私的な感情を奇妙で巨大な映画世界へ膨らませた作品となっている。
アンダルシアの荒野を切り取るモノクローム
撮影場所となったのはスペイン・アンダルシア。乾いた山岳地帯をモノクロームで撮影することで、現実の土地でありながら、どこか別の惑星のようにも見える風景を作り出している。
監督・撮影・編集をウルッポ自身が担当。数多くのミュージックビデオを手掛けてきた映像作家としての感覚を、70分の長編映画へ持ち込んでいる点も特徴だ。
深刻な喪失とブラックユーモアの同居
恋人との別れ、孤独、耳鳴りといった重い題材を扱いながら、「新しいダンスポールを建てなければならない」「相棒となる殺し屋は甲殻類アレルギー」といった奇妙な設定が随所に入り込む。
悲劇をそのまま悲劇として語らず、不条理やブラックユーモアの中に置き直すことで、主人公の精神状態そのものを体験するような独特のロードムービーとなっている。
