映画『マーベルズ』(2023)を紹介&解説。
映画『マーベルズ』概要
映画『マーベルズ』は、ニア・ダコスタ監督(『キャンディマン』)が、キャプテン・マーベル、モニカ・ランボー、ミズ・マーベルという異なる立場の3人のヒーローによるチーム結成を描くSFヒーローアクション。『キャプテン・マーベル』の続編であり、ドラマシリーズ『ワンダヴィジョン』『ミズ・マーベル』で描かれてきたキャラクターたちの物語も合流する。能力を使うたびに互いの居場所が入れ替わってしまう異常現象に巻き込まれた3人が、クリー人の革命家ダー・ベンによる脅威に立ち向かっていく。主演はブリー・ラーソン、共演にテヨナ・パリス、イマン・ヴェラーニ、ゾウイ・アシュトン、パク・ソジュン、サミュエル・L・ジャクソンら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『マーベルズ』 |
|---|---|
| 原題 | The Marvels |
| 製作年 | 2023年 |
| 本国公開日 | 2023年11月10日 |
| 日本公開日 | 2023年11月10日 |
| ジャンル | アクション/ヒーロー/SF/アドベンチャー |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | マーベル・コミック(コミック) |
| 上映時間 | 105分 |
| 監督 | ニア・ダコスタ |
|---|---|
| 脚本 | ニア・ダコスタ/ミーガン・マクドネル/エリッサ・カラシク |
| 製作 | ケヴィン・ファイギ |
| 製作総指揮 | ルイス・デスポジート/ヴィクトリア・アロンソ/メアリー・リヴァノス/ジョナサン・シュワルツ/マシュー・ジェンキンス |
| 撮影 | ショーン・ボビット |
| 編集 | カトリン・ヘドストロム/エヴァン・シフ |
| 作曲 | ローラ・カープマン |
| 出演 | ブリー・ラーソン/テヨナ・パリス/イマン・ヴェラーニ/ゾウイ・アシュトン/ゲイリー・ルイス/パク・ソジュン/ゼノビア・シュロフ/モハン・カプール/サーガル・シェイク/サミュエル・L・ジャクソン |
| 製作 | マーベル・スタジオ |
| 配給 | ウォルト・ディズニー・スタジオ |
あらすじ
クリーの支配から自身のアイデンティティを取り戻し、宇宙各地で活動を続けるキャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァース。しかし、彼女が過去に起こした行動は思わぬ結果を招いていた。
そんな中、クリー人の革命家ダー・ベンに関係する異常なワームホールを調査したことで、キャロルの能力がS.A.B.E.R.のエージェントであるモニカ・ランボー、キャプテン・マーベルに憧れる高校生ヒーローのカマラ・カーン/ミズ・マーベルの能力と絡み合ってしまう。
3人はそれぞれが力を使うたびに互いの居場所が入れ替わる奇妙な現象に翻弄されるが、宇宙規模の危機を食い止めるため、即席のチームとして力を合わせることになる。
主な登場人物(キャスト)
キャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン):強大なコズミック・パワーを持ち、宇宙各地を飛び回るヒーロー。何事も自分ひとりで背負おうとする強い責任感を持つ一方、過去の行動が招いた結果とも向き合うことになる。
モニカ・ランボー(テヨナ・パリス):キャロルの親友だったマリア・ランボーの娘で、宇宙ステーションS.A.B.E.R.に所属するエージェント。『ワンダヴィジョン』で起きた事件を経て特殊な能力を獲得した。幼少期にはキャロルを慕っていたが、現在のふたりの間には距離が生まれている。
カマラ・カーン/ミズ・マーベル(イマン・ヴェラーニ):ニュージャージー州ジャージーシティに暮らす高校生ヒーロー。アベンジャーズ、特にキャプテン・マーベルの熱狂的なファンで、バングルをきっかけに光を具現化する能力を発現した。念願だったキャロルとの出会いに興奮しながら、予想以上に危険な戦いへ飛び込んでいく。
ダー・ベン(ゾウイ・アシュトン):キャロルに強い恨みを抱くクリー人の革命家。故郷を救うという目的のためならば他者を犠牲にすることも辞さず、キャロルたちと激しく対立する。
ヤン王子(パク・ソジュン):歌と踊りを交えてコミュニケーションを取る独特の文化を持つ惑星アラドナの王子。キャロルとは以前から面識があり、彼女との意外な関係も明らかになる。
ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン):かつてアベンジャーズ結成を主導した元S.H.I.E.L.D.長官。本作では宇宙ステーションS.A.B.E.R.を指揮し、モニカらと共に宇宙で発生する異常事態へ対処する。
作品の魅力解説・レビュー
強すぎるキャプテン・マーベルに課された「チームプレイ」という難題
キャプテン・マーベルはMCUでも屈指の戦闘能力を持つヒーローであり、その圧倒的な強さ自体がキャラクターの重要な個性でもある。単純に敵をさらに強くしたり、彼女を弱体化させたりするだけでは、その魅力を損なう危険もあった。そこで本作が用意したのが、能力を使用するとキャロル、モニカ、カマラの居場所が入れ替わってしまうというトラブルだ。
どれだけ本人が強くても、好きなタイミングで好きな場所から攻撃できなければひとりでは戦えない。これまで単独行動を続け、何でも自分で解決しようとしてきたキャロルが、強制的に他人との連携を覚えなければならなくなる。キャプテン・マーベルの強さそのものを否定せず、「他者と協力すること」を新たな課題として与えた点は、本作ならではの続編の作り方となっている。
物語そのものを明るくするカマラ・カーンという「光」
三人はいずれも光やエネルギーを操る能力の持ち主だが、物語そのものに最大の“光”をもたらす存在といえば、やはりカマラ・カーンをおいて他にない。
キャロルとモニカのあいだには長年のわだかまりがあり、再会したからといって、かつての関係へたやすく立ち返れるわけではない。その気まずい空気のなかへ、キャプテン・マーベル本人に会えたというだけで大興奮するカマラが飛び込み、ぎくしゃくした二人のあいだをエネルギッシュに駆け回る。憧れのヒーローを前にした少女の無邪気さと、いざ戦端が開かれれば仲間を救おうと必死に奔走するヒーローとしての顔——その両面をイマン・ヴェラーニが実に生き生きと演じ分けており、三人のあいだに生まれる温度差そのものが、そのままコメディとして機能している。
「入れ替わり」をアクションへ変換した目まぐるしい戦闘
能力を発動するたびに三人の位置が切り替わるという設定は、単にキャラクターを翻弄するためだけの仕掛けではない。
キャロルが宇宙空間で敵を打った次の瞬間、カマラがまったく別の場所へ飛ばされ、さらにモニカが入れ替わる——そうして、離れた場所で並行して進んでいた戦闘が、一瞬のうちに一本の線へとつながっていく。誰が攻撃を繰り出し、次は誰がどこへ現れるのか、それを目で追うだけでも息つく暇のない、目まぐるしいアクションが展開していく。そしてやがて三人がこの現象の仕組みを呑み込み、入れ替わりそのものを戦術として能動的に用い始める——その転換もまた実に面白い。
当初は明白な弱点でしかなかった現象が、チームとしての成長を経て、いつしか強力な武器へと変貌していく。そうした構成の妙が、このアクションを支えている。
ダー・ベンが突きつける「資源を奪わなければ生きられない」という問題
本作のヴィランであるダー・ベンは、単純な世界征服を企てるだけの悪役ではない。その行動の根底には、自分たちの故郷と、そこに暮らす人々を救わなければならないという切迫した事情が横たわっている。
空気、水、太陽のエネルギー——生命に不可欠なものが次々と失われ、生き延びるためには他者から資源を奪う以外に道はないと思い定めたとき、人はどこまで残酷な選択に踏み込めるのか。本作は宇宙規模のヒーロー映画という体裁をまといながら、その内側に、戦争と資源の争奪という重い問いをしっかりと組み込んでいる。
そして何より見逃せないのは、この危機が主人公キャロルの過去と決して無関係ではないという一点だ。正しいと信じて取った行動が、その先に予想だにしなかった結果を招き寄せてしまう——キャロルは「最強のヒーロー」であると同時に、自らの選択がもたらした責任を背負う、ひとりの人間として描き出されていく。
「無敵のヒーロー」ではなく、そのままのキャロルを受け入れる仲間
本作をもう一方で支える軸となるのが、家族や仲間という存在である。
キャロルは人一倍責任感が強いがゆえに、ひとたび問題が持ち上がれば、それを自分ひとりで背負い込もうとしてしまう。しかしモニカやカマラと行動をともにするなかで、彼女はすべてを自分だけで抱え込む必要はないのだと、少しずつ気づいていく。周囲が本当に求めているのは、いついかなるときも完璧で、あらゆるものを救ってみせる「無敵のキャプテン・マーベル」ではない。たとえ失敗や後悔を抱えていようと、ありのままのキャロルを受け入れ、そばで支えてくれる人々がいる。
孤独に宇宙を駆け巡ってきたひとりのヒーローへ、「仲間がいることは弱さではない」と静かに伝えるこの物語において、三人のチーム結成は、シリーズをここまで見届けてきた者にこそ響く確かな意味を宿している。
105分のコンパクトさと引き換えに薄くなったドラマ
上映時間は105分。長尺化が進んでいた近年のMCU映画のなかでは異例なほどにコンパクトで、能力の入れ替わり、宇宙をまたにかけた冒険、アクション、コメディといった要素を、小気味よいテンポで一気に詰め込んでいる。歌によって意思を交わす惑星アラドナ、パク・ソジュン演じるヤン王子、猫の姿をしたフラーケンたちが引き起こす大騒動——かなり大胆に振り切った遊び心も随所にあり、重厚な超大作というよりは、軽快なスペースアドベンチャーとして肩肘張らずに楽しめる。
もっとも、そのコンパクトさは、そのまま弱点にもなっている。とりわけ、キャロルが過去の行動に対して抱える責任や後悔は、本作のドラマをもう一段深いところへ届かせ得た題材であっただけに、いま少し腰を据えて向き合わせてほしかったという思いは残る。大きな問題が比較的あっさりと解決へ流れ込んでいく箇所もあり、物語に据えられた重さに対して、その決着がいくぶん軽く感じられてしまう感は否めない。
それでもなお、キャロル、モニカ、カマラという三者三様の個性がぶつかり合う掛け合い、入れ替わりを逆手に取ったアクション、カマラの愛嬌、そしてMCUならではの宇宙規模の冒険——これらを105分という尺にまとめ上げた一本として、その仕上がりは十二分に軽快だ。良くも悪くも、観客がMCUのチームアップ映画に期待するものをまっすぐに楽しませてくれる作品となっている。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起|キャロル、モニカ、カマラが奇妙なチームに
キャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースは、かつてクリー帝国を支配していた人工知能スプリーム・インテリジェンスを破壊した。しかし、その結果クリーの母星ハラでは内戦が起こり、空気や水、太陽まで失われて荒廃。クリー人から見たキャロルは救世主ではなく、「アナイアレーター(破壊者)」と呼ばれる存在になっていた。
ハラを救おうとするクリーの指導者ダー・ベンは、強大な力を秘めたクォンタム・バンドの片方を発見。もう片方は、地球でキャプテン・マーベルに憧れている少女カマラ・カーン/ミズ・マーベルが持っていた。
ダー・ベンが宇宙のジャンプポイントを無理やり開いた影響で、光に関係する能力を持つキャロル、モニカ・ランボー、カマラの力が絡み合い、能力を使うたびに3人の居場所が入れ替わるようになる。
カマラは憧れのキャプテン・マーベル本人との出会いに大興奮するが、キャロルとモニカの再会は気まずい。幼いころキャロルを慕っていたモニカは、母マリアが亡くなったときにも地球へ戻らなかったキャロルに複雑な感情を抱えていた。
承①|救えない人々と、キャロルが残した傷跡
ダー・ベンの目的は、荒廃したハラを復活させること。そのため彼女は、キャロルにとって大切な惑星から必要な資源を奪おうとしていた。
最初の標的となったのは、スクラル人たちが暮らす惑星ターナックス。ダー・ベンは巨大なジャンプポイントを開き、惑星の大気をハラへ吸い上げてしまう。
キャロルたちは住民を救おうとするが、全員を助けることはできない。カマラは「ヒーローなら全員救うべきだ」と訴えるものの、キャロルは救える者を救うため撤退を決断する。
ここでカマラは初めて、憧れていたキャプテン・マーベルが何でも解決できる完璧なヒーローではなく、時には誰かを置いていく決断もしなければならない存在だと知る。
さらにキャロルは、自分がスプリーム・インテリジェンスを破壊したことでハラを解放したつもりだったが、その後の内戦と環境崩壊を招いてしまったことを告白する。彼女が長年地球へ帰らず宇宙を飛び回っていた背景には、自分の失敗を修復しようとする罪悪感があった。
承②|モニカとの和解と、さらに失われる世界
しかしモニカにとって、キャロルに事情があったことと、自分たち家族のもとへ戻ってこなかったことは別問題だった。ふたりは長年避けてきた感情をぶつけ合い、少しずつ関係を修復していく。
続いてダー・ベンが狙ったのは、水に恵まれた惑星アラドナ。ここではキャロルが外交上の理由からヤン王子と結婚していたことも判明する。
しかしダー・ベンは再びジャンプポイントを開き、今度はアラドナの水をハラへ奪っていく。さらに彼女は、カマラがもう片方のクォンタム・バンドを持っていることにも気づく。
再びひとつの惑星を完全には救えなかったカマラは、ヒーローになることが華やかな戦いだけではなく、救えない人々や苦しい決断とも向き合うことなのだと知っていく。
転|ダー・ベンとの最終決戦、モニカが別宇宙へ
空気と水をハラへ取り戻したダー・ベンが最後に必要としたのは太陽だった。彼女はキャロルの故郷である地球の太陽からエネルギーを奪い、ハラの太陽を復活させようとする。
キャロル、モニカ、カマラはダー・ベンとの最終決戦へ突入。一度は追い詰めるものの、ダー・ベンはカマラからもう片方のクォンタム・バンドを奪い、2本を同時に使用する。
しかし、その力はあまりにも強大で、ダー・ベン自身が耐えきれず死亡。その一方で、暴走したエネルギーによって宇宙に巨大な裂け目が生まれ、別宇宙へつながってしまう。
裂け目を閉じるため、モニカは自ら反対側へ渡ることを決断。キャロルとカマラの力を受け取って裂け目を修復することには成功するが、モニカが戻る前に裂け目は閉じてしまう。
ようやくキャロルとの関係を修復した直後、モニカは別宇宙へ取り残されることになる。
結|キャロルの贖罪と、新たなヒーローチームの始まり
戦いを終えたキャロルはハラへ向かい、自身の莫大なエネルギーを使って死にかけていたハラの太陽を再起動する。
かつて自分の行動によって崩壊させてしまった世界を、ようやく自らの手で救ったキャロル。その後はモニカが暮らしていた家へ移り住み、いつか彼女が帰ってくることを待つような生活を始める。
一方、今回の冒険でヒーローチームの可能性を知ったカマラは、『ホークアイ』のケイト・ビショップを訪問。若いヒーローたちを集め、新たなチームを作ろうと勧誘する。
そして別宇宙へ飛ばされたモニカが目を覚ますと、そこには亡くなったはずの母マリア・ランボーがいた。ただし、この世界のマリアはモニカを娘として知らず、ヒーロー「バイナリー」として生きている。
さらにX-MENのハンク・マッコイ/ビーストも登場。モニカがX-MENの存在する別宇宙へ迷い込んだことが明かされ、物語は幕を閉じる。
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ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
