『ソウ3』とはどんなホラー映画?あらすじ・キャスト・魅力・ネタバレまとめ

『ソウ3』とはどんなホラー映画?あらすじ・キャスト・魅力・ネタバレまとめ Database - Films
『ソウ3』 © 2006 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

映画『ソウ3』(2006)を紹介&解説。


映画『ソウ3』概要

映画『ソウ3』は、ジェームズ・ワンリー・ワネルが生み出した人気サスペンス・ホラーシリーズの第3弾。『ソウ2』に続いてダーレン・リン・バウズマンが監督を務め、連続殺人鬼ジグソウの新たな“ゲーム”を、より過酷な肉体的恐怖と心理的緊張の中で描く。物語は、重い病に侵されたジグソウ、彼の後継者を名乗るアマンダ、そして拉致された外科医リンと、復讐心に囚われた男ジェフの運命が交錯していく。出演はトビン・ベルショウニー・スミスアンガス・マクファデンバハー・スーメクディナ・メイヤーら。

作品情報

日本版タイトル:『ソウ3』
原題:Saw III
製作年:2006年
本国公開日:2006年10月27日
日本公開日:2006年11月18日
ジャンル:ホラー/スリラーミステリー
製作国:アメリカ
原作:無
上映時間:108分

監督:ダーレン・リン・バウズマン
脚本:リー・ワネル
原案:リー・ワネルジェームズ・ワン
製作:グレッグ・ホフマン/オーレン・クールズ/マーク・バーグ
製作総指揮:リー・ワネル/ジェームズ・ワン/ダニエル・ジェイソン・ヘフナー/ステイシー・テストロ/ピーター・ブロック/ジェイソン・コンスタンティン
撮影:デヴィッド・A・アームストロング
編集:ケヴィン・グルタート
作曲:チャーリー・クロウザー
出演:トビン・ベル/ショウニー・スミス/アンガス・マクファデン/バハー・スーメク/ディナ・メイヤー/ドニー・ウォールバーグ/リリク・ベント/コスタス・マンディロア/ベッツィ・ラッセル
製作:ツイステッド・ピクチャーズ/ライオンズゲート
配給:ライオンズゲート(米国)/アスミック・エース(日本)

あらすじ

連続殺人鬼ジグソウの事件を追う捜査陣は、これまでの“ゲーム”とは異なる異様な現場に直面する。一方、外科医リンは何者かに拉致され、末期の病に侵されたジグソウを延命させるよう命じられる。ジグソウが生きている間、別の場所では、息子を失った悲しみと復讐心に囚われた男ジェフが、過去と向き合うための過酷な試練にさらされていた。リンとジェフ、それぞれの選択は、ジグソウとアマンダの関係にも大きな変化をもたらしていく。

主な登場人物(キャスト)

ジョン・クレイマー/ジグソウ(トビン・ベル):人々を命がけの“ゲーム”にかける連続殺人鬼。末期の病により衰弱しながらも、新たな試練を仕掛け、被験者たちに生への意志を問い続ける。

『ソウ3』より

『ソウ3』より © 2006 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

アマンダ・ヤング(ショウニー・スミス):かつてジグソウのゲームを生き延びた女性で、現在は彼の後継者として行動している。ジグソウへの依存と不安定な精神状態が、物語の緊張を高めていく。

『ソウ3』より

『ソウ3』より © 2006 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

ジェフ(アンガス・マクファデン):息子をひき逃げ事故で亡くし、深い悲しみと復讐心に囚われている男。ジグソウのゲームを通して、自分の中にある怒りと向き合うことになる。

『ソウ3』より

『ソウ3』より © 2006 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

リン(バハー・スーメク):病院で働く外科医。拉致され、ジグソウを延命させるという極限状況に置かれる。自らの命を脅かされながら、医師としての判断と人間としての恐怖の間で揺れ動く。

『ソウ3』より

『ソウ3』より © 2006 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

ケリー(ディナ・メイヤー):ジグソウ事件を追う刑事。従来のジグソウの手口とは異なる現場に違和感を覚え、事件の背後にある変化を探ろうとする。

『ソウ3』より

『ソウ3』より © 2006 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

エリック・マシューズ(ドニー・ウォールバーグ):前作『ソウ2』でジグソウのゲームに巻き込まれた刑事。

『ソウ3』より

『ソウ3』より © 2006 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

作品の魅力解説

『ソウ3』の大きな魅力は、単なる残酷描写だけでなく、ジグソウとアマンダの関係に焦点を当て、シリーズの神話性を深めている点にある。第1作、第2作で築かれた“生きる意志を試すゲーム”という設定は、本作でより複雑になり、ジグソウの哲学と、それを受け継ごうとするアマンダの歪みが対比される。

また、ジェフの試練では、復讐と赦しというテーマが中心に置かれている。被験者が単に生き延びるだけでなく、自分の過去や感情とどう向き合うかが問われるため、肉体的な恐怖と心理的な葛藤が同時に描かれる構成となっている。

さらに、リンの視点が加わることで、物語には医療サスペンスのような緊迫感も生まれている。限られた設備の中でジグソウを延命させなければならない状況は、シリーズ特有の密室的な恐怖をより強く印象づける。

シリーズ第3弾としての本作は、ジグソウの過去、アマンダの内面、そして後続作へつながる重要な要素を含んでおり、『ソウ』シリーズの物語を追ううえで欠かせない作品である。

ストーリー解説(ネタバレ注意)

『ソウ2』直後から始まる、エリック・マシューズ刑事の脱出

『ソウ3』は、前作『ソウ2』の結末を受ける形で幕を開ける。エリック・マシューズ刑事は、ジグソウの罠によって老朽化したバスルームに足を鎖でつながれたまま閉じ込められている。周囲にはこれまでの事件を思わせる不気味な痕跡が残されており、彼は極限状態の中で脱出を試みる。

エリックは自らの足を砕くようにして拘束から抜け出す。シリーズ第1作のアダムとゴードンを想起させる密室からの脱出劇でありながら、本作では冒頭からさらに直接的な肉体的苦痛が提示される。ここで観客に示されるのは、前作の“その後”であると同時に、ジグソウ事件がまだ終わっていないという事実である。

トロイの“教室の罠”と、変化し始めたジグソウの手口

物語はその後、別の事件現場へ移る。警察が発見したのは、学校の教室のような場所に仕掛けられた新たなゲームだった。犠牲者はトロイという男で、体の複数箇所に鎖を通され、制限時間内にそれらを自力で引き抜かなければ爆死するという試練を与えられていた。

トロイは激痛に耐えながら鎖を外そうとするが、最終的に爆発によって死亡する。現場を調べたアリソン・ケリー刑事は、これまでのジグソウ事件との違和感に気づく。ジグソウのゲームは、どれほど残酷であっても、理論上は生き残るための選択肢が残されているはずだった。しかし、この現場では出口が溶接されており、トロイが仮に鎖を外せたとしても逃げられない構造になっていた。

この時点で、本作の重要な疑問が浮かび上がる。これは本当にジグソウ本人のゲームなのか。それとも、ジグソウの思想を引き継ぎながらも、彼のルールから逸脱した何者かが関与しているのか。『ソウ3』は、単なる新しい犠牲者の物語ではなく、ジグソウの“哲学”そのものが歪められていく過程を描いていく。

ケリー刑事の拉致と、“天使の罠”

ケリー刑事は、エリック・マシューズの失踪やジグソウ事件の捜査に深く関わってきた人物である。トロイの事件現場に残された不自然さを分析する彼女は、ジグソウの手口に何らかの変化が起きていると考える。

しかし、そのケリー自身もまた、何者かに拉致されてしまう。目覚めた彼女は、肋骨付近に金属器具を装着された状態で拘束されている。モニターに現れたビリー人形は、彼女が制限時間内に鍵を取り出し、装置を外さなければ命を落とすと告げる。鍵は酸の入った容器の中にあり、彼女は激痛を伴う方法でそれを手に入れなければならない

ケリーは決死の覚悟で鍵を取り出し、装置を外そうとする。しかし、鍵を使っても罠は停止しない。彼女はルール通りに行動したにもかかわらず、助かることができない。この出来事によって、トロイの罠と同じく、“生存の可能性が最初から奪われているゲーム”が続いていることが明確になる。

この場面は、ジグソウ事件の捜査側にも容赦なく死が迫ることを示すと同時に、今回のゲームが従来のジグソウの理念から逸脱していることを強く印象づける。

外科医リン・デンロンの拉致

一方で、物語は外科医リン・デンロンの視点へ移る。リンは病院で働く優秀な医師だが、日常生活では疲弊し、感情を失いかけているように描かれる。患者の死に直面しても淡々と仕事をこなし、家庭や私生活にも問題を抱えていることが示される。

彼女は、命を救う職業に就いていながら、自分自身の人生にはほとんど希望を見出せていない人物として登場する。この“生を扱う医師でありながら、生きる実感を失っている”という設定が、ジグソウの標的になる理由として機能していく。

リンは勤務先の病院で拉致され、目を覚ますと見知らぬ場所に連れてこられている。そこにいたのは、末期の病により寝たきりに近い状態となったジョン・クレイマー、すなわちジグソウだった。そして彼のそばには、ジグソウの後継者かのように行動するアマンダ・ヤングがいる。

リンに課される“ジグソウを生かす”ゲーム

リンに与えられた任務は、ジグソウを生かし続けることだった。彼女の首には、複数のショットガンの弾が仕込まれた首輪型の装置が装着される。この装置はジグソウの心拍と連動しており、ジグソウが死亡する、またはリンが一定の距離以上離れると作動する仕組みになっている。

リンは、ジグソウの命を救わなければ自分も死ぬという極限状況に置かれる。通常であれば人を救うことは医師としての使命だが、相手は多くの犠牲者を生み出してきた連続殺人犯である。リンのゲームは、単に医療技術を試すものではなく、“救う価値があるのか”という倫理的な揺さぶりも含んでいる。

アマンダはリンを監視しながら、彼女に対して強い敵意と不信感を見せる。ジグソウは衰弱しているものの、なおもゲーム全体を把握しているように振る舞い、リンには「別の被験者のゲームが終わるまで自分を生かせ」と指示する。ここで、リンのゲームと並行して、もうひとつの大きな試練が進行していることが明かされる。

ジェフのゲーム――復讐に囚われた父親

もうひとつのゲームの中心人物が、ジェフである。彼は息子ディランを交通事故で亡くして以来、深い悲しみと怒りに囚われ続けている。加害者への憎しみ、裁判への不満、そして息子を救えなかった後悔が、彼の人生を停止させている。

ジェフは、ジグソウによって廃工場のような場所に閉じ込められる。そこで彼に課されるのは、息子の死に関わった人々と向き合う試練である。ジグソウは、ジェフが復讐心から解放され、赦しを選ぶことができるのかを試そうとする。

本作におけるジェフのゲームは、単に本人が罠から脱出する形式ではない。むしろ彼は、憎んでいる相手を助けるか、それとも見殺しにするかという選択を迫られる。ジェフ自身の命だけでなく、彼が抱える怒りと執着が、ゲームの本質になっている。

第1の試練――ダニカの冷凍室

ジェフが最初に対面するのは、ダニカという女性である。彼女は、ジェフの息子ディランが命を落とした事故を目撃していながら、証言しなかった人物とされる。その行動によって、ジェフは彼女を強く恨んでいる。

ダニカは、冷凍室の中で裸に近い状態で拘束され、冷水を浴びせられている。時間が経つほど体温は奪われ、死に近づいていく。ジェフは彼女を助けるための鍵を手に入れられる場所にいるが、すぐには行動しない。彼の中には、彼女を救うべきだという思いと、息子の死をめぐる怒りがぶつかり合っている。

ダニカは必死に助けを求め、自分の行動を悔いているように見える。ジェフは葛藤の末に鍵を取ろうとするが、決断が遅れたことで救出は間に合わない。ダニカは命を落とし、ジェフは自分の躊躇がもたらした結果を目の当たりにする。

この試練は、人が持つ復讐心が他者の死を許容してしまう危うさを示す。ジグソウにとって重要なのは、ジェフが相手を“罰する”ことを選ばず、憎しみを手放せるかどうかである。しかし最初の試練では、彼がその問いに明確な答えを出すことはできず、失敗してしまう。

ジグソウの容体悪化と、リンの即席手術

ジェフのゲームが進行する一方で、ジグソウの容体は悪化していく。リンは限られた医療器具と劣悪な環境の中で、彼の状態を診断し、命をつなぎとめようとする。ジグソウは脳腫瘍による症状に苦しんでおり、リンは頭蓋内の圧力を下げるための処置が必要だと判断する。

病院ではない場所で、十分な設備もないまま行われる手術は、本作の中でも強い緊張感を生む場面だ。リンは医師としての知識と技術を総動員し、ジグソウの命をつなぎとめようとする。

この場面では、ジグソウが単なる支配者ではなく、肉体的には限界に近い病人であることが強調される。同時に、アマンダが彼に対して強い執着を抱いていることも見えてくる。リンがジグソウに接近し、彼を治療するほど、アマンダの不安と苛立ちは増していく。

処置の結果、ジョンの容体はいったん安定する。彼は衰弱しながらも意識を保ち、リンに対して穏やかな態度を見せる場面もある。ここでリンは、目の前の男が連続殺人鬼であると同時に、死に向かうひとりの病人=医療という彼女の生業の対象でもあるという矛盾した現実に向き合うことになる。

この一時的な安定は奇妙な静けさを生むが、同時にアマンダの不安と嫉妬をさらに増幅させる要因になっていく。

第2の試練――ハルデン判事と豚の槽

ジェフの次の試練では、ハルデン判事が登場する。彼は、ディランを死なせた加害者に対して軽い判決を下した人物であり、再びジェフにとって憎しみの対象のひとりだ。

ハルデンは大きな槽の中で首を鎖につながれており、上部では腐敗した豚の死骸が粉砕され、液状になったものが槽の中へ流し込まれていく。時間が経てば、彼はその中で溺れ死ぬことになる。ジェフが彼を助けるには、息子ディランの遺品を焼き、その中から鍵を取り出さなければならない

ここでジグソウがジェフに突きつけるのは、復讐心だけでなく、死んだ息子への執着である。ジェフはディランの記憶にすがり続けており、遺品を手放すことは、息子の死を受け入れることにも近い。彼は強い抵抗を見せるが、最終的には遺品を焼き、鍵を手に入れる

この試練では、ジェフはダニカのときよりも明確に“助ける”選択へ踏み出す。ハルデン判事は救出され、ジェフとともに次の場所へ進むことになる。だが、ジェフが完全に赦しへ到達したわけではない。彼の内面には依然として怒りが残っており、ゲームはさらに過酷な段階へ向かっていく。

第3の試練――息子を死なせたティモシーとの対面

ジェフのゲームはさらに核心へ進んでいく。彼が最後に対面するのは、息子ディランを交通事故で死なせた直接の加害者、ティモシーである。

ティモシーは、巨大な機械装置に体を固定されている。この罠は、手足や首を順番にねじ曲げていくもので、シリーズの中でも特に残酷な装置として描かれる。ジェフにとってティモシーは、長年憎み続けてきた相手であり、彼の不幸と喪失の象徴でもある。

ここでジグソウがジェフに突きつけるのは、単なる救出の選択ではない。ジェフは、息子を直接奪った相手を本当に赦せるのか、自分の怒りを手放せるのかを試されている。第一の試練では救出が間に合わず、第二の試練では救う道を選ぶことができたジェフだったが、ティモシーを前にしたとき、彼の感情は再び大きく揺れることになる。

ティモシーは恐怖と苦痛の中で助けを求める。ジェフは最初、彼を救うことにためらいを見せるが、次第に目の前で人が壊されていく現実に耐えられなくなっていく。実際に人が死んでいく姿を見せられることで、憎悪や復讐心の強さよりも、救出しようとする思いが強まっていく様子が描かれる。

ハルデン判事の死と、救出の失敗

ティモシーを助けるための鍵は、ショットガンに接続された危険な仕掛けの先にある。ジェフとともに行動していたハルデン判事は、ジェフを手助けしようとするが、その過程で罠が作動し、命を落とす

これにより、ジェフが“赦し”に近づこうとした矢先に、別の犠牲が生まれたことになる。ジェフにとっては、憎んでいた相手を一度は救ったにもかかわらず、その人物を再び失う展開となる。

ジェフは鍵を手に入れようとし、ティモシーを救おうとするが、それも間に合わない。装置は最後まで作動し、ティモシーは死亡する。ジェフは、過去に囚われ、復讐心に支配され続けた自分が無駄にしてきた時間の重さを突きつけられることになる。

この試練によって、ジェフのゲームは“誰を罰するか”ではなく、“自分が何を手放せないのか”を暴くものだったことがより明確になる。ジグソウは、ジェフを直接殺そうとしているのではなく、彼の内面に残る怒りを極限状態で可視化している。

アマンダの精神的な崩壊

リンがジョンの命を救うほど、アマンダは強い動揺を見せる。ジョンがリンに信頼を示すたび、アマンダの不安は増し、立場を脅かされているように感じた様子を見せる。アマンダにとってジョンは、命の恩人であり、父親のような存在であり、同時に絶対的な支配者でもある。彼女はジョンの後継者として振る舞っているが、精神的にジョンに強く依存しており、(よくも悪くも)芯の通ったジョンのような人物の後継には到底見えない。

トロイやケリーの罠に生還のチャンスがなかったことも含め、本作ではアマンダがジグソウの思想をよく理解していないことが少しずつ浮かび上がる。アマンダは、被験者が変わることを信じていない。彼女によるゲームは更生の機会ではなく、罰に近いものになっている。この点で、彼女はジョンの後継者として振る舞いながら、ジョンの理念から最も大きく逸脱した存在として描かれる。

エリックとアマンダの対峙――“ジグソウではない”と突きつけられる後継者

ここで、エリック脱出時のアマンダとの遭遇が明らかになる。バスルームから脱出したエリックは、負傷した足を引きずりながら息子ダニエルを探し、地下通路を進んでいた途中でアマンダと遭遇。エリックはアマンダに襲いかかり、彼女を激しく殴りつける。

この場面で重要なのは、エリックがアマンダに対して、“彼女はジグソウではない、何者でもない”という趣旨の言葉を突きつける点である。アマンダはジョン・クレイマーに選ばれた後継者として自分を位置づけているが、エリックの言葉は、その自尊心と不安定なアイデンティティを直接えぐるものになっている。エリックから見ても、彼女はジョン本人ではなく、彼の名を借りて人を傷つけているだけの存在である。この対峙は、アマンダの中にある“自分は本当に後継者なのか”という不安を強く刺激する。

この当時を回想し、アマンダは「エリックを始末した」と解釈できる発言をジョンに伝える

アマンダに仕掛けられていた本当のテスト

物語が終盤に入ると、リンのゲームはリンだけのものではなかったことが明らかになる。ジョンが本当に試していた相手は、アマンダでもあった

アマンダは、嫉妬と不安の対象であるリンを最後まで生かし、ジョンの指示どおりに解放できるかどうかを試されていた。リンは、ジョンの命を延命するために必要なだけでなく、アマンダが自分の衝動と嫉妬を抑えられるかを測るための存在でもあったのだ。

ジョンは、アマンダが人に対して更生の可能性を信じられるのか、自分の感情に支配されずにルールを守れるのかを見ていた。だが、アマンダはリンへの敵意を抑えきれない。彼女はリンを危険な存在とみなし、ジョンを奪われるような恐怖に取りつかれ続ける。

この構造によって、『ソウ3』の終盤は、復讐心と赦しのゲーム(ジェフ)、命を直接扱うゲーム(リン)、ジョンの後継者としての素質を試すゲーム(アマンダ)が重なり合う。表向きは複数の被験者が別々に試されているように見えるが、実際には全員の選択がひとつの部屋へ収束していく。

リンとジェフが夫婦だったことが明らかになる

終盤の重要な仕掛けとして、リンとジェフが夫婦であることが明らかになる。ここまでの物語では、リンのゲームとジェフのゲームは別々に進んでいるように見えていた。しかし実際には、ふたりは同じ家族の崩壊を別の角度から背負っていた

息子ディランの死から立ち直れず、復讐心に囚われ続けるジェフの一方で、リンもまた家庭の崩壊と喪失の中で疲弊し、医師としての日常に埋もれ、心を閉ざしていた。ふたりは同じ悲劇を経験しながら、互いに向き合えないまま別々の場所で生きていたのだ。この事実が明かされることで、リンのゲームとジェフのゲームは一気に結びつく。ジョンは、夫婦と家族の断絶そのものをゲームの中に組み込んでいたことになる。

ジェフが最後にたどり着く場所には、憎しみの対象ではなく、救うべき妻がいるが、その時点で状況はすでに取り返しのつかない方向へ動き始めている。

アマンダがリンを撃つ:後継者としての失格

リンはジョンを生かすことに成功したため、本来であれば解放されるルールだが、アマンダはリンを解放しようとしない。ジョンはアマンダに対して、リンを生かすよう求めるが、同時にアマンダの嫉妬心をあえて煽るような言葉選びをして試したこともあり、アマンダは指示を受け入れられない。精神的に追い詰められた彼女は、最終的にリンを銃で撃ってしまう。アマンダは自分の不安、嫉妬、衝動を乗り越えられなかった=後継者失格である。

ジェフがアマンダを撃つ

撃たれて倒れるが、まだ完全に死亡したわけではないリン。そこへジェフが到着し、これまで別々に見えていた2つのゲームが交わる。夫ジェフ、撃たれた妻リン、衰弱したジョン、そしてリンを撃ったアマンダという4人がそろう。

ジェフは銃を手にとってアマンダを撃ち、アマンダはジョンのそばで崩れ落ちる。ここでジョンは、リンがジェフの妻であること、そしてアマンダ自身も試されていたことをようやく明かす。ジョンはアマンダに対し、彼女が人を変われる存在だと信じられなかったこと、ルールを守れなかったことを突きつける。アマンダは、自分がジョンの期待に応えられなかったことを知り、絶望の中で息絶える

ジョンがジェフに与える最後の選択

アマンダの死後、ジョンは怒りと絶望の頂点にいるジェフに最後の選択を与える。ジョンは、ジェフに対して“赦し”を選ぶ機会を与える。もしジェフがジョンの試練で意図された“復讐心を捨て、赦すこと”を学んでいれば、ジョンを許し、リンを救うために行動できるはずだった。ジョンは、自分を許すことができれば救急車を呼ぶことができる、と選択肢を提示する。

ここでジェフのゲームは、最初から続いてきたテーマに戻った。彼は、息子を奪った者たちを赦せるのかという試練を経て、最後には、今回のゲームすべてを仕組んだジョン・クレイマーを赦せるのかを問われたのだ。

しかし、ジェフは怒りを手放せない。彼はジョンの前で、口では「赦す」と言いながら、その直後に電動丸ノコのような刃物でジョンの喉を切り裂いてしまう。最後の瞬間に怒りに屈したジェフもまた、試練に合格することができなかった。

ジョンの死と、リンの首輪の作動

ジョンの喉が切られると、彼の心拍は停止へ向かう。つまり、ジョンの生命反応と連動したリンの首輪が作動することになる。ジェフは、ジョンを殺したことで妻を救うどころか、リンの死を決定づけてしまったのだ。リンの首輪はルール通り作動し、彼女は死亡する。怒りに任せた彼の選択は、復讐を果たしたように見えながら、実際にはさらに大きな喪失を生んだだけだった。

電動丸ノコを向けられたジョンは、自身の死を前にしてもニヤリと笑っていた。ひとりの人生を超越した、“芯の通ったサイコパス”キャラである彼を象徴する表情だ。彼は肉体的には敗北するが、ゲームの構造そのものは最後までジェフを支配している

娘コルベットの存在と、最後に残される絶望

ジョンは死の直前、ジェフにさらなる事実を突きつける。ジェフとリンの娘コルベットが拉致されており、彼女の居場所を知っているのはジョンだけだということが明かされる。

ジェフはジョンを殺したことで、娘を救うための情報源を自ら失ってしまう。ジョンの録音メッセージは、ジェフが自分のテストに失敗したこと、そして娘を救うためにはさらに別のゲームに向き合わなければならないことを示す。

ラストの意味――“赦し”に失敗した者たちの物語

『ソウ3』のラストは、複数の人物がそれぞれのテストに失敗する構造になっている。ジェフはジョンを赦せず、復讐を選ぶ。アマンダはリンを生かせず、ジグソウの後継者としてのテストに失敗する。リンは自分の役割を果たしたにもかかわらず、他者の失敗によって死ぬ。

『ソウ3』は、これまでのシリーズの中でも特に“人は変われるのか”という問いを前面に出した作品である。だが、その答えは非常に冷たい。少なくともこの物語の登場人物たちは、怒り、嫉妬、依存、悲しみを乗り越えることができなかった

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