『震える舌』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

映画『震える舌』(1980)を紹介&解説。


映画『震える舌』概要

映画『震える舌』は、作家三木卓が自身の体験をもとに発表した同名小説を、野村芳太郎監督(『砂の器』『八つ墓村』)が映画化した闘病ドラマ。小さな傷から破傷風を発症した幼い娘と、病状を見守る両親が味わう恐怖、疲弊、無力感を、ホラー/スリラー風の演出で描く。出演は渡瀬恒彦十朱幸代若命真裕子中野良子ら。

作品情報

日本版タイトル 『震える舌』
英題 Writhing Tongue
製作年 1980年
日本公開日 1980年11月22日
ジャンル 医療ドラマホラー/スリラー
製作国 日本
原作 三木卓『震える舌』(小説)
上映時間 114分
監督 野村芳太郎
脚本 井手雅人
製作 野村芳太郎/織田明
撮影 川又昂
編集 太田和夫
美術 森田郷平
音楽 芥川也寸志/小熊達弥
出演 渡瀬恒彦/十朱幸代/若命真裕子/中野良子/宇野重吉/北林谷栄/蟹江敬三
製作・配給 松竹

あらすじ

千葉郊外の団地で暮らす三好昭と妻の邦江、幼い娘の昌子。ある日、湿地で遊んでいた昌子は、指に小さな傷を負う。数日後、食べ物をうまく口にできず、不自然な歩き方を見せるようになった昌子は、突然激しい痙攣を起こして病院へ運ばれる。

診断された病名は破傷風。光や音のわずかな刺激にも発作を起こす昌子は、暗く閉ざされた病室で過酷な治療を受けることになる。眠ることもできず娘を見守り続ける昭と邦江も、病気への恐怖と極度の疲労によって精神的に追い詰められていく。

主な登場人物(キャスト)

三好昭(渡瀬恒彦):昌子の父親。娘のそばで懸命に看病を続けるが、病気を前に何もできない無力感や、自分も罹患したのではないかという恐怖に蝕まれていく。

三好邦江(十朱幸代):昌子の母親。幼い娘の苦痛を目の当たりにしながら、長期化する看病と不安によって心身ともに疲弊していく。

三好昌子(若命真裕子):湿地で負った小さな傷から破傷風を発症する少女。光や音にも反応して激しい痙攣を起こし、暗い病室で病気と闘うことになる。

能勢(中野良子):昌子の主治医。過酷な治療の中でも冷静さを失わず、医療チームとともに昌子の命を救おうと尽力する。

作品の魅力解説

病気を怪異のように描く闘病スリラー

タイトルや映像の印象から幽霊を扱ったホラー映画にも見えるが、本作に超自然的な怪物は登場しない。家族を襲うのは、小さな傷口から体内へ侵入した破傷風菌である。原因が現実に存在し、誰の日常にも起こり得るからこそ、その恐怖は幽霊や悪魔以上に逃げ場がない。病状の悪化を容赦なく映し出す演出によって、闘病ドラマを肉体的・心理的なスリラーへ変えている。

目をそらしたくなるほど生々しい子役の演技

昌子役の若命真裕子による演技は、本作の恐怖を支える最大の要素である。硬直する身体、血のにじむ口元、絶叫を伴う痙攣が生々しく表現され、幼い子どもの苦痛を見守ることしかできない観客にも強烈な無力感を味わわせる。怖さを演出するための見世物ではなく、病気が本人と家族から日常を奪っていく過程として真摯に描いているため、鑑賞には相応の精神的な負担を伴う。

親の矛盾した感情をすべて受け止める

昭と邦江の内面には、娘を救いたいという愛だけでなく、自分への感染を恐れる気持ち、もっと注意していればという後悔、逃げ出したいという諦観、疲労による怒りやパニックが渦巻く。本作はそれらを親として失格な感情と断罪せず、極限状態に置かれた人間の自然な反応として描く。混沌とした感情を重ねながらも、物語の芯には消えることのない家族への愛が通っている。

音楽と病院描写がもたらす重圧

時代を感じさせるシンセサイザーの音色や、冒頭と終盤で響く重い弦の音は、病状への不安と「あのとき気をつけていれば」という後悔を増幅させる。一方、医師や看護師たちは過度に英雄化されず、淡々としながらも真摯に治療へ取り組む。その冷静な病院側と、感情が崩壊していく家族側の対比が、医療現場の現実味をさらに強めている。

病状の凄惨な描写や子役の演技を評価する声が多く、一般的なホラーとは異なるものの「ホラー以上に怖い」と語られてきた異色作である。

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