映画『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』(2016)を紹介&解説。
映画『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』概要
映画『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』は、第二次世界大戦下のオランダを舞台に、ドイツ軍将校とユダヤ人の女性スパイの許されざる恋を描く歴史ロマンス。オランダへ亡命していたドイツ最後の皇帝ヴィルヘルム2世の屋敷を舞台に、祖国への忠誠と個人の良心、愛する者を守る決断が交錯する。舞台演出家デヴィッド・ルヴォーの長編映画初監督作で、リリー・ジェームズ、ジェイ・コートニー、クリストファー・プラマーらが出演する。
作品情報
| 日本版タイトル | 『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』 |
|---|---|
| 原題 | The Exception |
| 製作年 | 2016年 |
| 本国公開日 | 2017年6月2日(アメリカ)/2017年10月2日(イギリス) |
| 日本公開日 | 2017年7月28日 |
| ジャンル | 歴史/戦争/スパイ/恋愛/ドラマ |
| 製作国 | イギリス/アメリカ |
| 原作 | アラン・ジャド『The Kaiser’s Last Kiss(原題)』(小説) |
| 上映時間 | 107分 |
| 監督 | デヴィッド・ルヴォー |
|---|---|
| 脚本 | サイモン・バーク |
| 製作 | ジュディ・トッセル/ルー・ピット |
| 製作総指揮 | フィリップ・H・ガイアー・ジュニア/ビル・ヘイバー/ボブ・ボイエット/ユージン・ビアード/クラウディア・ブルームフーバー/イアン・ハッチンソン/フロリアン・ダーゲル/イレーネ・ガル/イェンス・モイラー/ジム・セイベル/ビル・ジョンソン/バスティアン・シロド/エイドリアン・ポリトウスキー/ジル・ウォーターキー/クリスティアン・アンガーマイヤー/クレメンス・ハルマン |
| 撮影 | ロマン・オーシン |
| 編集 | ニコラス・ガスター |
| 美術 | ユベール・プイユ |
| 衣装 | ダニエラ・チャンチョ |
| 作曲 | イラン・エシュケリ |
| 出演 | リリー・ジェームズ/ジェイ・コートニー/クリストファー・プラマー/ジャネット・マクティア/エディ・マーサン/ベン・ダニエルズ/マーク・デクスター |
| 製作 | イゴリ・トッセル・フィルム/オスター・プロダクションズ/アルトン・ロード・プロダクションズ/シルヴァー・リール/ロータス・エンターテインメント/ユーメディア/フィルム・ハウス・ジャーマニー/スクリーン・フランダース |
| 配給 | A24/ディレクTVシネマ(アメリカ)/シグネチャー・エンターテインメント(イギリス)/クロックワークス(日本) |
あらすじ
1940年、第2次世界大戦下のオランダ。ドイツ軍将校シュテファン・ブラント大尉は、退位後もドイツ国内に根強い支持者を持つ元皇帝ヴィルヘルム2世の警護と監視を命じられ、その屋敷へ派遣される。
ブラントは屋敷で働くメイドのミーケと出会い、やがて激しい恋に落ちる。しかし、ユダヤ人であるミーケの正体は、英国政府の密命を受けて屋敷へ潜入したスパイだった。さらにナチス親衛隊の最高幹部ハインリヒ・ヒムラーが屋敷を訪れることになり、ブラントは軍人としての忠誠を貫くのか、ミーケを守るのかという選択を迫られる。
主な登場人物(キャスト)
ミーケ・デ・ヨン(リリー・ジェームズ):ヴィルヘルム2世の屋敷でメイドとして働く女性。その正体は英国政府の密命を受けて潜入したスパイであり、ユダヤ人でもある。ドイツ軍将校ブラントと危険な恋に落ちていく。
シュテファン・ブラント大尉(ジェイ・コートニー):ヴィルヘルム2世の護衛と監視を命じられたドイツ国防軍の将校。軍人として任務を遂行する一方、ミーケへの愛情によってナチス体制や自身の忠誠心と向き合うことになる。
ヴィルヘルム2世(クリストファー・プラマー):第1次世界大戦後に退位し、オランダへ亡命したドイツ最後の皇帝。政治的な実権を失った後もドイツ国内に支持者を持ち、ナチス政権から警戒されている。尊大さと人間的なユーモアを併せ持つ人物として描かれる。
ヘルミーネ皇后(ジャネット・マクティア):ヴィルヘルム2世の2番目の妻。夫が再びドイツ皇帝として復位することを強く望み、ナチス政権から持ちかけられる話にも期待を寄せる。
ハインリヒ・ヒムラー(エディ・マーサン):ナチス親衛隊を率いる最高幹部。ヴィルヘルム2世の屋敷を訪れ、元皇帝とその支持者を政治的に利用しようとする。
ジーグルト・フォン・イーゼマン大佐(ベン・ダニエルズ):ヴィルヘルム2世に仕える副官。元皇帝への忠誠を保ちながら、ナチス政権との危うい距離を慎重に見極めている。
作品の魅力解説
本作は、戦場や大規模な軍事作戦ではなく、オランダにある元皇帝の屋敷という限られた空間からナチス・ドイツの時代を描く。ドイツ国防軍、ナチス親衛隊、旧帝政の支持者、英国の諜報員という異なる立場の人物を同じ屋敷に集め、軍や国家への忠誠が個人の良心や愛情と衝突する様子を描いた点は、数あるナチス関連映画の中でも異色である。
一方、物語そのものは、敵対する立場の男女が恋に落ち、任務と愛の間で揺れるという王道の構成だ。展開や演出にも既視感があり、スパイ・サスペンスとしての緊張や歴史劇としての悲壮感を極端に強めることもない。喜劇にも悲劇にも大きく振り切らない落ち着いた作りであるため、刺激的な戦争映画や緊迫した諜報戦を期待すると、やや物足りなさを感じる可能性がある。
それでも作品の空気を成立させているのが、俳優陣の存在感である。リリー・ジェームズは、秘密と危険を抱えながら愛へ踏み込むミーケに華やかさと芯の強さを与えた。特に印象的なのは、元皇帝ヴィルヘルム2世を演じるクリストファー・プラマーだ。尊大で気まぐれでありながら、時代から取り残された寂しさやナチスへの嫌悪もにじませ、屋敷の空気を支配する貫禄を見せている。
Rotten Tomatoesの批評家スコアは75%、MetacriticのMetascoreは60と、批評面ではおおむね好意的ながら評価の分かれる位置にある。物語の意外性よりも、歴史上の人物を交えた室内劇や俳優の演技を味わう作品と捉えるのが適切だろう。ナチスを題材にした映画を幅広く観たい人にとっては、戦場でも強制収容所でもない場所から第2次世界大戦期を切り取った変化球として押さえておきたい1本である。
