映画『オズ』(1985)を紹介&解説。
映画『オズ』概要
映画『オズ』は、『地獄の黙示録』などでの編集・音響でも知られるウォルター・マーチ監督が手がけた、L・フランク・ボームの続編小説を基にした1985年公開のディズニー製作による英米ダークファンタジー。少女が荒廃したオズに戻り、仲間とともに国を支配する邪悪な存在に立ち向かう。出演はフェアルーザ・バルク、ニコル・ウィリアムソン、ジーン・マーシュら。
作品情報
日本版タイトル:『オズ』
原題:Return to Oz
製作年:1985年
日本公開日:1986年3月15日
ジャンル:ファンタジー/アドベンチャー
製作国:アメリカ
原作:L・フランク・ボームの小説『オズの虹の国』『オズのオズマ姫』
上映時間:109分
実質上の前作(※):『オズの魔法使』(1939)
(※シリーズではない)
監督:ウォルター・マーチ
脚本:ウォルター・マーチ/ギル・デニス
製作:ポール・マスランスキー
製作総指揮:ゲイリー・カーツ
撮影:デヴィッド・ワトキン
編集:レスリー・ホジソン
作曲:デヴィッド・シャイア
出演:フェアルーザ・バルク/ニコル・ウィリアムソン/ジーン・マーシュ/パイパー・ローリー/マット・クラーク
製作:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ/シルバー・スクリーン・パートナーズII
配給:ブエナ・ビスタ・ディストリビューション
あらすじ
竜巻の冒険から半年後のカンザス。少女ドロシーは再びオズの記憶に苦しみ、治療のため病院へ送られる。嵐の夜、彼女は不思議な少女に導かれ再びオズの国へ迷い込む。だがそこはかつての王国ではなく荒廃していた。ドロシーは新たな仲間と出会い、国を支配する邪悪な存在に立ち向かうため旅に出る。
主な登場人物(キャスト)
ドロシー・ゲイル(フェアルーザ・バルク):カンザスに暮らす少女。竜巻でオズを訪れた体験を信じてもらえず苦しむが、再びオズの国へ迷い込み、荒廃した王国を救うため旅に出る。
ビリーナ(デニス・ブライヤー):ドロシーが連れて行くことになるおしゃべりな雌鶏。オズの国では言葉を話すことができ、旅の途中で重要な役割を果たす。
チク・タク(ショーン・バレット):オズの国に仕える機械仕掛けの兵士。体内のゼンマイで動き、誠実な性格でドロシーの旅に同行する。
カボチャ頭のジャック(ブライアン・ヘンソン):かぼちゃの頭を持つ不思議な人物。モンビ姫による犠牲者であり、ドロシーたちの仲間となって行動を共にする。
オズマ(エマ・リドリー):神秘的な少女。ドロシーをオズへ導く存在であり、王国の運命に関わる重要人物。
ノーム王(ニコル・ウィリアムソン):オズの国を脅かす邪悪な支配者。王国の住人たちを石に変え、地下の宮殿から国を支配している。
モンビ姫(ジーン・マーシュ):エメラルド・シティを支配する魔女のような存在。多くの“頭”を取り替えることができる不気味な能力を持つ。
エムおばさん(パイパー・ローリー):ドロシーの保護者である叔母。オズの話を信じないまま、彼女の治療のため病院へ連れて行く。
ヘンリーおじさん(マット・クラーク):ドロシーの叔父。農場で暮らしながら彼女を心配している。
簡易レビュー・解説
『オズの魔法使』(1939)の実質的な続編として製作された本作は、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズが手がけた作品でありながら、同スタジオのファミリー向け作品の中でも特に異色とされるダークファンタジーである。原作はL・フランク・ボームによる「オズ」シリーズの続編小説で、映画は主に『オズの虹の国』と『オズのオズマ姫』の要素を基に構成されている。
物語は前作の明るいミュージカル色とは対照的に、荒廃したオズの国や不気味な敵キャラクター、幻想と恐怖が入り混じる世界観によって独特のトーンを形成している。特に頭を取り替える魔女モンビや車輪で走るホイーラーズなどの造形は強烈な印象を残し、ディズニー作品の中でも屈指の不気味さを持つ作品としてしばしば語られてきた。
その一方で、機械仕掛けの兵士チク・タクやカボチャ頭のジャックといったユーモラスな仲間たちも登場し、奇妙さと童話的想像力が同居する世界を生み出している。公開当時は評価が分かれたが、後年では独特の美術やクリーチャー造形、原作に比較的忠実な世界観などが再評価され、カルト的な人気を持つファンタジー映画として位置づけられている。
『オズ』内容(ネタバレ)
オズの記憶に苦しむドロシー
物語は『オズの魔法使い』の冒険から約半年後のカンザスで始まる。少女ドロシーは竜巻で訪れたオズの国の出来事を語り続けているが、周囲の大人たちはそれを幻想だと思い込み、心配したエムおばさんは彼女を治療のための病院へ連れて行く。そこでは“記憶を消す治療”として電気を使った装置が用意されており、ドロシーは恐怖を感じる。嵐の夜、彼女は病院で出会った不思議な少女に導かれ、川に流される形で再びオズの世界へと導かれる。
荒廃したオズの国
ドロシーがたどり着いたオズは、かつての輝きを失った荒れ果てた世界だった。エメラルド・シティは破壊され、街の人々は石に変えられている。彼女は旅の途中で、言葉を話す雌鶏ビリーナや機械仕掛けの兵士チク・タクと出会い、仲間として行動を共にするようになる。彼らの案内によって、この国が邪悪な支配者たちによって奪われてしまったことを知る。
モンビ姫とホイーラーズの脅威
ドロシーは仲間とともにエメラルド・シティへ向かうが、そこでは魔女モンビ姫が城を支配していた。モンビは多数の“頭”を取り替える不気味な能力を持つ存在であり、彼女に仕えるホイーラーズと呼ばれる奇妙な集団がドロシーを執拗に追い回す。
モンビの城からの脱出
オズの現状を知るために城に入ったドロシーは、頭を取り替える能力を持つモンビ姫に囚われかけるが、仲間たちの助けを借りて脱出に成功する。城の中では、眠っている多数の“頭”が並ぶ部屋を通り抜けるなど不気味な場面が続く。ドロシーはビリーナやチク・タク、そしてカボチャ頭のジャックと再び合流し、空を飛ぶ生き物ガンプの力を借りて城から逃げ出す。
ノーム王の地下王国へ
ドロシーたちは、オズの国を荒廃させた真の支配者がノーム王であることを知る。彼は地下の王国からオズを支配し、エメラルド・シティの住人たちを石に変えてしまった存在だった。ドロシーと仲間たちは地下の宮殿へ向かい、石にされた人々を元に戻すためノーム王に挑む。そこで彼らは、宮殿にある装飾品の中から本物の人物を当てるという試練を課される。
ビリーナがもたらす逆転
仲間たちが次々と失敗して石に変えられていく中、最後に残ったドロシーは絶体絶命の状況に追い込まれる。しかしビリーナが偶然落とした卵をノーム王が口にしたことで事態は一変する。卵はノーム族にとって致命的な存在であり、ノーム王はその力によって弱体化する。結果として石にされた仲間やオズの人々は元の姿に戻り、王国は解放される。
オズの国の再生
ノーム王が倒されたことでオズの国は平和を取り戻し、正当な王位を持つオズマが王として迎えられる。ドロシーは仲間たちと別れ、再びカンザスへ帰ることになる。現実の世界に戻った彼女は、嵐の夜に起きた出来事を通してオズでの冒険を思い出すが、それは夢とも現実ともつかない形で心に残り続ける。
作品トリビア
監督が一度解雇されている
本作の監督ウォルター・マーチは、撮影開始から間もない段階で進行の遅れを理由にディズニー側から一度解雇されている。しかし映画人の仲間たちがスタジオに働きかけたことで復帰し、最終的に完成まで指揮をとることになった。
監督は編集の巨匠であり本作が唯一の監督作
ウォルター・マーチは映画編集と音響デザインの分野で知られる人物で、『地獄の黙示録』『ゴッドファーザー』などに関わったことで知られる。本作は彼にとって長編映画の監督デビュー作であり、結果的に唯一の監督作品となった。
原作シリーズの続編をベースに映画化
映画は1939年版『オズの魔法使い』の続編のように描かれているが、実際にはL・フランク・ボームの小説『オズの虹の国』と『オズのオズマ姫』を基に構成されている。そのため原作シリーズに近い設定やキャラクターが多く登場する。
ルビーの靴は権利料を支払って使用
原作ではドロシーの靴は銀色だが、1939年映画版ではルビー色に変更された。このデザインは当時の映画独自の設定だったため、本作で使用する際には権利料が支払われたとされている。
公開当時は不振、後に再評価
公開当時は興行成績が振るわず評価も分かれたが、独特のダークな世界観やクリーチャー造形、原作に近い世界観などが後年再評価され、現在ではカルト的人気を持つファンタジー作品として語られている。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
