映画『オズの魔法使』(1939)を紹介&解説。
映画『オズの魔法使』概要
映画『オズの魔法使』は、1939年公開、ヴィクター・フレミング監督が手がけた、L・フランク・ボームの児童文学を映画化したミュージカル・ファンタジーの名作。竜巻で不思議な国へ迷い込んだ少女が、故郷へ帰るため仲間と旅を重ね、自分に必要な力と向き合っていく。主演はジュディ・ガーランド、共演にフランク・モーガン、レイ・ボルジャー、ジャック・ヘイリー、バート・ラーら。
作品情報
日本版タイトル:『オズの魔法使』
原題:The Wizard of Oz
製作年:1939年
日本公開日:1954年12月25日
ジャンル:ミュージカル/ファンタジー
製作国:アメリカ
原作:L・フランク・ボームの児童小説『オズの魔法使い』
上映時間:101分
物語上の次作(※):『オズ』(1985)
スピンオフ①:『オズ はじまりの戦い』(2013)
スピンオフ②:『ウィキッド ふたりの魔女』(2024)、『ウィキッド 永遠の約束』(2025)
(※シリーズではない)
監督:ヴィクター・フレミング
製作:マーヴィン・ルロイ
脚本:ノエル・ラングレー/フローレンス・ライアソン/エドガー・アラン・ウルフ
撮影:ハロルド・ロッソン
編集:ブランチ・シーウェル
作曲:ハーバート・ストサート
楽曲:ハロルド・アーレン
作詞:E・Y・ハーバーグ
出演:ジュディ・ガーランド/フランク・モーガン/レイ・ボルジャー/ジャック・ヘイリー/バート・ラー/ビリー・バーク/マーガレット・ハミルトン
製作:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)
配給:ロウズ社
あらすじ
カンザス州の農場で暮らす少女ドロシーは、竜巻に巻き込まれて家ごと不思議な国オズへ運ばれてしまう。故郷へ帰る方法を求め、オズの魔法使いに会うため黄色いレンガの道を旅することに。道中でかかし、ブリキの木こり、臆病なライオンと出会い、それぞれの願いを胸にエメラルド・シティを目指す。
主な登場人物(キャスト)
ドロシー・ゲイル(ジュディ・ガーランド):カンザス州の農場で暮らす少女。竜巻で不思議な国オズへ迷い込み、故郷へ帰るため魔法使いを訪ねる旅に出る。仲間との出会いを通して、自分にとって大切なものを見つめ直していく。
かかし(レイ・ボルジャー):畑に立つかかし。自分には脳みそがないと思い込み、知恵を得るためオズの魔法使いを探す旅に同行する。
ブリキの木こり(ジャック・ヘイリー):全身が金属でできた木こり。自分には心がないと信じており、本当の心を手に入れることを願って旅に加わる。
臆病なライオン(バート・ラー):自分の臆病さに悩むライオン。勇気を求めてドロシーたちとともに旅をする。
オズの魔法使い(フランク・モーガン):オズの国を支配するとされる神秘的な存在。ドロシーたちの願いをかなえる人物として語られている。
グリンダ(ビリー・バーク):オズの国の北を治める善良な魔女。オズに迷い込んだドロシーを導き、魔法使いのもとへ向かうよう助言する。
西の悪い魔女(マーガレット・ハミルトン):オズの西を支配する邪悪な魔女。妹の死をきっかけにドロシーを憎み、魔法の靴を奪おうとする。
エムおばさん(クララ・ブランディック):カンザスの農場でドロシーを育てる叔母。
ヘンリーおじさん(チャーリー・グレープウィン):ドロシーの叔父で農場を営む穏やかな人物。
トト:ドロシーの愛犬。竜巻で彼女とともにオズの国へ運ばれる。
簡易レビュー・解説
1939年公開の本作は、ハリウッド黄金期のミュージカル映画を代表する1本として知られる。とりわけジュディ・ガーランドが歌う「Over the Rainbow(虹の彼方に)」は映画史に残る名曲であり、ハロルド・アーレン作曲、E・Y・ハーバーグ作詞による楽曲はアカデミー賞歌曲賞を受賞した。物語の中では、仲間たちによる歌やダンスを織り交ぜたミュージカル演出が、幻想的な世界観を軽やかに広げていく。
視覚面でも本作は当時の映画技術の粋を集めている。CGが存在しない時代でありながら、巨大なセットや精巧な衣装、美術によってオズの国の鮮やかな世界を作り上げた。撮影にはテクニカラー方式が用いられ、幻想的な色彩の世界を実現している。
特に印象的なのが、物語冒頭のカンザスの場面がセピア調で描かれ、オズの国へ到着した瞬間に色彩が一気に広がる演出である。このカラーへの転換は映画史でも象徴的な瞬間として知られ、観客にまるで夢の世界が開けるような輝きを感じさせる。こうした音楽、演出、美術の融合が、『オズの魔法使』を時代を超えて愛されるファンタジー作品にしている。
『オズの魔法使』内容(ネタバレ)
カンザスの農場と竜巻
物語はカンザス州の農場から始まる。少女ドロシーは叔父と叔母とともに暮らしており、愛犬トトを大切にしている。しかし近所の女性とのトラブルをきっかけにトトが連れて行かれそうになり、ドロシーは家を飛び出す。やがて巨大な竜巻が発生し、ドロシーは家ごと空へ巻き上げられ、そのまま遠くの不思議な土地へ運ばれてしまう。
オズの国への到着
家が着地すると、そこはオズの国だった。北の良い魔女グリンダが現れ、ドロシーの家が東の悪い魔女を倒したことを告げる。魔女の履いていた魔法の靴はドロシーのものとなるが、西の悪い魔女はそれを奪おうと敵意を示す。ドロシーは故郷へ帰るため、エメラルド・シティにいるオズの魔法使いに会う旅に出る。
仲間との出会い
旅の途中でドロシーは、自分には脳みそがないと信じるかかし、本当の心を望むブリキの木こり、勇気が欲しい臆病なライオンと出会う。4人はそれぞれの願いをかなえてもらうため、エメラルド・シティを目指して旅を続ける。
エメラルド・シティと魔法使いの条件
一行はついにエメラルド・シティへ到着するが、魔法使いは恐ろしい姿で現れ、西の悪い魔女のほうきを持ってくるよう命じる。ドロシーたちは再び旅に出て、魔女の城へ向かう。
西の悪い魔女の城
西の悪い魔女は飛び猿を使ってドロシーを捕らえる。仲間たちは彼女を救うため城へ潜入するが、混乱の中でかかしに火がつく。ドロシーが水をかけると、その水が魔女にかかり、魔女は溶けて消えてしまう。
魔法使いの正体
ほうきを持ち帰ったドロシーたちの前で、トトがカーテンの裏に隠れていた老人を見つける。魔法使いの正体は仕掛けを使って幻影を見せていた普通の人間だった。彼は仲間たちに象徴的な贈り物を与え、すでに彼らが持っていた知恵、心、勇気を認める。
ドロシーの帰還
魔法使いはドロシーを気球で帰そうとするが、出発直前にトトを追って降りたため気球は飛び去ってしまう。そこへグリンダが現れ、魔法の靴を使えば帰れると教える。ドロシーは靴のかかとを3回鳴らし、家に帰りたいと願う。
カンザスへの目覚め
ドロシーが目を覚ますと、そこは竜巻の後のカンザスの農場だった。夢だったのか現実だったのかははっきりしないが、彼女は家族のいる場所こそが自分の帰るべき場所だと気づく。
作品トリビア
監督は実は複数いた
クレジット上の監督はヴィクター・フレミングだが、制作途中で複数の監督が交代している。リチャード・ソープ、ジョージ・キューカー、キング・ヴィダーらが一部の演出を担当しており、フレミングは途中で『風と共に去りぬ』の監督に呼ばれたため、カンザスの場面などはヴィダーが演出したとされる。
「Over the Rainbow」は削除されかけていた
現在では映画史に残る名曲だが、制作当初はテンポが遅く物語の進行を止めるとしてカットが検討されていた。しかし最終的に残され、アカデミー賞歌曲賞を受賞する歴史的な楽曲となった。
セピアからカラーへの切り替えは舞台的トリック
有名なカンザスからオズへの色彩の変化は特殊効果ではなく、セットと衣装をセピア色に塗装し、扉を開けた瞬間にカラーのセットへ切り替えるという実際の舞台的トリックで撮影された。
西の悪い魔女のメイク事故
西の悪い魔女を演じた俳優は、緑色のメイクと炎の演出の影響で撮影中に顔と手に火傷を負った。以降の危険なシーンはスタントが担当するよう変更された。
トトは俳優より高給だった
トトを演じた犬は週給125ドルで契約されており、当時のマンチキン役の俳優より高い報酬だったと記録されている。
公開当初は大ヒットではなかった
現在では名作として知られるが、公開当初の興行成績は製作費とほぼ同程度だった。1950年代以降のテレビ放送や再上映によって人気が高まり、アメリカ文化を代表する映画となった。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
