映画界の巨匠クエンティン・タランティーノが、急速に変化する配給システムへの不満を表明し、演劇での新境地を模索している。
「今じゃ映画って何なんだ?」――サンダンス映画祭に登場したクエンティン・タランティーノは、現代の映画配給システムについて痛烈な批判を展開した。2025年1月、ユタ州パークシティで開催された同映画祭で、映画評論家のエルヴィス・ミッチェル氏との対談に応じた彼は、怒りのこもった口調で映画界の現状への不満を吐露したという。
配給システムの「劇的な悪化」を痛烈批判したタランティーノ
「4週間だけ形だけの劇場公開をして、それで映画って言えるのか? そして2週目には家でテレビで見られる」とタランティーノはやるせない感情を吐き出した。『パルプ・フィクション』や『キル・ビル』といった数々の名作を生み出してきた巨匠は、ストリーミングサービスの台頭による映画体験の変容を強く懸念している。
「97年でさえひどかったし、2019年もひどかった。そして2019年が映画の最後の年だったよ」と彼は続ける。1990年代から映画界を牽引してきた監督の目には、コロナ禍以降の配給システムの変化が、映画文化の根幹を揺るがすものとして映っているようだ。
特に、劇場公開からストリーミング配信までの期間が短縮化している現状については「今や劇場公開なんて形だけのショー(見せ馬)でしかない。そう、2週間後にはこのストリーミングやあのストリーミングで見られます、ってさ」と、これまでにない辛辣な言葉で批判を展開した。


演劇創作に見出す新たな可能性
そんなタランティーノが次に見据えるのは、演劇での創作活動である。「もし大失敗だったら、映画化はしないだろうね。でも大ヒットしたら? それが最後の映画になるかもしれない」と、新たな挑戦への意欲を語った。特に演劇については「最後のフロンティア」と表現し、映画とは異なる魅力を強調する。
「演劇をやり遂げるってのは大きな挑戦なんだよ。僕にできるかどうかも分からない。だからこそ挑戦したい」。30年にわたって映画製作の第一線で活躍してきた巨匠が、あえて未知の領域に足を踏み入れようとしている。
変わりゆく映画界へ抱えるタランティーノの複雑な思い
とはいえ、タランティーノが映画から完全に距離を置くわけではない。来月5歳になる息子と2歳半の娘の存在も、彼の創作活動に大きな影響を与えている。「子どもたちが理解できないような年齢で撮影の旅に出るというのは、魅力的じゃないんだ。最終作品になるであろう映画は、息子が少なくとも6歳になるまでは撮りたくない」と語る彼の表情からは、映画への深い愛着が透けて見える。
アメリカでの執筆活動と、家族との時間。そして演劇という新たな挑戦。タランティーノは今、映画界の激動の時代に、クリエイターとしての可能性を模索し続けている。



