映画『キャプテン・マーベル』(2019)を紹介&解説。
映画『キャプテン・マーベル』概要
映画『キャプテン・マーベル』は、アンナ・ボーデン&ライアン・フレック監督が、失われた記憶を追う戦士ヴァースことキャロル・ダンヴァースが、自らの正体と本来の力を取り戻していく姿を描くMCUのSFヒーロー・アクション。1990年代を舞台に、若き日のニック・フューリーやS.H.I.E.L.D.、クリーとスクラルの戦争など、それまでのMCUへつながる歴史も描かれる。主演はブリー・ラーソン、共演にサミュエル・L・ジャクソン、ベン・メンデルソーン、ラシャーナ・リンチ、ジュード・ロウら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『キャプテン・マーベル』 |
|---|---|
| 原題 | Captain Marvel |
| 製作年 | 2019年 |
| 本国公開日 | 2019年3月8日 |
| 日本公開日 | 2019年3月15日 |
| ジャンル | アクション/ヒーロー/SF/アドベンチャー |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | マーベル・コミック「キャプテン・マーベル」ほか(コミック) |
| 上映時間 | 124分 |
| 監督 | アンナ・ボーデン/ライアン・フレック |
|---|---|
| 脚本 | アンナ・ボーデン/ライアン・フレック/ジェニーヴァ・ロバートソン=ドウォレット |
| 製作 | ケヴィン・ファイギ |
| 製作総指揮 | ルイス・デスポジート/ヴィクトリア・アロンソ/ジョナサン・シュワルツ/パトリシア・ウィッチャー/スタン・リー |
| 撮影 | ベン・デイヴィス |
| 編集 | エリオット・グレアム/デビー・バーマン |
| 作曲 | ピナー・トプラク |
| 出演 | ブリー・ラーソン/サミュエル・L・ジャクソン/ベン・メンデルソーン/ラシャーナ・リンチ/ジュード・ロウ/アネット・ベニング/ジャイモン・フンスー/リー・ペイス/ジェンマ・チャン/クラーク・グレッグほか |
| 製作 | マーベル・スタジオ |
| 配給 | ウォルト・ディズニー・スタジオ |
あらすじ
クリー帝国の精鋭部隊スターフォースに所属する戦士ヴァースは、過去の記憶を失ったまま、司令官ヨン・ロッグのもとで戦闘訓練を続けていた。
変身能力を持つスクラル人との戦闘中、ヴァースは敵に捕らえられ、自身の記憶を探索される。断片的に蘇った記憶を追ううちにたどり着いた地球で、彼女はS.H.I.E.L.D.捜査官ニック・フューリーと出会い、自分がかつて地球でキャロル・ダンヴァースという名の空軍パイロットだった可能性を知る。
しかし、自分が信じてきたクリーとスクラルの戦争には別の真実が隠されていた。誰から力を与えられ、誰のために戦うのか。失われた過去を取り戻したキャロルは、他者によって定義されてきた自分自身を解放していく。
主な登場人物(キャスト)
キャロル・ダンヴァース/ヴァース/キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン):クリー帝国の戦士として活動する女性。過去の記憶を失っているが、両手から強力なエネルギーを放つ能力を持つ。地球で自分自身の過去を探索する。
ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン):後にアベンジャーズ計画を立ち上げるS.H.I.E.L.D.捜査官。本作ではまだ両目が健在で、地球へ現れたキャロルとともに事件を追う。
タロス(ベン・メンデルソーン):姿を自在に変えるスクラル人の指導者。キャロルの記憶に隠された情報を求めて地球へやってくる。
マリア・ランボー(ラシャーナ・リンチ):キャロルの親友で、かつて同じ空軍パイロットとして飛行していた女性。記憶を失ったキャロルへ過去を伝える重要な存在となる。
ヨン・ロッグ(ジュード・ロウ):クリー帝国の精鋭部隊スターフォースを率いる司令官。キャロルの能力を制御することを重視し、彼女へ感情を抑えるよう教える。
スプリーム・インテリジェンス(アネット・ベニング):クリー帝国を統治するAI。見る者が最も尊敬する人物の姿を取って現れる。
ミン・エルヴァ(ジェンマ・チャン):スターフォースの狙撃手。ヨン・ロッグの部隊でキャロルとともに戦う。
コラス(ジャイモン・フンスー):クリー帝国の戦士。スターフォースの一員として任務へ参加する。
ロナン(リー・ペイス):クリー帝国の告発者。スクラル人を敵視し、宇宙から強力な攻撃を行う。
フィル・コールソン(クラーク・グレッグ):S.H.I.E.L.D.の新人エージェント。フューリーとともに地球で起きた異常事態へ関わっていく。
グース:フューリーにも気に入られる、可愛らしい猫(?)
作品の魅力解説・レビュー
「証明する必要はない」――キャロルの物語を決定づける思想
本作を象徴するのが、キャロルがヨン・ロッグに対して示す「あなたに証明することは何もない」という姿勢だ。
キャロルは物語の大半で、周囲から感情を制御しろ、能力を抑えろ、自分の価値を証明しろと求められ続ける。しかし、そもそもキャロルの能力は、他人に認めてもらうためのものではない。
力を使うのか、使わないのか。どの程度使うのか。それを決める権利はキャロル自身にある。男性の評価基準に自分を合わせる必要も、相手が設定したルールの中で自分の強さを証明する必要もないという結論は、本作のヒーロー像を明確にしている。
「強すぎる主人公」であること自体に意味がある
キャプテン・マーベルについては、その圧倒的な能力ゆえに「強すぎて危機感がない」という評価も成立する。実際、力を完全に解放して以降のキャロルは、宇宙船を単独で破壊できるほど圧倒的だ。
しかし本作において、その強さは欠点であると同時に作品の意図でもある。キャロルが乗り越えるべき最大の障害は、より強い敵ではない。他者から植え付けられた記憶、価値観、制限を取り払い、最初から自分の中に存在していた力を自分のものとして受け入れることにある。
そのため、第1作のキャロルは「強すぎる」からこそ成立するヒーローでもある。
敵と味方が反転していくミステリー的構成
序盤ではクリーが秩序を守る側、スクラルが侵略者として提示されるが、キャロルが失われた記憶を調べるにつれて、彼女が教えられてきた歴史そのものが揺らぎ始める。
姿を変えられるスクラルという設定も、誰を信用してよいのかわからないサスペンスに利用される一方、最終的には「外見や所属だけで敵と決めつけること」の危険性へと接続する。
自分が信じてきた物語を疑い、自分自身で真実を確認する。キャロルのアイデンティティ回復と、戦争の真相を追うミステリーが同じ方向へ進む構成が巧みだ。
1990年代という時代設定と若きニック・フューリー
本作はMCUでは珍しく1990年代を主な舞台としている。レンタルビデオ店、ポケットベル、当時のコンピューターなど時代を象徴する小道具が随所に配置され、音楽にも1990年代を代表する楽曲が使われている。
さらに、後年のMCUでは威圧感ある指揮官として知られるニック・フューリーが、まだ若く、ユーモアのある捜査官として登場することも大きな魅力だ。
キャロルとの出会いは、後に彼が地球外の脅威と超人の存在を前提とした「アベンジャーズ計画」へ向かう重要な経験となる。
何度倒れても立ち上がってきた「人間」としての強さ
キャロルの真の覚醒を支えるのは、超人的能力を得た瞬間ではない。幼少期、自転車で転び、スポーツで倒され、軍で失敗し、それでも立ち上がってきた過去が連続して映し出される場面こそ、彼女の人格を象徴している。
宇宙最強クラスの能力を得る以前から、キャロルは失敗のたびに立ち上がってきた。キャプテン・マーベルの強さとは、エネルギーを放つ能力ではなく、倒されても自分で立ち上がる意思そのものだと示すことで、「最強ヒーロー」の物語に人間的な芯を与えている。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起|クリーの戦士ヴァース、地球へ
過去の記憶を失った女性戦士ヴァースは、宇宙帝国クリーの精鋭部隊スターフォースに所属し、指揮官ヨン・ロッグを師のように信頼していた。クリーと敵対する変身種族スクラルを危険な侵略者と教え込まれていたが、任務中に彼らの捕虜となり、記憶を探られたことで地球で暮らしていたらしい過去の断片が蘇り始める。
捕虜から脱出したヴァースは地球へ墜落。そこで若きS.H.I.E.L.D.捜査官ニック・フューリーと出会い、スクラルの追跡と自身の過去を探るため行動を共にする。
承①|キャロル・ダンヴァースとしての人生
調査を進めたヴァースは、自分の本名がキャロル・ダンヴァースであり、かつてアメリカ空軍のパイロットだったことを知る。
さらに親友マリア・ランボーと、その娘モニカに再会。2人はキャロルが6年前の飛行事故で死亡したと思っており、突然生きて戻った彼女との再会に喜びと戸惑いを見せる。
マリアたちとの交流によって、キャロルはクリーの戦士になる以前にも、自分には大切な人々と人生が存在していたことを思い出していく。
承②|敵だと思っていたスクラルの真実
やがてキャロルは、かつて尊敬していた科学者ウェンディ・ローソン博士の正体がクリー人マー・ベルだったことを知る。
マー・ベルはスクラルを滅ぼそうとしていたのではなく、クリーとの戦争で故郷を失った彼らを救おうとしていた。そして6年前、マー・ベルの機体を撃墜し、彼女を殺したのはヨン・ロッグだった。
さらに、キャロルが敵だと思っていたスクラルのリーダー、タロスも、戦争から逃れた妻子を探している父親だったことが判明する。
キャロルは、自分が信じてきた「クリーは正義、スクラルは悪」という構図そのものが偽りであり、記憶を失った自分がクリーに利用されていたことを知る。
転|支配を振り切り、キャプテン・マーベルへ
6年前の事故で、キャロルはマー・ベルが開発した特殊エネルギー装置を自ら破壊し、その爆発を浴びたことで超人的な力を得ていた。
しかしクリーの人工知能スプリーム・インテリジェンスは、その能力を抑制しながらキャロルを支配していた。
再び従わせようとするクリーに対し、キャロルは自分がこれまで何度倒れても立ち上がってきた人生を思い出す。誰かに価値を認めてもらう必要などないと気づいた彼女は抑制装置を破壊し、本来の力を完全に解放する。
キャロルは圧倒的な力でクリー軍を撃破し、地球を攻撃しようとしていたロナンの艦隊までも撤退させる。
結|新たな使命と「アベンジャーズ」の始まり
敗れたヨン・ロッグは、能力を使わず自分と戦って実力を証明するようキャロルを挑発する。しかしキャロルはその挑発に付き合わず、一撃で彼を吹き飛ばす。
そしてヨン・ロッグをクリーの故郷へ送り返し、スプリーム・インテリジェンスに「自分が戦争を終わらせに行く」と伝えるよう告げる。
キャロルはマリアやモニカ、フューリーに別れを告げ、タロスたちスクラルが安全に暮らせる新天地を探すため宇宙へ旅立つ。
フューリーには非常時に自分を呼び戻すための通信機を渡す。その後フューリーは、キャロルが空軍時代に使っていたコールサイン「アベンジャー」を目にし、新たなヒーローチーム構想を「アベンジャーズ」と名付けるのだった。
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ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
